2008/1/2(水)~1/4(金) 南ア・白峰南陵2008年01月02日 00:00

無名山塾の講習(研究ステップ)。参加要項による日程計画は次の通り。
 2日(水):身延駅(タクシー)→田代→転付峠→C1(テント泊)
 3日(木):C1→南陵C2(テント泊)
 4日(金):C2→笊ヶ岳→C3(テント泊)
 5日(土):C3→雨畑(タクシー)→身延駅

正月から、しかも3泊4日の雪山は初めてだが、目的地は11月に登ったばかりの笊ヶ岳で、ある程度の様子は分かっている。メンバもその時の4人(同人T口・H氏、S木・Y氏(女性)、Y永・H氏、自分)+同人A川氏とT中講師。同人二人はCU(Communication Up、講師の手伝い役)参加で、講習生は3人となる。ルートは11月のコの字型(左下から左上へ)に対して、匚の字型(右上から右下へ)。11月には雪はなかったが、今回は最初からラッセル覚悟だ。

結果としては、雪に阻まれて計画通りに進めず、天上小屋山までで敗退。しかし、天気は上々だし、講師、メンバも愉快で楽しい山行だった。

元旦は甲府の東横イン舞鶴城公園で11月の4人が合流、買い出ししてきた酒と食料で正月を祝った。

■1/2(水)
身延線始発で身延へ。ここでパーティ6人が揃い、共同装備を分担。自分は持参したスコップの他、テント(1張り)のフライと4日夕+5日朝の食料を受け持つ。不要物はコインロッカーにデポした。
身延には雪があるのではと思っていたが何もなく、タクシーで田代(広河原)まで入った。
8時に歩き始め。無風快晴。登山口には雪が少し残っているだけだが、沢沿いに進んでいくと段々と周囲が白くなり、道脇の岩壁からは氷柱(つらら)が下がっている。それでも気温は-4℃程度で、歩いていると暑い。足下には木製、金属製の小さな橋が多く、1カ所は氷柱から滴る水で凍り付いていた。沢にはいくつか滝もあって、なかなか雰囲気のある道である。
10時、増水の警報らしき放送に驚かされるが定時放送らしい。間もなくその放送元と覚しき東京電力管理小屋を通過。さらに進んで沢から離れると、いよいよ転付峠への登りだ。積雪は10cm以上あるが、踏み跡が付いているし、アイゼンも不要。下りてきたパーティ2、3組とすれ違ったが、笊ヶ岳方面からではなかった。
12:50に転付峠。小休止して少し進むと、11月に二軒小屋に下りた地点で踏み跡がなくなった。ここからいよいよラッセルとなるのでワカンを着ける。

雪は踏み抜くと膝上まであるが、最初のうちはワカンが利いてそれほど潜らないで済む。しかし、樹林に入ると小さな若木に見えるのが実は梢。講習生がどこが潜らないかを考えながら交替で先頭を行くのだが、時々ズボっ。夏であればこの辺は林道で、まだ登山道でさえないのに。14時過ぎまでそうやって進み、保利沢山(2155m)手前の平坦地を今日のテント場に決定。

テントは2張りで、4人用に講習生、3人用に講師+CUが入ることにした。夕食は4人用に集まるので手狭だが、それにはもう慣れている。お茶を飲み、T中講師流の軽量・簡単な夕食を摂り、落ち着くと酒。雪を溶かして水を作りながらT口氏持参の金魚すくい風フィルターを使うのに「T口流」だとか、フィルターのことを「金魚様」だとか、「金魚」は隠語で覚醒剤を指すから「金魚いくつある?」などと言っているのを他人に聞かれたら誤解されるんじゃないかとか、笑い声の絶えない賑やかなテントだ。実際、テントの立ち並ぶ中だったら顰蹙を買うかもしれないが、周りには誰もいない。
19時就寝。夜中に尾根を渡っていく風の音が大きいが、テン場は静かだった。

■1/3(木)
4時起床、テント毎に朝食を摂り、6時にザックを担いで準備完了・・・と思ったらトイレを埋めるのを忘れていた。後始末をして出発。今日も快晴、気温-11℃。
林道が終わり、登山道は尾根に上がる。道標や赤テープに加えて樹木の隙間でだいたいルートは分かるのだが、不明瞭なところで多少外れたり、コンパスで方角を確かめたり。

