2024/8/19(月)~8/22(木) 仙塩尾根(塩見岳~仙丈ヶ岳) ― 2024年08月19日 00:00
8月中にもうひとつ大きな山に行きたい。かねて考えていた仙塩尾根はどうかと調べてみると、鳥倉林道ゲート行きの毎日あるぺん号があり、小屋の予約も取れる。天気予報はあまり好くないが、塩見から仙丈へと北上することにした。
■8/18(日)
北千住の叔父宅に荷物を置いて弥生美術館へ(⇒ 8/18 弥生美術館(小松崎茂展))。戻って夕食を御馳走になり、竹橋を23時発のあるぺん号(14500円、伊那大島駅でタクシーに乗換え)に乗車した。
■8/19(月)
伊那大島駅でタクシーに移ったのは自分を含めて2名だけだった。鳥倉林道ゲート(標高1650m)には予定通りの5時前に到着。身支度・トイレを済ませて5:20に出発、林道歩きで鳥倉(豊口)登山口(1770m)まで40分。途中、右手に朝日を浴びて、前茶臼山~奥茶臼山の稜線(帰宅後調べ。茶臼岳に非ず)が見えた。
登山口から入ると、樹林の間の道にマルバダケブキやキオンが咲いている。
1時間ほど登ると「4合目付近が崩落」との掲示。「登山口から三伏峠小屋まで ○/10」の指導標が合目を示すとすれば確かにそれらしい箇所があったが、それより何度も現れる荒れた丸木桟道の方が危なっかしい。
三伏峠との中間にある<ほとけの清水>はチョロチョロながらもしっかり流れていた。登山口にあった地質説明によると「仏像構造線はジュラ紀の付加体と白亜紀の付加体の境界断層で、(中略)断層破砕帯から水が湧き、水場になっています」。
塩川ルート分岐を8:10に通過。山と高原地図(手持ちは2021年版)で破線の塩川ルートだが、現場にはロープが張られて進入禁止になっていた(⇒ 大鹿村/登山道情報)。かつて塩川小屋に泊まってここに来たのは、もう20年前のこと(⇒2004/9/10~9/13 塩見岳~農鳥岳)か。
8時半過ぎ、三伏峠に到着。数人が休憩している他、カメラを持って散策する人もいる。
プラティパスなど用意して水場を探して行くと、小河内岳方面への分岐を入ったところで行き会った小父さんが「水? 今止めてきた」。三伏峠小屋の管理人さんらしく、タンクに貯まるまで使えないとのこと。その代わりに小屋で無料で2.5Lほど入れてもらえた。水場まで往復すると30分程度はかかるようで、却って助かったかも。
三伏峠を9時に出発。のぞき岩はガスで眺望無し。
10時過ぎに本谷山(2658.3m)で一休みし、さらに1時間で「小屋はじきかやぁ いんね あと40分だに」の札を見る(小屋は近いかなぁ? いや、あと40分だよ・・・だろうか)。
11時半過ぎ、塩見新道分岐。新道方面はロープが張られて進入禁止だが、時間も早いので少し探ってみる。ロープを潜ったところにザックを置いて権右衛門山の先まで行ってみたが、道はそれほど荒れておらず、赤テープも適度に付いていた。
権右衛門山に向かう途中、本谷山の登りで追い越していった単独男性と擦れ違った。彼は2512地点から登山道を外れて尾根通しで来たらしい。こちらは引き返しながら適当な斜面を山頂と思しき高みへ上がってみたが、ハイマツに遮られて眺望無し。1時間で新道分岐に戻った。
体色が鮮やかなこのイモムシ、たぶん蛾だと思うが何だろう?
