2004/9/10(金)~9/13(月) 塩見岳~農鳥岳 ― 2004年09月10日 00:00
仕事の都合で遅い夏休み、標高順に15位(農鳥)、16位(塩見)を踏んで、すでに登頂している19位(乗鞍)まで繋げようと計画。ただ、平地の天気予報では降水確率30~40%とあまり好くない。雨中歩行も覚悟の上で出かけることにする。
■9/10(金)
南アルプスはアプローチが大変。初日は登山口までの移動のみ。
新宿から列車を乗り継いで伊那大島駅。バスの接続に余裕を見て早めに着いたのでゆっくり食事。もっともバス停は駅のすぐ前なのでギリギリでも大丈夫だった。鹿塩(かしお)まで45分ほどバスに揺られて15時着。料金は1000円。車内に手回り品料金として「リュック:運賃の半額」と掲示されているが、運転手に訊いてみたら「いいです」とのこと。座席を余分に占有しなければ徴収しないのだろう。
鹿塩から、夏のシーズン中にはバスの便もある塩川小屋まで歩く。地図で見ると8kmくらいあり、小屋には少し遅くなると連絡しておいたのだが、思ったより早く17時前に到着できた。
宿泊は自分一人、料金は2食付で6500円と安め。「山の便利帳2004」(「山と渓谷」2004年1月号付録)には、年末年始、連休のみ営業として素泊まり料金のみ掲載されているが、冬季の情報として出したものが載ってしまったとのこと。話し好きの親父さんで、採ってきたキノコを見せてくれたりする。夕食に出たキノコも美味しかった。ゴーヤみたいにイボのたくさんあるキュウリを1本もらい、19時就寝。
■9/11(土)
6時半前に出発。天気は薄曇。今日は塩見小屋まで。「山の便利帳」によると塩見小屋の宿泊は要予約なのだが、昨日14時前に電話したら話中、14時過ぎに掛け直したら10時から14時の間に携帯電話の方に掛けろという留守電メッセージだった。いつ掛けろっちゅうねん。
樹林帯を登っていくと、「塩川土場から三伏(さんぷく)峠まで○/10」という標識が20分毎くらいに出てきて励みになる。日本一標高の高い峠である三伏峠には10時到着。
ここで昼食の仕込み(アルファ米に水を入れるだけ・・・)していると、テントを担いだ若い男性がやってきた。ここのテント場から、今日は塩見を往復、明日は荒川岳の方に行くと言う。この人がテントを張っているうちにこちらは出発。
11時に本谷山。アルファ米のわかめご飯と塩川小屋でもらったキュウリの昼食。キュウリが瑞々しくて美味しい。そうしているうちにテントの男性がやってきて先行していく。
歩き出すと、立ち枯れた木々の間から塩見岳が見える。ガスが掛かったり晴れたり。
塩見小屋には13時着。早過ぎたが、ともかく宿泊受付を済ませる。受付は学生らしい二人で、次からは予約してくださいと言われた。2食付で料金は7500円。受付後、まずトイレの説明をしてくれる。ここは便器に便袋をセットして用を足し、使用済の袋はトイレ脇の箱に溜めて置いてヘリで下ろす方式なのだ。便袋は宿泊者には1枚支給、それ以降は200円で買うことになる。ただし、男性の小は屋根もないアサガオだけが別にあって無料。ここにしたものはタンクに溜めて一括処理するらしい。
寝場所は戸口脇上段の一人スペースを割り当てられる。個室は嬉しいけど天井が低い。
小屋前の岩小山に上がると、塩見岳が間近く見える。
テントの男性とは小屋にほぼ同着で、少し話をする。今回はどうも調子が悪いと思ったら出発前に献血したためかも、と言っていた。やっぱり赤血球は温存しておかないとね。
彼は塩見岳ピストンへ向かう。こちらは暇潰しに権右衛門山へ行こうと塩見新道に入ってみるが、頂上は通っていなかった。地図をよく見れば行かなくても分かったのに。小屋に戻ってビールを飲んだり手持ちの文庫本を読んだり。
そうこうしていると、到着した二人組の一人が受付の学生と言い争っている。割り当てられたスペースが二人で寝るには狭いと漏らしたら、受付が「嫌なら下りてください」と言った、その言い方が無礼だというのである。この受付のセリフはたまたま聞こえていたのだが、実際、もっと他の言い方があるだろうにと思われた。あわや掴み合い、その上受付のもう一人の学生がスコップを担いできたりもしたが、二人組のもう一人がなだめたり、小屋側も年配の責任者らしいのが出たりで収まった。宿泊の二人とはこの後けっこう話をしたが、山に慣れたごく常識的な人たち。一方、学生の方も普通に対応している限りでは人懐こそうな好青年である。ただ、学生はやはりものの言い方を知らないと感じられる場面もあった。若者よ、山小屋でアルバイトして得るものは金銭だけではないぞ。なぜ宿泊者が怒り出したのかを考えて、今後の糧としたまえ。
その後、20名の団体が入って小屋はほぼ満員。この時期はもうガラガラだろうと予想していたが、9/15まで営業の最後の週末のためか。
小さな小屋で日が暮れるとやることもないので早々に就寝の態勢となる。が、昨日も早く寝たし、普段夜更かししている人間がそんなに早く眠れるわけもなく、輾転反側(山の上で悩みがあるわけでもないけど)。
■9/12(日)
長い夜が明ける前、4時に起きだしてみると凄い星空。冬の星座である。天の川がくっきり、流れ星も見える。東の空に懸かった月の地球照が美しい。
