2009/1/10(土)~1/11(日) 八ヶ岳・天狗尾根 ― 2009年01月10日 00:00
S木・Y氏(女性)企画の無名山塾自主山行。メンバはY永・H氏、自分で3人パーティ。10月に登った天狗尾根(https://marukoba.asablo.jp/blog/2008/10/18/9524420)の厳冬期バージョンだ。ただし、下りはツルネ~権現岳~天女山の計画。10~11日にM本・Y講師の<ツルネ東稜~権現岳>講習隊も入っているので、互いの安全管理とコース上での迎撃を目論んだ次第。
■1/9(金)
山行をスピーディに運ぶため、美し森の駐車場で前夜泊。
今回はテント(Y永氏の2~3人用)のフライを省略して本体のみという荷物軽量化優先なのだが、家を出る時に雨で、傘を持つハメになった。
駐車場のトイレは冬期閉鎖、自販機も動いておらず、水を調達する当てが外れた。仕方なく積もっていた新雪を溶かして水を作ってから就寝。
■1/10(土)
4:45出発。-4℃。歩き始めには星が出ていたが、やがて曇って一時小雪。出合小屋に向かう途中で旭岳に行くパーティに追い越されたので最初からラッセルの苦労をしないで済んだ。日が出ると、雲はあるものの青空。地獄谷を進むうちに風が出てきた。
8:10に出合小屋。気温は下がって-7℃。小屋内で身支度をしていた2~3パーティはいずれも旭岳らしい。こちらも一服してからワカンを着けるが、S木氏の新品が上手くいかない。よくよく見ると片方のベルトが短い欠陥商品? 四苦八苦の挙げ句、何とか装着に成功した。
そんなこんなで小屋を出発したのは9時。小屋の先の分岐から天狗尾根取付に向かう方向にはトレースがない。10月に見ておいたルートだが、潜ると膝上くらいまでの雪の中、歩きやすい箇所を探しながら行く。9:30に前回と同じ取付地点に到着。そのまま斜面を登り始めるが、雪の下は枯れ草ですぐにワカンでは対応できなくなってしまった。登りかけた斜面を均してアイゼンに履き替えるが、登る前に斜面を観察して適切な装備を選ぶべきだったと反省。
尾根に乗り、樹木にザックを引っ掛けられながら進んで、11:10に左右の切れ落ちた岩場(標高2100m付近)。前回、風に吹かれたら嫌だと思った箇所だ。今回も幸い無風だったが、狭い尾根が真っ白になった下に岩を隠していると思うと相当に怖い。岩から下りる際は雪を払って手掛かりを探しながらのクライムダウンで特に緊張した。
その後はまた樹林帯の登り。引き続きアイゼンでノントレースのルートを進むと、標高2140m付近で赤岳沢方向から来た足跡に出会った。やがて尾根から離れていったところを見ると登山者ではないのだろう。標高2300mにかかる頃から風が強まり、気温-11℃、雪が舞う。キレット~権現岳辺りの稜線は雲に隠れて荒れていそうだと思っていたが、同じ気流に入ったのか。
この頃から1型糖尿病を抱えるY永氏の体調が思わしくなくペースダウン。山行を中止して引き返すことも検討したが、本人の意見を聞いて早めにテントを張ることにする。13:30、標高2350m付近で樹林の間に平坦な箇所を見つけて、本日の行動を終了。テント内で休息するとY永氏も回復した。講習隊と無線交信すると、予定のキレット小屋までは無理と判断してツルネの取付で泊まりとのこと。
夕方には晴れ間が戻り風も収まっていたが、日が暮れると再び吹き始めた。フライなしのテントには風がしみ通り、コンロに向いている身体の前面はまだ暖かいが背中が寒い。S木氏は「これはテントではなくツエルトと一緒、クライミングのシェルター」と強調していた。夜中、時折テントを揺らす突風。
■1/11(日)
3:30起床、5:30出発。気温-17℃、ヘッデンの光の中に舞うのは雪かダイヤモンド・ダストか。樹林帯を進む内に夜が明けると晴れ。
6:20、カニのハサミ手前の樹林を出るところ(標高2460m)でハーネス、ヘルメットを装着。樹林を出ると強風。
カニのハサミは、前回はハサミの間を通過したが、今回は左側を巻く。簡単に通れるような記録をWebで読んでいたのだが、狭い足場にハサミの岩が張り出していて、大きなザックを背負い手袋をした状態では少々怖かった。
