2023/9/25(月)~9/27(水) 霞沢岳、焼岳2023年09月25日 00:00

前々から考えていた、島々から上高地を結ぶ古道での徳本峠越え&霞沢岳登山を実行しようと思ったのだが、調べてみると徳本峠まで通行止めになっていた。そうかと言って、泊り装備を担いで行くのに上高地から入って霞沢岳のみでは物足りない。ならば、焼岳(北峰)をくっつけて中の湯に下りれば、3月の焼岳(南峰)~白谷山と合わせて焼岳から南下するルートが繋がることになる。天気がもちそうな日を選んで出掛けた。

■9/25(月)
電車・バスで昼前に上高地入り。腹ごしらえして12:20に歩き始め。明神岳が出迎えてくれる。
明神岳
平日だというのに人が多いが、明神を過ぎて徳本峠への道に入ると途端に静かになった。その分、整備が追い付かないようで、沢に掛かる橋が少々危なっかしい。
徳本峠道の木橋
徳本峠小屋のテント泊予約時に「水は無いので、途中の沢で汲んできて」と言われており、水場を気にしながら歩く。小屋のホームページに「明神側に10分ほど下ったところが最後の水場」とあるが、多分それより下の標高1870m付近の沢が十分な水量があって汲みやすく、また、すぐ上にベンチがあって休憩にも好適。ただし、穂高の眺めはもう少しだけ上がった地点の方が良い。
徳本峠下の水場
穂高
その後、1970m付近の二段ハシゴの地点(徳本峠まで0.8kmの指導標の手前)にも小さな水流があった。これが「最後の水場」と思われるが、水量が少なく汲むには苦労しそうだ。
14:45、徳本峠に到着。
徳本峠小屋
テント泊料金2000円を支払い、受付の正面、樹林に囲まれたスペースに設営。穂高を望める場所は風が当たるとのこと。宿泊客は数人いる様子だが、テントは自分一人だ。
徳本峠小屋テント場
小屋の側面に回ると見えるなだらかな山はジャンクションピーク、裏手には中村新道の入口があった。島々からの古道が復旧したら、ここから大滝山、蝶ヶ岳へと繋げるのも良い。霞沢岳への登山道を入ったところに「DOCOMO AREA」と記した木札があるが、自分のスマホ(docomo ahamo)では駄目だった。
20時半頃、テント内でラジオを聴いていると、頭上から耳にしたことのない鳴き声(参照 ⇒ ムササビ 哺乳動物の鳴き声図鑑 上田ネイチャーサウンド「警戒声」)。小屋から出てきてその主を探している女性と話をすると、ムササビだと言う。残念ながら姿は拝めなかったが、彼女は光る眼を捉えたらしい。彼女は高尾山や御岳山でもムササビを探したとか、ここの主人が作業中に窓にぶつかって来たとか話してくれた。
夜中には時折風の音がしていたがここには当たらず、夏用の薄いシュラフで不自由なく寝られた。

■9/26(火)
5:10に出発。今日は霞沢岳を往復してから小梨平に移動予定だが、テント撤収は戻ってからで構わないことは小屋に確認済み。東の空が明るくなっているが、全体に雲がかかっている。
明神へと峠をショートカットする分岐を過ぎると傾斜が増す。朝焼けから木間越しの日の出を見て、6時にジャンクションピーク(2428m)。
ジャンクションピーク
手前のシルエットは小嵩沢山で、その背後は八ヶ岳、右の方に浮かんで見えるのは甲斐駒・仙丈。遠く噴煙を上げているのは80kmも彼方の浅間山だ。
ジャンクションピークより
ジャンクションピークより浅間山
ジャンクションピークから、昭文社山と高原地図に「小湿地」とある2261m鞍部まで下る。途中、嫌な泥斜面だと思ったら案の定スリップして尻もちをついた。浅く水の溜まった小湿地の傍ら、倒木に腰を下ろして一本。
崩壊地を過ぎ、笹の間の登りや白い花の終わりかけた草原を行く。ロープの付いた斜面が現れ、行く手にK1~K2~霞沢岳が並び、右手には山に分け入っていく梓川。
K1~K2~霞沢岳
梓川
2470m付近のトラバースは細い道を踏み外さないように注意。K1直下は丸太を入れて段を作った急登が続き、結構キツい。急斜面はやはり崩れやすいのだろう、補修用資材がデポされていた。
K1への急登
8時過ぎ、K1ピークに到着。等高線を読むと2590mなのだが、看板には2567mとある。
K1ピーク
焼岳から穂高に至る稜線、その奥に笠ヶ岳の稜線、残念ながら穂高の頭は雲に隠されている。梓川の奥は常念岳。上高地の赤い屋根(森の中のは帝国ホテルか?)がミニチュアのようだ。
K1より
K1より上高地
K1から下りる箇所は、短いながら岩を掴む急降下。K2ピーク(2620m)には特に目印など無く、焼岳を眺めて通過。霞沢岳山頂の手前は登山道が最近崩落したらしく、その上にハイマツを切り拓いて新しい道が付けられていた。
8:50、霞沢岳(2645.6m)に登頂。無風、気温16℃。
霞沢岳
細長い山頂で、山頂標や三角点標石のある場所から少し先まで、ハイマツを踏んだ跡があった。以前に敗退を繰り返している西尾根(http://marukoba.asablo.jp/blog/2014/12/30/9333539http://marukoba.asablo.jp/blog/2020/12/30/9333949http://marukoba.asablo.jp/blog/2021/04/16/9368682)はここから伸びている。
穂高は相変わらず雲を被っているが、南に乗鞍岳が見える。その右手前が安房山、さらに右に3月に苦労した焼岳~白谷山~アカンダナ山が並んでいる。
霞沢岳より乗鞍岳
霞沢岳より乗鞍岳(山名図)
山頂で20分ほど過ごして下山開始。トラバース辺りですれ違った若い単独男性が、霞沢岳往復で会った唯一の人間だった。次第に雲行きが怪しくなり、ついに降り出して小湿地で雨具上下を着ける。幸い本降りにはならず、ジャンクションピークで上を脱ぐと間もなく薄日が射した。
昼過ぎに徳本峠に帰着し、濡れたテントを撤収。
明神への下り中に再び小雨となったが、間もなく止んだ。徳本峠に上がって行くのは登山が3人にボッカ1人と、やはり静かだ。梓川沿いの道をとっとと飛ばして、上高地(小梨平)に14時半過ぎ。峠から2時間だった。
小梨平キャンプ場で受付(持参テント1300円)し、手近なJサイトに設営。小梨の湯(700円)で汗だけ流して(着替えは下山後のために温存)、食堂で生ビール(650円)。
小梨平で生ビール
霞沢岳の登山バッチが欲しいが、徳本峠小屋にも明神にも無いものは、ここの売店にも無かった。
テントで食事を済ませ、残りの食料はフードストレージに預ける。明日下山する中の湯温泉の入浴営業時間を確認しようとホームページを見ると、「水不足の為、日帰り入浴は自粛」とあってガッカリ。23時前から降り出し、今度こそ本降りになった。