やがて薄明となり、朝食。トイレは混んでいるので省略して(便袋は持ち帰った)、5時半出発。
塩見岳山頂までは小屋から眺めた印象よりも岩場が多い。6時20分に登頂。快晴、大絶景。
左方:悪沢岳、中遠方:中央アルプス、右方:農鳥岳
ここから農鳥小屋を目指しての長い縦走となるが、こんなに天気がいいと嬉しくてどこまででも歩けるような気がしてくる。
写真を撮ったりビールを飲んだりして、6時50分出発。
3052mの塩見岳から下って、北荒川岳(2698m)まではほぼ尾根歩き。まことに快適に進み、北荒川岳から塩見を望む。
北荒川岳からは樹林帯に入り2542m地点へ下りていく。次に浮上するのはエアリア(昭文社、山と高原地図)に「小岩峰」とある場所。ここも眺望良好。ドードーと遠い水音は「魚止ノ滝」。岩峰から下りるとまた樹林帯を行き、熊ノ平小屋に10時50分。ここでビールを買い、親父さんと話をしながらアルファ米のチキンライスで昼食にする。飼い犬のチビはビールを舐めるというのでやってみたが無視された。チキンライスは気に入ったらしい。
小屋を過ぎたところで水を補給して11時30分出発。
農鳥小屋へのトラバース道が分岐する三国平を過ぎ、三峰(みぶ)岳を経て間ノ岳山頂3189mに13時40分着。食事(ビールか?)の後のせいか、この登りはキツかった。しかし、これで農鳥を踏めば、1997年の北岳~間の岳(⇒ 1997/8/7~8/9 北岳・間ノ岳)と合わせて白根三山【分割】縦走完成だ。
この時間になるとガスが出てきて、残念ながら今回山行の最高地点での眺望は得られず。14時に山頂を後にするが、標高差376mの下りも辛い。14時50分農鳥小屋着。
受付を済ませ、セルフサービスのコーヒーにクリーム砂糖を多めに入れてホッと一息。宿泊者はドラム缶の天水を勝手に補給していいというのも有難いが、熊ノ平の水があるので、500mlペットボトルにもらったのみ。料金は休日1000円割増で2食付8000円。
この小屋には猟犬が飼われているが気が荒いから手を出すなと熊ノ平小屋の親父さんは言っていた。それと、今時こんなことしていいの!?というくらいダイナミックな方式のトイレにビックリ。
例によってビールを飲みながら文庫本を読んだりウダウダしていると、夕方ブロッケン現象が見られた。夕日が雲間から射し、反対側は雲の映写幕となって断続的に現れる。基本的に自分の影だが、一度は並んだ3人がまとまって見えた。
小屋は幾棟かあるが、寝場所には電灯がない。暗くなったらランタンが灯された。発電機の音も聞こえなかったから、全体に電気は使っていないのだろう。親父さんは英語が得意らしく、ランタンを引き上げる際に「Have a nice dream , Good night!」などと言っていた。しかし、またもや輾転反側。
■9/13(月)
今日も4時起き。風はあるが快晴、夜明け前の富士が美しい。
5時20分、夜明けとともに出発、6時40分農鳥岳(3026m)登頂。西農鳥岳のあたりで通常のルートを外れて上へ向かう踏み跡を辿ったのだが、西農鳥岳と農鳥岳の間の尾根を少し余分に通っただけで、西農鳥岳の頂上(3050m)は踏み損なったのか? 帰ってから調べると山頂の表示があったはずだし、GPSのデータを見ても微妙に(ほんの数m?)山頂を外している。まあいい、いつか本当の白根三山縦走をやる時のためにとっておこう。
農鳥岳山頂では例によってビールで乾杯し、先に上がって弁当を食べていた人としばし山座同定。あれが赤石だから隣は聖か?などと。塩見岳からの尾根もずーっと見えて、今回はよく歩いたなぁとちょっと感激する。
塩見岳~間ノ岳、北岳
7時20分、弁当の人と一緒に下山開始。歩きながら話したらこの人は相当なベテランで、深田百名山はとっくに制覇、各地のなんとか名山を攻めているとか。大門沢下降点で別れたが、今日は黒河内岳(笹山)を往復して大門沢小屋泊まりだと言う。タフなオジサンである。
こちらは奈良田を目指す。下降点から800mも急降下して沢で顔を洗って一休み。一人で登ってくる人がいたが、自分だったらこのルートは登りたくない。大門沢小屋に9時40分。ゆらゆらする吊橋で沢を渡り、工事現場があって車道に出る。あとはもう温泉とビールを目指して歩き、12時半に奈良田のバス停に到着、山行終了。
身延駅へのバス時間を確認してから少し戻って奈良田の里温泉へ。休憩室は有料だし時間も無かったので、温泉から上がって缶ビール1本飲んだのみ。喫茶室みたいなところがあったので時間に余裕があれば入ってもよかったかもしれない。それでもさっぱりして車上の人となる。池袋まで戻ってビール(またか!)とラーメンなど頼んでいると、今朝3000m峰にいたことが夢のように思われるのだった。
それにしても予想外の好天に恵まれて幸せな山行だった。だた、油断して日焼け止めを忘れ、腕が真っ赤。あとでボロボロだぞ、これは。
■今回のルート(山行時のGPS軌跡を2024年9月時点の地形図に表示)
↑ 9/10~9/11:鹿塩~塩見小屋
↑ 9/12~9/13:塩見小屋~奈良田
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