8時、尾根とルートの分岐を通過。ここから天上小屋山手前まで平坦なトラバースとなる。確かに夏道は平坦なトラバースで、11月には楽々ハイキング気分で歩いた道だったが...何だ、この雪の斜面は! 樹林の中なので基本的に雪崩を心配する必要はないが、それにしても斜面を水平に渡って行くのは疲れる。曲がりなりにも進行方向を向いて雪の上に立てるならまだいいが、場所によっては斜面に顔を向けてピッケルを刺し横歩きである。それにまた足を踏み出すとズボズボとよく潜り、急傾斜では抜け出すのに足掻くようだ。講師によると、あと50cm積もれば尾根上を行った方が楽とのこと。
樹林帯のラッセル
これを交替でラッセル。一番手はともかく進み、二番手はそこを固め、三番手が均す。今回は6人いるので後ろに回っている間は楽に歩ける。トップを20分もやると相当きついのだが、S木氏は後ろから声を掛けるまでずーっとやっていた。その時の二番手以降の会話。
 「脳内麻薬物質が出てラッセル・ハイになってるんじゃないか」
 「そろそろ交替にしませんか?」
 「それはトップが決めることだから」
 「S木氏に任せておいたら二番手がバテちゃいますよ」
 「別パーティにして、二番手から後ろでローテーションしようか(笑)」
まだ体力的に余裕があるのでラッセルも楽しいのだった。

休憩時には右手の南ア主脈(聖~赤石~荒川三山など)の眺望を楽しみ、12時過ぎにトラバース終了。11月に50分で抜けた行程に5倍の4時間掛かった。無風快晴で行動中の気温-8℃という好条件でこの結果。これで荒れたらどうなるか。

13:10、天上小屋山のピーク手前に幕営好適地を見つけ、本日の行動はここまでとする。
時間が早いのでゆっくりと整地してテントを設営。中に入ってお茶に酒に食事。

テント割りは昨晩と同様で講師、CU組は引き揚げ。が、しばらくして再びこちらのテントに集まり講師が地図を広げる。ここまでの進行具合と明日以降のルートを示し、予定通り5日に雨畑に下山するためには明日は布引山に達している必要があるが、昨日今日の進捗具合からすると無理だ、と説明。それで残り日程をどうするか? 偃松尾(はいまつお)山から一日で田代まで引き返した経験があるが、その時は自分たちのトレースがあった。今は雪が降っていて、今日のトレースが明日どうなっているか分からない。さあ、どうする・・・? 協議の結果、明日は現在地から引き返すこととなった。明日中に下山できるか、もう1泊必要かはトレースの状態次第となる。このまま進んで良いものかの判断を講習生側で出来れば上等だったのだが、困難なトラバースを通過したことで楽観的になり過ぎていたようだ。ちょっと悔しい。

講習生はもう少し話をして、22:40就寝。
就寝前にトイレに出ると、雪が降っているが見上げれば星空。先ほどA川氏が曇っていると言っていた、その雲の落とし物らしい。

■1/4(金)
4時起床、6時過ぎに出発。やはり快晴、気温-12℃。雪はトレースを隠すほどではなかった。樹林越しに見える朝焼けの富士、薄くピンクに染まる南ア主脈の山々が美しい。
踏み跡があると昨日の苦労が嘘のように楽で、問題のトラバースも1時間半で通過。先頭に立つと、よくもまあ道を付けてきたものだと感心する。転付峠に11時までに着けば無理なく今日中に下山できるという計算だが、9時半には着いてしまった。
南アパノラマ
余裕があるので荷物をデポして第一展望台まで足を伸ばし記念撮影。10秒のセルフタイマーをかけて、シャッターを押した自分が駆け戻るのに間に合うか?というところで皆の笑顔が撮れたのは怪我の功名。

峠からの下りでY永氏と自分は沢に出たところでアイゼンを装着した(S木氏とA川氏は峠の上から)が、実際のところは東京電力管理小屋まで特に危険箇所はない。凍結した橋などが出てくるのはその先だった。

峠から電話が通じたので、講師が予約したタクシーが14時に田代まで迎えに来る。それに合わせてゆっくりと下山。
身延駅でデポ物を回収、そのままタクシーで下部ホテルに乗り付けて入浴。下部駅から甲府に移動し、反省会の後、解散。

■今回のルート
南ア・白峰南陵ルート

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