2025/4/10(木)~4/13(日) ヒマラヤトレッキング(4)【高山病編】 ― 2025年04月10日 00:00
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■4/10(木)
ロブチェ(4930m)のABOVE THE CLOUD LODGEのベッドで、夜半にふと目を覚ました。別段苦しくはないのだが、呼吸音に何か雑音が入る。息を吐く度(たび)に胸の中でプツプツといっているのだ。これは肺水腫では? 肺内部の気圧が下がると溜まった水に気泡が生ずるのではあるまいか。高山病へのいちばんの対応は高度を下げることで、今日からの下山行程で対処できれば良いのだが・・・と思いつつ、そのまま起床時間まで寝ていた。
朝の健康チェックでS水氏(添乗員)に申告すると、やはりヘリでカトマンズへ下りた方が良いということになった。途中ペリチェでM田・F氏(昨日、ゴラクシェプからヘリ搬送)をピックアップする。昨日までのトレッキング中、ルート上空を結構ヘリが行き交っていたが、自分がそれに乗ることになるとは思わなかった。
ヘリパッドはロッジから少し氷河に寄ったところに設けられている。7時前にヘリパッド近くに出て待機。曇り、8℃。
間もなくヘリが飛んできた。ロッジへの荷揚げ便のようで、荷を下ろした後に乗り込む。7:10に離陸し、ペリチェ(4240m)までわずか3分。氷河には融けた箇所もあるのが見えた。ペリチェでM田氏とガイドのダンバサールさんが乗り込み(M田氏は普通に動ける)、すぐに離陸。曇っていて視界は良くないが、景色はこれで見納めと、自分は後席左、M田氏は右で、それぞれにカメラを構えた。
アマダブラム(6814m)。Milinggo Kholaの奥、地図にHinku Himalとあるピーク群(最高点6070m)。クスムカングール(6370m)(だと思う)。7:22、ルクラ(2827m)に着陸。ロブチェからトレッキングすれば途中3泊するところを12分で一飛びだ。ヘリポートはテンジン・ヒラリー空港の滑走路脇にある。乗継ぎのため、ヘリポートの待合室で暇潰し。通路の椅子の上下には卵やタマネギなどの物資が置かれている。お腹もすいたので、コーヒーコーナーでカフェラテとサンドイッチなど。雨が降り、それが止み、11時半過ぎにようやく飛ぶかと思えば今度はガス。何しろ有視界飛行なので仕方がない。12時過ぎにようやくフライトとなった。ダンバサールさんはここで今回の仕事は終了で、自分の村に帰るとのこと。
ルクラを12:10に離陸。ヘリは近代的で、自機位置をGPSで把握している。飛行中、もうヒマラヤの高山は見えず、眼下の山肌には道路や集落といった人の営みがある。13時、カトマンズ(トリブバン国際空港、1338m)は小雨だった。
ヘリを下りてクルマで滑走路を回り込むように移動すると救急車が待っていた。二人とも急病という訳ではないので救急車は意外だったが、M田氏は一応ベッドに、自分は座席に着いた。相変わらず渋滞のカトマンズ市街をノロノロと走って、13時半、Norvic International Hospitalに入った。
標高を下げただけで呼吸はすっかり楽になり、自分は病院で診断を受けたらホテル入りと思っていたのだが、入院は既定路線だったようだ。まず受入れの診察で、男性医が聴診器を当てて「高山を歩いたため。心配ない」といったことを英語で言う。ここで右手の甲に輸液用の口を付けられた(これがなかなか上手くいかず、二つ付けて一つ外したり、そこからの採血ができずに肘の内側から採ったり)。それから二人用の病室に案内された。ここで、西遊旅行の現地要員バンダーさん(「曲がる」の意味だと自己紹介)が今後のことを説明してくれる。また、西遊旅行社員(一仕事終えて明日帰国)のイトウさんが海外旅行保険の確認、説明に来てくれた。入院費やヘリ料金支払いのためカード残高を確認しておくように。もし不足ならば西遊旅行で建て替えるが、ネパールへの送金料として14%掛かる、とか。ヘリは、M田氏がゴラクシェプ~ペリチェ(ここまで支払い済)~ルクラ~カトマンズ、自分がロブチェ~ペリチェ~ルクラ~カトマンズで、割勘になるはず。
入院中はこの二人部屋で過ごすのかと思ったが、個室の割当ができたようで自分は509号、M田氏も近くの病室に移った。トイレは洋式の水洗(ボタンを押せば流れる。備え付けのペーパーも流せる)、シャワーもある。ナースに手の甲の輸液口をカバーしてもらい、久しぶりにシャワーを浴びてさっぱりした。TVはあるがネパール語のチャンネルばかりでニュース内容も分からない。室温は17℃以下に設定できず、夜中に暑かった。
■4/11(金)
入院中はバンダーさんが折々に顔を出し、食事時にメニューから選んだものを注文する、医師の回診時に通訳する、など世話を焼いてくれた。
