2023/7/19(水)~7/22(土) 硫黄山~羅臼岳2023年07月19日 00:00

昨夏の大雪山~トムラウシ山(https://marukoba.asablo.jp/blog/2022/07/27/9516654)に引き続き、無名山塾の自主山行としてT中・H氏と北海道へ。
飛行機や宿を早めに押さえた日程優先の旅だったが、山行中は晴天に当たり、一般道ながら北海道らしいワイルドさを楽しめた。

■7/19(水)
飛行機の席は非常ハッチの並びでT中氏と隣同士だった。女満別空港から知床エアポートライナーでウトロへ移動し、民宿たんぽぽに投宿。
夕食まで時間があるので散策に出る。ゴジラ岩は隣の岩山と合わせるとラクダのようだ。
ゴジラ岩
堂々たるオロンコ岩(全体写真は下山後に利用した観光船から見た姿)に登ると、看板の下にキタキツネがいた。岬の向こうに今回歩く硫黄山から羅臼岳の山並みが見えている。
オロンコ岩
オロンコ岩より
宿の風呂は非常階段から外に出た別棟の2室で、それぞれ家族で入れる程度の広さ。かけ流しの温泉で、説明書きでは透明だがやや濁って見える湯が塩辛い。食事も美味しかった。追加した日本酒「国稀」(蔵元 ⇒ https://www.kunimare.co.jp/)は吟醸などではない無印がいちばんとのこと。

■7/20(木)
民宿前に8:30で頼んでおいたタクシーは3分程遅れて到着し、予約時に聞いた通りの7000円でカムイワッカ橋先のゲートまで。
カムイワッカから硫黄山登山口までの区間については「特例使用」の申請が必要(北海道オホーツク総合振興局 網走建設管理部 ⇒ https://www.okhotsk.pref.hokkaido.lg.jp/kk/akk/shiretoko_riyou.html)で、予めメール提出してある。先に出発して行く単独男性と挨拶を交わし、我々は9時半にゲートを通過。
傍らで刈り払いしている道を6~7分進むと硫黄山登山口(標高245m)。掲示されたヒグマ目撃情報によると、この先、新噴火口までの途中で目撃されている。
ヒグマ目撃情報
登山口を入ってだんだんに高度を上げ樹林帯を抜けると、道の上に落とし物があった。時間の経ったものも新しそうなものもあり、サイズから見てやはりクマなのだろう。
糞
旧硫黄採掘地(標高500m付近)では足元に硫黄の粒が見られ、斜面に大岩が目立ってくる。ハイマツは丈は低いながら這わずに立ち上がっている。ハイマツや岩の道を登りながら見上げると、緑のじゅうたんの間から噴気の上がっているのが見えた。先行する単独男性の背中を時折捉えるのだが追いつけない。気温は25℃程度だが、ひどく暑くて汗が滴り落ちる。
新噴火口への登り
11:10、「新噴火口最上部」の看板(標高750m付近)に到着。ここは少し開けていて西側の海を見晴らせる。登りながらずっと人工音が聞こえると思っていたのは、海を行く船のモーター音だった。すぐ上に見える稜線に出れば涼しいだろうとハイマツの間の道に踏み込むと、これが長い。トンネルのように樹木の覆い被さる道で30分も息を切らせ、ようやくハイマツの上に頭を出してもまだ樹林。この辺りは稜線まで針葉樹林なのだった。
頭を出しても樹林
12:15、沢出合(地形図999地点付近、硫黄川の水線の源頭)に出た。ここから硫黄山頂下まで涸沢を辿る。水溜りの残る岩盤やガラガラとした岩の箇所が多い。エゾシロチョウがメスを争い、敗れたオスが水溜りに浮いている。
エゾシロチョウ
涸れ滝の巻きが2か所あり、上の方は巻き道も細くやや危険な印象で、この後追いついた単独男性によると、例年ならロープが張ってあるとのことだった。
涸れ沢の登り
ある程度風が通るので樹林より楽とは言え、適宜日陰で休憩しながら上がって、14時前に沢地形を出た。先行の単独男性が休憩しており今回はここまでとのことだが、我々より年配でこのペースとはずいぶん強い。
(下の写真は南・1枚目~南西・2枚目。山頂方向は逆光)
硫黄山頂の手前
硫黄山頂の手前
砂礫の道を上がると硫黄山頂への分岐があり、知円別岳の方へ進んだ先行パーティのカウベルが聞こえた。分岐から山頂へは岩がちで傾斜が強まり、足元の岩の間にチングルマ、イワギキョウ(?)、コエゾツガザクラ(紅白?)等々、様々な花が咲いている。
硫黄山の花
硫黄山の花
14:25、硫黄山(1562.3m)に登頂。行く手の山々から海まで眺め渡せた。
硫黄山登頂
硫黄山からの眺望
山頂から下りて分岐を南へ。凹地を前にして、山頂と凹地の間を西へトラバースした先に標柱が立っているように見えて進路に迷うが、薄い踏み跡の続くまま凹地の方へ下り、再び登りにかかると「第一火口分岐」の標柱があった。道の上にまた何かの糞を見たりして進むとやがて雪渓が現れ、その際を下りる(アイゼンを使うほどの長さ・斜度はなかった)と第一火口キャンプ指定地だ。雪渓から水が流れ出し、エゾコザクラが群落を成す。ここのチングルマは花の終わったものが多い。時刻は15:50。登山口からここまで、昭文社山と高原地図のコースタイム6時間10分ちょうどだった。
第一火口キャンプ指定地
先行パーティはこの先のキャンプ指定地を目指したらしく、上方の稜線からカウベルの音がする。ここに泊まるのは我々のみ。テントを張り、フードロッカーの近くで水を浄化、煮沸しながら、食事にした。
第一火口キャンプ指定地

