2011/8/12(金)~8/14(日) 剱岳・源次郎尾根2011年08月12日 00:00

無名山塾の自主山行。
いろいろな計画で一ヶ所に集まろうという夏の集中企画、今年はお盆の時期に剱岳の剱沢キャンプ場。早月尾根隊を中核として岩稜縦走や岩登りのある中で、自分はバリエーションルート入門的な源次郎尾根を企画、参加者は3人=N瀬・C氏(女性)、S木・K氏、S藤・C(女性)氏=が集まった。何と3人とも剱岳自体が初めて。自分は剱は4度目だが源次郎尾根は行ったことがない。そんなメンバで岩のひとつひとつに時間がかかり、あるいはルートファインディングに迷って、本番日は何とほぼ16時間行動。非常に草臥(くたび)れたが面白かった。

■8/12(金)
前日、仕事から帰ってトンボ返りで新宿駅へ。23時に西口の郵便局の先に集合してS木氏の車に乗せてもらう。明け方に扇沢の無料駐車場に入れ、トロリーバスの始発を待っていると、一家でキャンプに来た山塾同期のU山・K氏と会った。バスやケーブルカー、ロープウェイを乗り継いで室堂へ。上天気で賑わっている。
身支度して9:30に歩き始め。地獄谷から雷鳥沢、雷鳥坂を上がって別山乗越と最短コースで剱沢に12:50。S藤氏はまだ身体ができてなくて登りに弱いところがある。今回の集中企画中、キャンプ場入りは自分たちがいちばん早い。自分の2人用、S木氏の2~3人用テントを張り、2~3人用を女性用・食事用とする。

14時、源次郎尾根取付きの偵察に出発。キャンプ場管理棟の前に事故情報などを記したホワイトボードが置いてあり、見るとこの1週間ほど連日のように死者が出ている。
小屋前から下りて行き、剱沢雪渓に入るところでアイゼン装着。30分足らず下って足元が平坦になるのが平蔵谷(へいぞうたん)との合流で、取付きの目印になる三角の岩はすぐそこにあった。
源次郎尾根取付きの偵察
源次郎尾根取付きの偵察
傍らの岩の上にはケルンも積んであって間違いなさそうだが、確認のために一応入ってみると、水流跡から草の間に急登の踏み跡が続いている。キャンプ場からここまで約1時間と見極めて偵察完了。 

小屋でビールを飲みながら皆で剱バックに写真を撮り、ビールを買い直してキャンプ場に戻ると既に夕方。
剱岳
食事とお茶をしながら、明日の持ち物などを指示。Ⅱ峰からの懸垂下降用に50mロープ2本、飲料水は多目に、万一のビバーク用にツェルト2張り、ガスとガスヘッドなど。ピッケルはエスケープして雪渓を下る公算が高い場合のみ持つこととする。
このメンバでは持参の酒を飲むこともなく、20時頃に就寝。夜中に時々風が吹いてテントがバタついたが、薄いシュラフで快適に眠れた。

■8/13(土)
4:25出発。曇り、10℃。すぐに降りそうならピッケル持参を指示するつもりだったが、これなら雪渓下りのエスケープはないと判断。しかし、万一に備えて自分のはザックに入れた。
5:20、源次郎尾根取付き(標高2090m)。登り口には先行が5人ほどいて、そこから上がって樹林に入る手前にも数人の行列が見えている。最初の関門がそこにあるらしい。すぐには動きそうもないので、手前の平坦部でハーネス装着。しかし、雪渓に下りる時にアイゼンとハーネスを同時に着けた方が段取りがよかった。隊列のオーダーを自分~S藤氏~S木氏~N瀬氏と決める。

