2019/9/1(日)~9/4(水) 薬師岳2019年09月01日 00:00

以前に読売新道を歩いた時に雄大さが印象的だった薬師岳を縦走。決め打ちしておいた夏休みが近づき天気予報と睨めっこだったが、富山の降水確率は60%前後、降られるのを覚悟で突入した。

■9/1(日)
池袋発の深夜バスで富山駅7:30、電鉄富山で有峰口に8:55。9:45の折立行バスがあると思ったのだが、計画時の見誤りだったらしく11:10まで待つことになった。無人のレトロな駅舎で、昔の駅名「小見驛」が掲げてある。
有峰口駅
自分一人を乗せ、バスは折立に12時着。かなりの台数が駐車しているのはキャンプ客や登山者だろうか。休憩所脇の「生水は飲めません」とある蛇口で水を汲み、12:10出発。曇り。
樹林帯を500mも登り、三角点ベンチ手前でツアーパーティーを追い抜く。最後尾の添乗員が客に向かって「初めての追い抜きです」と声を掛けていたが、すぐにベンチで一緒の休憩になった。ベンチは展望良いとのことだが、時々薄日が射す程度の曇り空、山にも雲がかかって映えなかった。登りパーティーに逢ったのはこれが唯一。下ってくる人は多い。
三角点ベンチを境に傾斜は緩む。草原越しに有峰湖も見え、ほぼ遊歩道と思っていると、道の補修をしていた。
五光岩ベンチからは薬師岳を望めた。
五光岩ベンチからの薬師岳
北の雲の切れ間には剱岳も覗く。写真を撮っていたらポツリ。太郎兵衛平が近づくと前方にガスも出てきた。太郎平小屋からは木道で、池塘も見られる。
薬師峠キャンプ場に15:50着。先客のテント3~4張り。自分のテントを張ったところで降り出した。避難小屋のような管理棟で受付(\1000)。缶ビールはモルツが冷やしてあり、ショート缶(\600)を買う。
テントに入って間もなく、雨は止んだ。夜は静かだったが、時折風。

■9/2(月)
5:45出発。曇り、弱い風、11℃。見上げる樹林にはガスがかかっている。
沢沿いに登り、30分足らずで薬師平のベンチ。ガスで眺望はないが、霞む草原もまた風情があって良い。薬師岳山荘手前で、道の真ん中に雷鳥2羽が出てきた。これもまた曇天ならではの幸運。
薬師岳山荘に7時。ベンチで休憩して山頂への登りに掛かる。ケルンが点在し、今はそれほどでもないが濃霧の時には頼りになるだろう。2900m地点、地形図に「避難小屋」とあるのは2~3人が立って入れる程度のごく小さな石組のスペース。昭文社山と高原地図では「壊れた避難小屋」となっており、小屋の一部が残っているということか。山荘から登るにつれ風が強まっているし、風雨やガスで行き悩んだ時の一時避難には使えるだろう。山頂直下、ハイマツの間にテント好適地があった。もちろん国立公園内で指定地以外のキャンプは禁止だが。
8時、薬師岳(2926.0m)登頂。ガラガラとした岩の体積のてっぺんに山頂標と、金色の薬師如来像を収めたお堂が建っている。
薬師岳山頂
残念ながら相変わらずのガスで周囲は真っ白だ。風を避けてお堂の裏、三角点標石の傍らで休憩する。
山頂からの細い稜線上、風は終始吹き続け、時折よろけるほどのが来る。北薬師岳まで40分を要した。高度を下げていくとようやく風は収まったが、2700m辺りで今度はポツポツと降って来たのでスパッツを着ける。道の真ん中に鎮座した黒くて大きな糞は熊か? ガスの中で一時的に明るくもなるのだが、傾斜の緩む2600m辺りで本格的に降り出した。笹原に囲まれた大きな池塘かと思う池を見て間山(まやま)の2585.4m三角点を通過、その先で左手に見えるのが間山池だろう。とりあえず雨は上がり、眼下に黒部川の谷間が見える。
スゴ乗越小屋に10:40着。調子が良ければ五色ヶ原まで足を延ばせるかと思ったが、雨に降られたら今日はもう十分という気分で、時間は早いが予定通りにテントを張ることにした。ここもテントは\1000。水は小屋入口前の流し、トイレは小屋の横から入って宿泊者と共用。テント場はスゴ沢方向に少し進む。受付時、宿泊したらしい女性二人組が薬師方向に出発するところで、スタッフが風に気を付けてとアドバイスしていた。タルチョ(お経を書いた五色の旗)やお香など、チベット趣味の小屋らしい。小屋前の屋根付き展望所(?)にはテーブルとハンモック、双眼鏡が置かれていた。天気の良い日にハンモックに揺られてビールでも飲んでいたら人間ダメになってしまいそうな。テントに入った後しばらく本降りで、止み間を挟みつつ夕方まで降っていた。テントは揺れないが、周囲の木々は風にどよめいている。テン場には自分一人。