■7/21(金)
5:20に出発。第一火口分岐を経て第2前衛峰手前まで登ると、「羅臼岳10KM」の標柱があった(後に確認したGPSトラックデータによると、距離11.0km、沿面距離12.3km)。ハイマツの間の道から一転して礫の稜線に入ると、いかにも火口壁と感じる。進路を塞ぐ岩を崩れやすい足元を気にしながら躱すなど、昭文社地図の実線ルートとしてはなかなかに厳しい。礫上にはコマクサが咲いていた。
火口壁の道
7時、知円別岳(1544m)下で休憩。ここはスマホが通じた。地図で「廃道」となっている東岳方向に付いている足跡は、すぐそこのコマクサ群落に行ったのかもしれない。
南岳方向に下るとチングルマのお花畑があったりと快適。地形図で湿地マークの地点はすっかり乾いた草原になっていた。南岳(1459m)は登山道上に特に目印無し(8:20)。山頂は少し離れた高まりなのかもしれないが、そこまでハイマツの藪で道は無かったと思う。二ツ池からオッカバケ岳、サシルイ岳と眺められる。今日の泊り場所はその向こうだ。
南岳より
二ツ池の一つ「天の池」は干上がっていた。「地の池」は水を汲むのは容易だが、美味しくなさそう。
二ツ池
オッカバケ岳と1450mの間を通り抜け、サシルイ岳に向けて下る途中にすれ違った単独男性に聞くと、三ツ峰キャンプ指定地の水場付近でクマ1頭を見たが人間を避けて去って行った、羅臼岳の方にはクマの気配は無かったとのこと。
エゾカンゾウなど咲く湿地、草原から沢状地形に入って登って行く。涸れた沢の傍らで休憩中、急に水が流れ始めた。水流はその上の雪渓から出ていたが、雪渓下で栓になっていた雪が解けたのか。その雪渓は地図に「残雪時ルート不明瞭」とある通り先行者の足跡も判然としないが、真っ直ぐに登るとほぼ末端でまた道が現れた。ここもアイゼンは使用せずに通過。
サシルイ岳(1564m)下から、後方の硫黄山、前方の羅臼岳を眺める。
後方の硫黄山、前方の羅臼岳
ハイマツの中にエゾツツジなど見ながらガレ場を下り、草地の中に水流のある三ツ峰キャンプ指定地に12時到着。その時には誰もおらず、登山道が広くなっている箇所にテント設営した。
三ツ峰キャンプ指定地
テント場下の流れに設置されたパイプから出ている水はチョロチョロ程度。水流を5分程遡ったところに雪が残っていたのでその近くで汲んだが、植物のカスなどゴミが多い。いずれにせよ浄化しなければ使えないが。
三ツ峰キャンプ指定地の水場
水を持ってテント近くまで戻ると、向こうからキツネが歩いてくる。こちらに気づいて離れて行ったが、戻るのが遅ければ荷物を荒らされていたかもしれない。食料を残してテントを離れたのは迂闊だった。
テント脇を通過して行く人があり、また、水流を跨ぐと広い場所があることに気づいたので、そちらに移動。そうこうしているうちに羅臼岳から下ってきたパーティが到着し、最終的にはテント4張、7人ほどになった。なんとなく皆フードロッカーに集まって食事。中でもお好み焼き屋をやっているという女性が賑やかで、お店(東京都板橋区、みりおんばんぶー)の名刺をもらった。フードロッカーは少し高いところにあるためか、そこではスマホが使えた。オホーツク海に日が沈む。
オホーツク海の日没