20分近く待って取付きが空いたので登り始める(5:40)が、すぐに最初の関門でつかえる。胸より高い岩に残置スリングがあるが、そこを上がるのが難しいようだ。3~4パーティが溜まっていて、ロープを出す隊もあってなかなか進まず、20分以上待ったろうか。雪渓を眺めていてもこちらに上がってくるものはなく、自分たちが今日の殿(しんがり)らしい。
ようやく自分たちの番になって岩に向かう。残置スリングは2箇所に下がっているが、右側は古くて当てにならないと事前に読んだ記録にあったので、素直に左側を掴む。スリングに頼っても簡単には上がれず3~4回ジタバタして棚に上がった。ここで目の高さの木の根にセルフビレイを取り、ハーネスにスリングを付けて垂らす。あとの3人はこのお助け紐で上がった。足場はしっかりしていたが体重をかけられるとかなり引っ張られるので、先行パーティと同じように上からロープを下ろした方が安心だったか。ここを突破し、少し上がって踏み跡が平らになった箇所で休憩するまで(6:40)に30分以上を要した。この辺で源次郎尾根の左支稜に乗った感じ。ルートとしてはこの支稜とルンゼとがあるのだが、自分たちはこのまま支稜ルートを行く。 

木のトンネルのような急登をよじ登っていくと標高2250m付近の岩場でまた渋滞(7:05)、一段下で待機。見下ろすと、高度は上がっているが雪渓からちっとも離れていない。上が空いたので上がってみると先行パーティはロープを出していた。最後の人が達者に登っていったのを見るとホールド、スタンスはありそうなので取り付いてみるが、ここは見た目より厳しい(7:20)。脇の木の枝を掴んだり、打ってあったハーケンにスリングをかけたりしてトライするがミシンを踏んで(膝が震えて)しまった。諦めてロープを出すと安心して身体が動いて無事に登れ、そこの枝にロープを固定する。中間の二人はプルージックで上がってもらったが、少し難しかったようだ。結局ここを抜けるのに1時間以上を要した(8:20)。ロープ使用をもっと素早く判断すべきだった点を反省。先行パーティはもう見えない。後ろにパーティがいなくてよかった。
次の岩場は難しくはないのだが、空中に身を晒すので万一踏み外したらそのまま谷に転がり落ちそう。自分が上がったところで木の根からスリングを下ろし、後続はそれをハーネスに連結して上がってきた(8:50)。
源次郎尾根登攀
次の少し大きな岩の斜面も怖がりさえしなければ難しくない。途中にハーケンがひとつあったので、S藤氏に「怖ければA0(支点にカラビナを掛けて掴んで上る)して」と指示。ここは岩の上に残置スリングがあったので、ロープを出して確保する場合もあるのだろう。雨で岩が濡れている場合などはそうした方がよさそうだ(9:15)。
高度を上げて行き、振り返ると剱沢のキャンプ場が見える。
源次郎尾根登攀
一見怖そうだが実際はたいしたことのない短い岩面トラバースの後、草の急斜面を這い上がった標高2550m付近、岩壁の下に出たところでルートに迷う(10:25)。岩にはホールド、スタンスがあって登れるが明瞭な踏み跡はない。右手に岩をトラバースした先の草の斜面の方が踏まれているように見える。左手にも通れそうな隙間があるが、これは水流の跡だろう。まず右手にトラバースしてから草を掴んで上がってみるが、こちらも水流の跡だった。戻って真っ直ぐに岩を上がってみると、水流の跡に踏み跡が重なっていた。これで30分近くのロス。先行パーティが見えていれば全然問題ないところだが、ルートファインディングもバリエーションルートの楽しみと思うことにする。

11:40 ようやくI峰(2709m)に到着、地形図で2700mの等高線が閉じている手前側の端で20分の休憩。岩の上に赤錆びた昔のカラビナが置いてあった。柴崎芳太郎の本峰登頂時に発見された錫杖の頭を気取ったのかな。長次郎谷を登下降する人が見え、熊ノ岩にはテント村ができている。M本・Y講師とS木・Y氏はあそこをベースにチンネに行く計画だ。