■9/3(火)
4時起床時は雨。6時には止んでいたが、雲が周囲の山の頭を押さえて今にも降りそうなので雨具着用で出発。
スゴ乗越小屋は乗越にあるのかと思うと然(さ)に非(あら)ず。小屋は標高2370m、乗越は急傾斜を下りさらに緩やかな小ピークを越した先の2150mとなる。この下りで虫がまとわりついてくるのが煩い。小ピークの手前、トラロープの下がった土斜面は足を滑らすとずっと下まで転げ落ちそうな危険個所。乗越に下りていく斜面から見上げるスゴノ頭~越中沢岳が大きい。乗越でわずかに青空が覗き、雨具の上を脱いだ。
乗越からはスゴノ頭(2431m)下の2400mまで急斜面を真っ直ぐに上がり、100mも下って越中沢岳(えっちゅうざわだけ、えっちゅうさわだけ)へ300m近い登り。乗越からの登り返しはたいていそうだが、かなりしんどい。2400m地点からスゴノ頭に向かって踏み跡が付いているようだが、植生保護のため立入禁止の札が下がっていた。越中沢岳の登り始めでペンキマークに従うと崩落斜面に出た。そんなはずはないと見まわすとすぐに道が見つかったが、マーキングした岩が転げてしまったのか。急斜面を登るうち空が明るくなってきて、道がほぼ平坦となったところで山頂をすっきり見通せた。8:40、越中沢岳(2591.6m)登頂。しかしまだ雲が多く、眺望はいまいち。
下りに掛かったところで再び雷鳥に遭遇。今度は若い感じの2羽と幼鳥だった。
ライチョウ
その後すれ違った単独男性が本日初の人間。この辺は広くて風が強い。ペンキマークがしつこいぐらいに付いており、山と高原地図には[迷]マークに「荒天・濃霧時注意」とある。越中沢乗越(2356m)で夫婦パーティとすれ違い、その後五色ヶ原山荘まで人に会わなかった。ハイシーズンを外したとは言え、思った以上に人が少ない。長大な薬師岳縦走ルートを辿るのは少数派と見える。
乗越からはまたもや250mの登り。ハイマツの間を黙々と身体を持ち上げていると、行く手でホシガラスがハイマツの実をついばんでいる。足元に散らばる喰いカスはこれであったか。ハイマツを抜け山頂が近づくと強風にガスが吹き上げられていく。鳶山(とんびやま、2616m)に10:10。風は収まったが周囲は真っ白のままだ。ここには半ば草に埋もれた標石があり側面の文字は三等と読めそうなのだが、国土地理院の地形図や基準点成果等閲覧サービスに三角点の記載はない。同じく地理院の「日本の主な山岳一覧」には「標高点」とあるが、1m単位の標高点に標石はないはずで、かつて三角点だったものが標高点に変更されたのか?
鳶山を下りていくと五色ヶ原に入る。草原に黄色の花が群生しているように見えるのはイワイチョウの葉だ。数は少ないながらもピンク、白、黄といった小さな花々も咲いている。一方、草原が途切れて岩の散乱する斜面には残雪あり。ガスにけぶる風景を眺めながら木道を辿ると五色ヶ原山荘が視界に飛び込んできて、その大きさにちょっと驚いた(120人収容だとか)。昨日に引き続きまだ11時前と早いが、ここから室堂まで足を延ばしても帰宅できるか怪しいし、午後にはまた雨になりそうな気もするしで、無理をせずに泊まることにする。山荘でキャンプ受付(\700)し、山荘前の木道を10分ほど行くとキャンプ場だった。11時、誰もいない。
見まわすとトイレの建屋が目に入るが、水場は無い。GPS地図を頼りに進んでみると、キャンプ場の端、沢に落ち込む手前に「沢水ですので煮沸して使用してください」と注意書きの付いた水場があった。雨が降っても水が流れて来なさそうな場所を選んでテント設営。そうこうするうち単独男性、男性二人組、大学生の男女混合パーティが到着し、それぞれに設営した。ガスは次第に取れて青空も覗くようになったが、晴れるところまではいかない。赤牛岳~烏帽子岳は比較的よく見える一方、針ノ木岳はなかなか雲が取れなかったが、やがて姿を見せてくれた。風はやや強かったが、いつしか止んだ。夕方に雷鳴らしき音が聞こえたものの天気は全体に回復傾向で、雨の予想は外れ。
五色ヶ原より
五色ヶ原より