三伏峠からは割合に歩きやすい道だったが、ここでちょっとした岩場を乗り越え、塩見小屋に13時過ぎに到着。
素泊まり(9000円)を予約済で、案内されたのは別館の<い2>。2段の上段窓側で、仕切り毎にシュラフと枕が備えてある。並びに他の宿泊者はおらず、気兼ねなく使える。小屋のシュラフは敷くだけにして、その上に自前のシュラフを拡げた。
下段の<いの一番>は百名山完遂者の特別室らしく、他より広いスペースに座椅子やお持ち帰りできる百名山バンダナが備えられていた。同宿で話をした3人パーティ(女性二人のうち一人は70歳過ぎで「好山病」と元気)の男性は、塩見が99山目と惜しいところ。コロナ禍で山小屋もずいぶん快適になったものだが、トイレは20年前と同じくトイレ袋方式だ。本館脇の展望所ではスマホの電波が良く入った。
自炊は基本的に屋外だが、雨の場合などは本館の談話室でもOK(ただし、準備を含め小屋の食事時間は不可)とのこと。周囲の山がガスに見え隠れしている中、別館外のベンチでスパゲッティを茹でた。
小屋に戻ると、18時半過ぎにザーッと降り出した。すぐに止んだが、その後も断続する雨音を聞きながら就寝。
■8/20(火)
3時起床。小雨のため、暗い談話室で食事。寝場所に戻り、この天気では4時半ではまだ暗いな・・・と思っているうちにすっかり明るくなった。5:20、雨具を着けて出発。
歩き出すと、雨は落ちてこないもののガスで眺望はなく、足元はしっとり濡れている。一時日の射すこともあったが、行動中はずっと小雨が降ったり止んだりだった。
クサリもある岩場を通過し、塩見岳西峰に6:20。手前に御料局三角点、山頂標の傍らに現在の三角点(3047.3m)がある。塩見岳は2006年(⇒ 2006/8/12~8/15 北岳~塩見岳、大鹿村)以来の3度目、3000m級は昨年の木曽御嶽山(⇒ 2023/8/31~9/2 木曽御嶽山)以来。
隣の東峰(3052m)の方が高いので、そちらに移動。5分ばかりの距離なのに西峰はガスに霞んでいる。二人組が来たので互いにシャッターボタンを押し合った。
東峰の指導標は地面から抜けており、矢印の指す方向はデタラメだ。一応コンパスで方角を確認して岩斜面を下り、今回のテーマ、仙塩尾根を開始。
北俣岳分岐まで来ると歩きやすくなる。ここから二軒小屋へも繋げてみたい。雪投沢源頭を過ぎていくと、2006年にキャンプした水場付近が見える。この付近は現在幕営禁止だが、当時その認識はなかったと思う。
肩の広場から2719を巻いて行くと、草原が現れて雰囲気が変わる。ダケカンバが地面に押し付けられたようになっているのは雪の重みのためだろう、足元で雨に俯いているのはハクサンフウロか?
さらにイブキジャコウソウ、小さなイチゴ、礫の道に戻るとタカネビランジ。
北荒川岳に8:20。三角点(2698.0m)の山だというのに、指導標の標高が誤っている。
北荒川岳から下りていく辺りはバイケイソウの群落で、花の時期にはきれいだろう。新蛇抜山(2667m)は、山頂下をトラバースしている道から分岐して往復10分足らず。竜尾見晴は眺望なく通過。安倍荒倉岳山頂への分岐を示す看板は足元の倒木に付けられており、見落としそうになった。三角点(2693.0m)の山だが、地味な頂だ。
15時前に雨は止んだが、テントから出歩くほどの眺望もない。スマホも通じず、ラジオを聞いたりkindle本を読んだりして過ごした。就寝時になっても、見える範囲に他のテント無し。
■8/21(水)
起床時、雲の切れ間に星が見えた。風も無く、テント撤収が楽だ。4:10、ヘッドランプで行動開始。
小屋から離れたテン場に1張あった。稜線に出て高度を上げると、背後に月と塩見岳。
三国平を過ぎると、朝日を浴びる農鳥岳の隣に富士山。
三峰岳(みぶだけ)に向けて岩場になり、ストックを収納し手袋を着ける。先行する若者6人パーティに追いつくと、彼らは北岳に向かうとのこと。安全なところで追い越させてもらい、6時に三峰岳(2999m)。
右手に大きな間ノ岳からぐるりと360度の大展望は、今回の山行中で一番の眺めだった。
山頂はスマホが通じたのでメールチェックや自宅への現在地連絡などしつつ、20分近くを過ごした。
山頂から下り、指導標に「仙丈ヶ岳 7時間50分 10.5km」とある分岐を南へ。この10.5kmが自分にとっての初ルートで、野呂川越まで下った後、仙丈ヶ岳へ700m超の登りとなる。
しかし、初めての道だから面白いという訳でもなく、最初のうちこそクサリ付きの岩場などもあるが、ほぼ灌木、樹林の間を黙々と進むのみ。時折、シダの美しい場所があったり、木間越しに仙丈ヶ岳~甲斐駒ヶ岳が見えたりする。苔むした三角点標石(2315.7m)を見て、野呂川越(2300m)に8:20。
横川岳(2478m)には、指導標に加えて間違った尾根に入り込まないようロープが張られていた。独標(2499m)の岩場にはロープが下がっている。晴れてはいるものの、仙丈ヶ岳方面にはガスが湧いてきた。
高望池(こうぼういけ)は湿地風の草が生えた広場で池は見当たらず。「水場 2min」と指導標にあるが、行動用の水に余裕はあるし「枯れることあり」なので、わざわざ確認はしなかった。
伊那荒倉岳は三角点(2517.6m)標石の傍らに山名板があるが、その先の2519mが山頂だろうと進んでも何もなかった。深い樹林、苔むす倒木や岩など、南アルプスらしさは味わえる。
樹林の合間の草地にはバイケイソウが点在し、フウロが咲いている。大仙丈ヶ岳が近づくとハイマツ帯となり、その間にハナゴケの群落も見られた。
大仙丈ヶ岳(2975m)は、もう頂上かと思うとまだ先があってなかなか辛い。山頂を前にして行き会った空身の男性が三峰岳以来初めての人間で、「高望池の水場は出てましたか?」と訊かれた。12:40に登頂。
仙丈ヶ岳は手前にガスが来ているが、山頂部は見えている。
あとはわずかな高度差で仙丈ヶ岳へ。足元にはミネウスユキソウ、タカネナデシコ、コバノコゴメグサ、トウヤクリンドウなど。
13:25、仙丈ヶ岳(3032.9m)に登頂。ここに立つのは登山を始めて間もない1991年以来、実に33年ぶりだ(小仙丈ヶ岳手前まで来たことはある ⇒ 2013/1/3~1/5 仙丈ケ岳(敗退))。遠目には人がいたようだったが、今は無人だ。山頂標の傍らの岩に、石仏や「手力男命」「○○○大神」と刻んだ碑が立てかけられている。かつては「前岳三柱大神」の石碑があったとのことだが、今、少し離れて「二柱大神」と読めるのがそれか?