■9/27(水)
雨の中でテントを撤収、屋根と照明のあるトイレの片隅でスパッツを着けるなど最終的な身支度をして、5:10に出発。
明るくなるにつれて小降りになり、焼岳登山口で雨具の上を脱いだ。小梨平からウエストン碑を経て登山口まで40分。
日の出時刻を過ぎているが、樹林の中はいつまでも薄暗い。落ちてくるのは雨か、風に叩かれた梢からの滴か。やがてガスが掛かってきた。標高1800mを越え峠沢の崖際に出るとようやく光が入る一方、また雨の気配が強まる。
そこから傾斜が強まり、短いハシゴを前にして雨具の上を羽織り、ついでにヘルメットを装着。やや傾斜が緩んだところで追い付いてきた単独男性に先を譲ると、すぐに岩壁に掛かった長いアルミ製ハシゴが現れた。踏み破られて真ん中が割れている段があったり、壁への取付けが針金だったりと、少々スリリングだ。上がってから見下ろすと、打ち捨てられた先代(?)のハシゴも見える。
長いハシゴ
ハシゴの上にはクサリの付いたスラブ状の岩。乾いていればともかく、今はクサリに体重を預けるしかない。もう一つ岩を乗り越し、風の吹き抜ける草原を進んで、8時に焼岳小屋着。外のベンチで休憩するが、雨はほぼ止んだものの気温11℃で風もあっては落ち着いていられない。
焼岳小屋
登りに掛かってすぐの小ピーク(2130m)には何か書いた木柱があるが、判読不能。
小ピークの木柱
「危険地域」の倒れた看板を過ぎて行くと硫黄の匂いが強まり、足元も不毛に。
焼岳山頂近く
パワーのある外国人に先を譲ったり、かと思うとスポーツシューズでもたついている奴(これも外国人)を追い越したりして進み、中の湯への道を分けると、いよいよ最後の登りになる。ここで、長いハシゴで先に行った単独男性が山頂から下りてきた。
9時過ぎ、焼岳(北峰、2444m)に登頂。9年振り、2回目だ。前回もガスの中、風が吹いて寒かったなぁ。先ほど道を譲った単独外国人男性と写真を撮りあった。
焼岳(北峰)
中の湯への下山ルートは最初こそ火山的な風景だが、すぐにササから樹林へと移行する。雨の中を登ってくるパーティが案外と多く、外国人比率が高い印象。水たまりのできた「広場」を通過し、やがて先に下りていた単独男性に追いついた。登山道の終点近くにあった自動車の残骸は、上の国道(ちょうど尾根に沿ってカーブしている)から転落したのか?
自動車残骸
新中の湯登山口に11時下山。駐車している数台は登って行った登山者のものだろう。
ヘアピンカーブをショートカットして中の湯温泉へ。やはり日帰り入浴は休業で、フロントに断って裏口で荷物整理していると単独男性も下りてきた。二人で話をしながら車道を下り、少し待つ(自分は傘を持たないので釜トンネルで待機)と新島々行きバスが来た。

帰宅後に知ったことだが、27日12時頃に岳沢湿原付近の遊歩道でクマ遭遇による負傷事故が発生し、小梨平キャンプ場も一時閉鎖(30日から再開)。事故が一日早ければ、飛び込みでホテルを探すか、あるいは焼岳を割愛して帰らねばならないところだった。何はともあれ、これで焼岳北峰と南峰のギャップも埋まった。予想より早く天気が崩れて雨中行動となったが、それもまたヨシ。

■今回のルート
霞沢岳ルート
         ↑1~2日目
焼岳ルート
         ↑3日目

■焼岳周辺踏破図
焼岳周辺踏破図

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