■9/4(水)
早めに室堂に出て余裕をもって帰宅するつもりだったが、4時に目を覚ますと雷雨。これはダメだと再び目を瞑って半覚半睡でいるうちに雷は遠ざかったが、雨は激しく、谷の唸る音が聞こえている。降り止まないかとグズグズしていたがその気配もないので6時前に起き出した。食事しているうちに小降りになったのでテント撤収。少々のんびりし過ぎたか、他のテントは無くなっていた。
7時に出発、五色ヶ原を抜け、ザラ峠(2348m)に下る。下る途中で三度目の雷鳥。ザラ峠は3年前、松尾峠から立山温泉跡の方に入り、脱水でヘロヘロになりながら上がってきた場所だ(http://marukoba.asablo.jp/blog/2016/08/27/9250135)。実際にはややルートを外してこの先で縦走路に合流したのだったが。そんなことを思いながら、ガスで墨絵のようになっている獅子岳へ、ここから350m以上の登り。これまたしんどいが、足元にヒキガエルが出てきて和む。ハシゴ、クサリを通過して振り返ると、ザラ峠の向こう、ガスをまといつかせた鷲岳が美しい。湯川谷の新湯から上がる湯気も見える。獅子岳(2714m)に8時半。
いったん下り、鬼岳への登りに掛かる前に、雨具の上を脱ぐ。そこから見えた先行の二人パーティは年配の夫婦だった。室堂からピストンとのこと。道なりに鬼岳、龍王岳の側面を通過し、一の越山荘への分岐(2840m)まで上がって休憩。ここまで来ると五色ヶ原へと向かう人が増える。外国人と気づかずに「こんちはー」と挨拶すると「Hello」と返ってきたり。3年前は強風を避けてここにある富山大学立山施設の裏にテント設営させてもらったのだった。
浄土山(2831m)の急傾斜を下ればほぼ観光地で、室堂ターミナルに10:50到着、濡れた雨具をザックに押し込み、顔を洗う程度でバス&ケーブルカーへ。立山へ下り、駅前の千寿壮で入浴(\600)する。小さな風呂で風情はないが、ここでさっぱりして着替えできるのはありがたい。ナトリウム炭酸水素塩泉で肌がツルツルになる。直近の電車で富山に出て、新幹線で帰宅。

一日当たりの行程は短く山中でのんびりできたし、雨中を歩く時間も覚悟した程ではなかった。薬師山頂で眺望が得られなかったのは残念だが、逆に薬師の方は間近から見られた。総じて満足の山行。そう言えば、久しぶりに深田百名山を稼いだな。

■今回のルート
20190901_薬師岳_1

20190901_薬師岳_2

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