せっかく上がったI峰をいったん下り、Ⅱ峰にかかる。岩とハイマツの間のずいぶんな急傾斜に見えるが、取り付いてみるとそれほどのこともなく頂上部の平らな岩の上に出られた(12:50)。小休止していると、I干・S氏から無線コール。剱沢に入ったとのこと。こちらも状況を伝える。
30m懸垂下降の支点はその先にあった。見下ろすと結構高いが、支点は鉄の杭に大振りのクサリが付き、斜め上からバックアップも取ってあるのでまず間違いはなさそう。さらに何本もスリングが絡んでいる。ここはS木氏、S藤氏に50mロープ2本で下降の準備をしてもらう。ダブルフィッシャーマンによるロープの連結にてこずっていたが、他のパーティもいないので無理に急ぐこともない。セットアップできてN瀬氏、S藤氏、S木氏の順で下降(13:40)。事前に聞いた話ではこの懸垂下降がハイライトのようだったが、ここに来るまでの方がよほど大変で懸垂はオマケみたいな感覚だ。
懸垂下降するN瀬氏

Ⅱ峰を過ぎればあとは歩くだけ・・・と思ったらまだあった。S藤氏が疲れ気味なので斜面を直登したりせず、ところどころ薄くなる踏み跡をなるべく忠実に辿っていくと、岩場に突き当たった。そのまま岩に突き進むこともできるが先は見えず、周囲を探しても踏み跡はない。自分ひとりで偵察してみると、岩場をかなり上がってから草を踏んだ跡が見つかった。その先は浮石が多く危なそうのなので、さらに岩場を上がりきったところで後続を呼び、浮石地帯をクライムダウンしてルートを指示する。 

いい加減草臥れてガレ場を登っていくと足元の岩に赤い錆色が付いており、よく見ると昔の空き缶が落ちている。さてはと目を上げるとお社の屋根が見えた。そこで剱岳初登頂の3人を先に立て、15:40に登頂。
剱岳登頂
この時間ではガスが湧いて周囲は見えず、人もいない(その後、単独で二人ほど見かけたが)。写真を撮り、休憩するうち雨模様にさえなってきたので下ることにする。

普段なら渋滞するカニのヨコバイも独り占め。雨は一瞬だけで岩が濡れるほどのことはなく助かった。カニのタテバイの向こう辺りで落石の音が聞こえたが、ガスの中で場所は分からない。平蔵のコルに向かってハシゴを下りている最中にI干氏から無線コールが入ったが、応答しようもない。その後、早月尾根隊のU野・E氏も入ってきて会話したが、あちらはもうかなり出来上がっている。
前剱の手前でガスの切れ間から源次郎のI峰、Ⅱ峰が覗く。その登って下りてきた尾根をバックに写真を撮るが最早17:30、暗くなる前に前剱を片付けたい。
源次郎尾根をバックに
前剱を越え、一服剱の登りに掛かる地点で休憩、ヘッドランプ装着を指示した。一服剱の下りでランプを点灯し、剣山荘の灯りを目指して進む。剣山荘で最後の休憩を取り、剱沢小屋に19:50。受付は暗くなっていたが、奥に声を掛けてビールを出してもらった。
小屋からの坂を上りきってキャンプ場に着いたのは20:20。16時間行動となったが、皆よく頑張ったと思う。無線でI干氏を呼ぶとヘッドランプを振ってテント位置を知らせ、出迎えてくれた。

既に就寝時間なので各隊そのままテントに引上げ。脱水気味だったのか緊張が緩んだら少し気分が悪くなった。食事までには落ち着いたが、あまり食べられなかった。
後で聞いたところでは早月尾根隊のY永・H氏も相当疲れたとのこと。リーダーは辛いよ。

■8/14(日)
すっきりと晴れて朝の陰影のついた剱岳が美しい。
S木氏、S藤氏は今日から別計画で行動(今日は奥大日岳ピストン)。N瀬氏と自分の2名となった源次郎隊は別山から雄山縦走の計画だったが、昨日でお腹一杯なので立山はキャンセル、直接室堂に向かうことにした。
ゆっくり7:50にキャンプ場を出発、みくりが池温泉に10:30。入浴、食事してリフレッシュできたので室堂山荘を回ってターミナルに12:30。観光客と一緒に扇沢に下った。 

■今回のルート
剱岳・源次郎尾根ルート

Google
wwwを検索 このブログを検索