7時過ぎにハサミを通過したところで講習隊と交信、まだテント内で天候の様子見とのこと。こちらも計画より進行が遅れているし、キレットの降下も厳しそうなので、今回は文三郎尾根を下ることにする。
次の岩場は10月の時は印象に残らなかったのだが、今回見るとかなり急。ピッケルをダガーポジション(ピック=尖端を前にした持ち方)で使って登る。
7:30、斜上するフィックスロープの付いた30m正面岩壁。続く雪壁と併せて今回のハイライトと目された箇所だ。この雪壁のために今回ダブルアックスを用意している。
フィックスロープ始点の樹木に支点を作り、Y永氏のビレイでS木氏が先行。正面岩壁から雪壁に上がる箇所を苦労して抜け、雪壁上部まで行った。
次に自分がロープにプルージックを取って続く。プルージックを上げていくのが鬱陶しく、雪壁に上がる箇所はフィックスロープを掴んで半ばゴボウで登ってしまった。雪壁もプルージックを扱うためには片手を空けておかなくてはならず、ダブルアックスは使えない。右手でピッケルを雪面に打ち込み、左手でプルージックを上げながら登る。雪壁は足元の雪がしっかりしているのとロープがあるのとで、それほど難しく感じなかった。Y永氏の上がってきたのは9時過ぎ。それからロープをまとめて、結局、ここに2時間ほどを要した。
移動を始めてから振り返ると雪壁を上がってくる人が見えた。今回の天狗尾根で見かけたのはこの2人パーティ(おそらくガイド山行)のみ。もっと混雑する人気ルートかと思っていたが、案外静かである。
印象的な岩場については前回の記憶があるのだがその間のことは曖昧で、時によろけるほどの風の中、ルートを探りながら前進する。岩を斜めに上がっていく箇所では二人が通過した後、手袋をしての手掛かりに難儀したのと足場を探る時にストラップで下げたメガネが邪魔になるのとで手こずってしまった。
大天狗基部に10時。前回は二つ目の残置スリングを使ってテラスに上がったが、今回は一つ目を使うことにする。前回と同じ樹に支点を作り、自分のビレイでS木氏リード。S木氏、Y永氏の登りを下から見ていると、残置スリングから上に乗り越すところが難しく、そこを上がってテラスに向かうトラバースも嫌らしいようだ。自分で行ってみると、特にトラバースに手掛かりが乏しく、足場も切れ落ちた下を覗いて探す必要があって怖かった。大天狗には1時間以上を消費。
ルートを探しながら小天狗を通過し、一般の縦走ルートに突き上げる稜線に出たのが11:40。岩場でのビレイや待ち時間を除いて、5時間以上も休憩なしの行動だった。
縦走路に出るとなお一層の強風。しばしば前に進めないほどの西風が来るので稜線から吹き落とされるのを恐れ、あえて縦走路を風上側に外したコースを取って文三郎尾根に乗った。尾根手前では雪の斜面をトラバースする踏み跡があったから、冬道として使われているのかもしれない。
13:10、樹林帯に入る手前でようやく風がやんだ。小休止でオーバー手袋を外すと右手の指先が硬い。ウールの手袋が凍ったか? 右手を出してみると、なんと中指・薬指・小指の半ばから先がカチカチで真っ白。縦走ルート手前の休憩では何ともなかったし、縦走ルートに上がるのにクサリを掴んだ時も異常は感じなかったから、この1時間ほどの間に凍傷にやられたのである。今回は特に指先が冷たいとか痛いとかいうことはなかったのだが(足指の方が痛かった)。3本の指はピッケルを握るのでもともと血行が良くないところに冷たい強風に吹かれたためだろう。そのまま行者小屋まで下り、テルモスの湯(ぬるくなっていてちょうど良い)に浸けたら、すぐに色が戻った。指先は紫色だが。
16:20、美濃戸に到着して山行終了。冬型気圧配置による強風に悩まされたが、天候はまずまず。楽しい反面、冬山の難しさ(ザックと手袋)、厳しさ(強風、凍傷)を感じさせられた。
あずさ車中で打上げをし、さらに自分とS木氏は新宿に残っていた講習隊の「飲みたい人」と合流。飲んでいるうちに気づくと、凍傷の指に水泡が膨らんでいた。
■今回のルート




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