フレンチトーストで朝食。10時過ぎに瞬断(短い停電)が2回。ネパールの電力事情を垣間見るようだが、クリティカルでない病棟は停電もさほど気にしないのだろう。マネジメント担当と言う女性が来て一口ケーキのような菓子を置いていく。ネパールには健康保険制度が無く、病院もサービス業として競争が激しいのだろうか。
11時過ぎに輸液を交換し、これで4パック目。他には錠剤が2~3種類出ている。早めの昼食にダルバートを取ったところへ若い医師の回診があり、「It's not tasty,Ah?」などと始めて「咳は? よく眠れたか?」。「Goodだが、昨日診たドクターはそう考えていない」とも。午後に今度は年配医師(主治医?)の回診。バンダーさんとネパール語で話す間こちらは蚊帳の外だが、バンダーさんの説明で「明日(不確実)か明後日(確実)に退院」とのこと。M田氏は明後日退院だそうだ。
バンダーさんに「早く退院してホテルに移りたい」と話してあったのが病院に通じたのか、16時半にTNT(トレッドミルに乗って心電図を取る)を受けることになり、車椅子に乗せられて移動(病人は歩かせないことになっている?)。トレッドミルは初体験で、やはり肺がヘタっているのかスピードが上がると呼吸が追いつかなくなり止めてもらった。TNTの最中、にわか雨。
トレッキング中から軽い咳が続いていたが、TNTを受けた頃から回数が増え始めた。夜になると連続して咳き込んで苦しく、ナースが様子を見に来る程。深夜になってから、ぬるま湯を飲むとしばらく楽になることに気付き、それから少しは眠れた。
■4/12(土)
バンダーさんは今日からホテルを手配してくれていたようだが、咳が不安なので、病院でもう一晩過ごすことにする。午前中の若い医師の回診でも「明日退院」と告げられ、午後には咳止め錠とシロップが出た。輸液は昨日TNTを受ける際に抜いたままだ。
寝不足でボーっとしていたが、夕方になって復活。夜中は1~2時間ごとに白湯を飲んで咳を抑えた。
■4/13(日)
10時半、病院代の回収係が部屋に来て、60万ルピーちょうどをカード決済。食事代など半端な額はどうなった?
11時半に回診。「帰国したら心臓を診てもらえ」と言うのは、TNTの結果か、それともパルスオキシメーターで上手く数値を取れなかったりしたためか?
着替えて書類待ちしていると、13時にまた病院代係が来た。やはり端数があって、約3万7千ルピーを決済。細かい金額は退院寸前に確定という仕組みだろうか。
午前中の支払いからそれほど間を置かずに退院のつもりだったので、昼も食べていない。結局、もうしばらく待たされて診断書や領収書、薬、それに支払い済み証を受け取り、M田氏とともに退院。支払い済み証を提示しないと病院から出してもらえない。
バンダーさんが捕まえたタクシーでホテル・アンバサダーに入った。宿泊客以外はロビーから上に行けない(ただし、レストラン階には上れる)ので、バンダーさんはここで帰った。今晩は自分一人だが部屋はツインで、明日ツアー本隊と合流すれば、またT中氏と同室になる。
レストランで遅い昼食にありつき、部屋で一息ついてから、ホテルを出た。初めてのネパール単独行動にドキドキ。道路を横断する勇気はない(エベレスト街道トレッキングより通り一本の方が危険!)ので、ホテル前から歩道を左へ歩いてみる。細々した商店など並ぶ中に酒を扱う店を見つけ、缶ビールとチベットワイン(合計800ルピー)を買って戻った。
3泊4日の思わぬ入院。前半は高山病だったが、後半の咳も肺を痛めた結果だったろうか。診断書には「急性高山病、洞性徐脈」とある。せっかく異国の地にいるのに自由に出歩けないのは悔しかった。コロナ禍以前ならともかく、今のご時世では病院内を歩き回る気にもならず、入院中にやったことと言えば、タブレット端末に入れておいた河口慧海『チベット旅行記』を読み進めたのと、尾瀬あきらのコミック『夏子の酒』を読破したことくらい。まあ、海外での入院というのも面白い経験だったと思うことにしよう。
入院したのは人生で2回目。そういえば前回は八ヶ岳で右手指に凍傷を負った時(⇒ 2009/1/11~3/27 凍傷日記)のことで、どちらも山絡みなのだった。
■4/10 ヘリ飛行ルート、データ
→ ヒマラヤトレッキング(5)【市街観光~帰国編】へ続く。
※地名表記や各地の標高については、地図や資料によりかなりの異同が見られる。本記事ではツアーの「旅のしおり」や帰国後に添乗員が作成、配布した旅日記の記載を優先し、それ以外に地図(ツアーで配布されたもの、またはNational Geographic版)やガーミンGPS用のトポ等を参照した。
実際のところ、山名は本文に書いたほど現地で判っている訳ではなく、帰宅後にカシミール3Dで現地風景を描画して確認している。
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