■7/22(土)
5:20に出発。三ツ峰の二つのピークの間に上がると、羅臼岳が圧巻。1508mピークには道が付いているようだが割愛した。
羅臼岳
羅臼平へ下りる斜面にも花が咲いている。
色とりどりの花
羅臼平にはテントが1張、出発準備中だった。
岩清水分岐から山頂まで標高差200m以上の往復なのだが、クマに持って行かれては困るので、そのままザックを担いで上がる。岩清水は分岐の少し上で、抉れた岩壁の天井からコケを伝って幾筋かが滴り落ちていた。昨晩泊まり合わせた人の話では水が出ていることの方が少ないそうだが、今は手に受けて飲める程度の量。美味しいと聞いたが地図には「要浄化」とあるので、飲むのは一口だけにしておいた。
岩清水
羅臼岳最上部は岩場。難しくはないが、身体を持ち上げる際にザックの重さが堪える。
羅臼岳山頂下
7時半、羅臼岳(1660.0m)に登頂。周囲360°の眺望、特に硫黄山方向に重なった山々が良い。岩場のため通常の標石は建てられないのだろう、三角点は岩にコンクリートで埋め込んだ円形プレートだ。山頂はスマホ可。
羅臼岳登頂
羅臼岳山頂より

羅臼岳三角点標
暫し眺望を楽しんで下山開始。岩清水分岐から屏風岩方面に折れてお花畑分岐への急斜面に掛かったところで、下の雪渓の途中で立ち止まっていた男性が「クマがいます」。見ると、我々からは300mも離れているだろうか、草原を2~3頭が移動しており、やがて樹林に隠れた。
クマ遠望
下の男性が動き出したので、我々もアイゼン(チェーンスパイク)を着けて雪渓を下った。
屏風岩まで緑の谷間の急傾斜。屏風岩はこれもまた火山的な断崖で、溶岩あるいは火山灰の堆積なのか細かな層が重なっている。
屏風岩
地図に水マークのある泊場では沢が合流している。大きな沢は鉄錆色の赤と硫黄の白が混じって物凄い。
泊場の沢
その先で地図に「渡渉前後のコース不明部分あり」とある箇所は、対岸のペンキマークが判りづらい。自分には下の写真中央の赤矢印が見つけられなかった。
渡渉箇所不明瞭
沢から離れて一登りするのに汗をかく。樹林のトラバースに入ってもじりじりと照り付けられて非常に暑く、消耗した。コースタイム以上の時間を要して第一の壁に辿り着くと、あとは緩やかな道で楽になった。
登山口に13時。ヒグマ目撃情報を記入し、知床羅臼ビジターセンター経由で羅臼温泉野営場に向かった。
野営場の午後の受付は15時からなので、まずテント設営して、道路向かいの熊の湯で汗を流す。女湯は内湯で、男湯は脱衣所付きの露天。熱い湯に浸かってさっぱりした。周辺に自販機など無いので、そこから1km程歩いてらうす第一ホテルで缶ビールなど調達。野営場では観光客用ゴミ袋(燃えるゴミ、燃えないゴミ用各100円)を買うことでゴミ回収ボックスを利用できる。使用済の携帯トイレは、回収ボックスのうち燃えるゴミの隅に置けとのこと。野営場の周囲には動物除けの電気柵が巡らされており、安心してテント内で乾杯、これにて山行終了。

■今回のルート
硫黄山~羅臼岳ルート_1
         1日目
硫黄山~羅臼岳ルート_2
         2日目
硫黄山~羅臼岳ルート_3
         3日目

2023/7/23(日)~7/25(火) 知床観光2023年07月23日 00:00

せっかく知床まで来たことであるから、羅臼岳から下山(https://marukoba.asablo.jp/blog/2023/07/19/9606273)後にT中氏と共に観光。