受付(寝具無し素泊まり8000円を予約済)をすると、天気予報が悪いためキャンセルが相次ぎ、本日の宿泊は4人とのこと。寝場所は跳ね上げ階段を上がった2F(外から見れば3F?)で、割り当てられたのは3人パーティの隣の4番コーナーだった。
小屋前の水場が枯れてしまい、水は500円/500mlでの販売。今日の行動用が余ったので炊事用+αで2リットル買ったが、小屋の食事(2食3000円)と比べると、ずいぶんと水は高い。大仙丈ヶ岳で会った男性はここのスタッフなのだった。水の調達先として高望池の様子を見に行ったのだろう。
日が射しているうちに小屋前のベンチにテントを拡げ、傍らでお茶。小屋に生ビール(1000円)もあるが、いささか疲れて飲む元気がない。やがてガスが掛かったので撤収したが、テントはほぼ乾いた。自炊は小屋内のテーブルでも座敷席でもOK。ゆっくりと食べて寝場所に引っ込んだ。ガスが濃くなり、17時半過ぎには雷が鳴ったが、夜中には星が出たようだ。
■8/22(木)
3時に起床、暗い座敷席で食事して4:20に出発。広河原までのコースタイム6時間超なので、11時発のバスを目指す。
小屋から西に上がり、もう一度仙丈ヶ岳山頂を踏んだ。下っていくと、ガスの中、ハイマツからライチョウの声。その下のやや広い場所でご来光待ちをしていた同宿3人パーティと会話を交わしたが、明るくなってもまだガスが取れない。5時半に小仙丈ヶ岳(2864m)。
あとはさっさと下りて、7:10に北沢峠に到着。
峠には登山者が多くいて戸台行きバスを待つなどしており、こもれび山荘も開いていた。広河原への林道に通行禁止の表示は見当たらず。野呂川出合まで路面状態にも問題なかった。
ここまで来て、出合に架かる北沢橋にロープが張られ「通行止」となっている。自己責任でロープを跨いで橋を渡ると間もなく、路肩が崩落していた。続けて路面が半ば以上崩壊して大穴が開いているが、人間は山際を歩ける。さらに大岩が落石防止柵を押し倒していて「これは酷い」と思ったのだが、実はまだ序の口なのだった。
地形図上で小太郎沢と三好沢の中間となる橋は完全に落ちていて、沢を跨がなければならない。渡渉点まで踏み跡が付いているから、橋が落ちたのは最近のことではないのだろう。渡渉して踏む岩に先行する靴跡があったので、やや安心する。
極めつけは三好沢。橋の上に大岩が転がり、その先がまったく埋まっている。恐る恐る近づいてみると岩の間にロープが付いていて通り道が分かるのだが、そのロープがほとんど腐っている!?
ロープを伝って岩の堆積を越えても、路面に下りる道筋が見えない。周囲を探すと、上に向かってまたロープ。上がってからトラバースになり、ようやく路面に下りることができた。登山道の岩場よりよっぽど緊張する。
林道改良工事の現場まで来れば、工事車両が通っているのだから安全だ。しかし、この崩壊林道の修復ではなく、沢の対岸を工事しているのだった。この林道の復旧はありうるのだろうか。広河原まで下りて初めて、通行禁止の看板が出ていた。
広河原のバス停に9:56着。11時目当てで歩いてきたので10時発便は念頭になく、慌てて南アルプスマイカー規制協力金300円を支払い、バスに乗った。
甲府駅から1kmほど歩き、予め見つけておいた喜久乃湯温泉へ。温泉とは言いながら、番台にオバチャンが座っている本当の銭湯だった(温泉の湯舟もある)。銭湯料金430円+石鹸50円で汗を流した。
帰宅後にGPSデータを確認したところ、四日間の歩行距離55km、登り累積標高5400m。仙塩尾根は長かった。
■今回のルート(北が上=日の逆順)
↑8/22:仙丈小屋~広河原
↑8/21:熊の平小屋~仙丈小屋
↑8/20:塩見小屋~熊の平小屋
↑8/19:鳥倉林道ゲート~塩見小屋
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