■7/23(日)
テントを畳んで、羅臼温泉野営場から羅臼の街まで徒歩移動。ヤマト運輸営業所が開くのを待って、予め送っておいた着替えなどを受け取り、折り返しにザックを発送。着替えと荷物整理にはバスターミナル(Googleマップ ⇒ https://goo.gl/maps/ri7rReeYAEZfLEpGA)の待合室が使えた。ターミナル前でエゾシカが草を食んでいたりする。
エゾシカ
羅臼では北方領土を眺められるかと思ったのだが、徒歩移動ではウトロへの午前中のバスに間に合わない。羅臼観光は諦め、9:10発のバスに乗車。知床峠を経て半島を横断する道から羅臼岳が大きく眺められた。バスを抜いていくライダーも多い。北海道ツーリング、いいなぁ。
ウトロに戻って、道の駅シリエトクでウニ・イクラ丼(3500円)を食す。ウニが甘い。
ウニ・イクラ丼
午後は予約してあった知床クルーズ。ゴジラ岩観光の知床岬コース(13:30発、大人9000円)。自分は羅臼で受領した荷物に双眼鏡を入れておいたが、無料レンタルもあった。往路では海岸の奇岩や漁業基地などの見どころ解説があり、遠いながらも海岸を歩くクマ(ずいぶん黒い)や、オジロワシの飛んでいたり岩崖に泊まる姿を見られた。半島先端で船のスタッフに写真を撮ってもらい、復路はほぼ真っ直ぐに港に戻る。それでも、岩の上で昼寝するクマらしき影やイルカの群れに出会えた。海上から硫黄山はじめ踏破してきた山々も見える。
知床クルーズ航路
       ↑ 青線:クルーズ航路  赤線:硫黄山~羅臼岳縦走ルート
知床半島先端
知床半島先端にて

硫黄山
3時間のクルーズで港に戻り、オロンコ岩を潜って松浦武四郎翁顕彰碑を見たりなどしてからボンズホームに投宿。男女別相部屋のとほ宿だが、3人部屋にT中氏と二人だった。隣部屋には自転車旅の若者と白人(ニュージーランドと言っていたか?)の若者。風呂トイレは共用だが、コイン式洗濯機・乾燥機を備え、部屋も綺麗で文句無し。素泊りなので夕食を摂れるところを探して、知床クルーズFOX号(クルーズは休業中)で焼肉&ビール&じゃがいも焼酎。
宿でタブレットを使っていて時計が1時間進んでいると思ったら、タイムゾーンがウラジオストクになっていた。確かに地理的に東京より近いかもしれないが、勝手に変更するんじゃない!

■7/24(月)
ボンズホームで朝食(昨日夕方のうちに頼んだ)を摂り、バスで網走に移動。
博物館網走監獄までタクシーを利用し、まず監獄食堂でホッケ定食(900円)と監獄ビール。博物館は入館料1500円に見合うだけの物量があった。『ゴールデンカムイ』もここで大いに取材したのだろう。観覧中に雨が降り出したが、折よく流してきたタクシーを門前で捉まえて今夜の宿へ。
民宿ランプは二人で5040円と異様に安く、線路脇なので夜中に煩いのではと思っていたが、そんなことはなかった。設備は古いが、部屋は6畳8畳に一人ずつで値段相応以上のお得感。他には居続けらしい若者や結構年配のライダー、親子連れもいたようだ。ここも素泊りなので食事場所を求めてさまよい、コンビニで朝食など買ってから宿に近い中華に入った。食事中に結構な大雨。

■7/25(火)
バスで北海道立北方民族博物館へ。特別展示「北方民族の編むと織る」と併せて800円。ここも見応えがあり、アイヌばかりでなくヨーロッパや北米まで「北方」に暮らす民族をカバーしている。モンゴルまで入ってくるのは意外だった。良い展示だったので、総合案内(800円)を購入。
博物館を出て、T中氏は空港へ向かうためにバス待ち。自分は夕方まで時間があるので、ここで解散した。
一人になって、徒歩でオホーツク流氷館へ。ここの展示(700円)は地階のみでやや物足りないが、流氷の実物展示は-15℃と涼しくて良い。実物のクリオネを見たのは初めてだったかも。屋上に上がると、曇りがちで山並みはよく見えなかったが、反対側に網走湖や能取湖(のとろこ)が大きい。
オホーツク流氷館より網走湖
バスを待って市街に戻る。残り時間で見られる施設を考えて、モヨロ貝塚館へ。貝塚は地面の窪みにしかみえないが、続縄文~オホーツク文化の住居跡と墓跡を一巡りしてから博物館(300円)に入る。北の地で猟や漁に勤(いそ)しみ、クマやその他の動物に祈りを捧げる生活が興味深い。
モヨロ貝塚
モヨロ貝塚の動物土製品
早めのバスで女満別空港に向かい、土産の調達と食事を済ませて飛行機に乗った。
夕暮の空

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