2020/7/23(木)~7/26(日) 荒沢岳~越後駒ヶ岳2020年07月23日 00:00

無名山塾仲間のT中・H氏と個人山行(一般ルート故、会山行にはしなかった)。登山としては正月の焼岳(http://marukoba.asablo.jp/blog/2020/01/02/9198486)、3月の会津駒(http://marukoba.asablo.jp/blog/2020/03/22/9229380)から間が開いて今年3回目。コロナ自粛(を言い訳にしたサボリ)でじわじわと体重が増えていたこともあり、パワー不足が露呈。もっともそれはT中氏も同様で、二人してザックの重さに喘いだ。

■7/23(木・海の日) ※コロナ禍で延期になった東京オリンピックのため祝日を移動した連休の初日
連休中は連日降雨確率の高い予報で、早速の雨の中、8時過ぎに家を出る。本日は移動のみ。浦佐駅集合だが、高崎駅のベンチでT中氏と一緒になった。登山者もチラホラと見える水上行きの上越線でトンネルを抜けると雨は止んだ。浦佐駅前の食堂で昼食、コンビニで今晩~明朝の食糧と酒を買い、奥只見行きの急行バスに乗車。銀山平までは1時間弱、運賃1200円+荷物100円だが、車内で回数券(1200円分が1000円)を購入するとお得だ。乗り合わせた単独男性は今日入山して適当な場所にテントを張り、荒沢岳をピストンとのこと。彼は銀山平手前の白光岩(はっこういわ)で降りていった。
こちらは銀山平船付場で下車、キャンプ場はT中氏が予約してくれている。家族連れなどのオートキャンプ客がいるが、受付近くのテントサイトには余裕があった。テント設営して、外で飲もうかと言っているとふたたび雨。テント内で酒と食事、明日は2時起床4時出発と決めて、早めに就寝した。

■7/24(金・体育の日)
夜中にトイレに起きた時には意外や満天の星で銀河まで見えたが、起床時には曇り。
テント撤収して3時半、ゴミは受付時に購入した魚沼市指定の袋を使えば集積所に置けるのでありがたい。バス道を戻って白光岩BSを通過し、駐車場とトイレのある登山口(標高770m)に3:50。ここでスパッツを着けるなど身支度して4時過ぎ、「上級者向けコース、前嵓付近で滑落死亡事故」の警告板を見て登山開始。T中氏による計画では今日は中ノ岳避難小屋泊なのだが、昭文社山と高原地図のコースタイムで15時間ある。よほど調子が良ければ行けないこともないだろうが、さてどうか。
雑木林の中を登るうちに早くも暑くなる。5時前に前山(1090.5m)着。三角点標の傍らにデポしてある荷物は昨日のバスの男性だろうか、平らな山頂はテントを張るのにちょうど良い。意外と晴れて、前方の荒沢岳から左へ本城山、西ノ城、東ノ城と下がっていく稜線が望める。谷間には残雪の白。しかし、休憩時間を入れるとコースタイムをオーバーしている。
前山から見た荒沢岳稜線
高度を上げていくと一部を雲が蓋をした奥只見湖が見えてくる。地形図で岩崖マークが始まり、昭文社地図の前嵓下あたりと思われる地点で休憩。等高線の密な箇所まで進むとクサリ、ハシゴが出てくる。難しくはないがテント泊装備が重い。
前嵓手前のクサリ・ハシゴ
息を切らせてひとしきり登ると大岩壁を見上げる。一際そそり立っているのが遠くからも見えた岩峰か。
前嵓の岩壁
ルートはいったん岸壁の基部に下ってトラバースしてから一気に上がる。クサリやロープが付いていて足場もあるが、草付はまだ濡れているのが少し嫌だ。岩の所々に頑丈なリングが打ってあるのは下降時の懸垂支点用だろう。繰り返しになるが、装備が重い。
前嵓への登り
7時半、急斜面を上りきったところでへたり込んでいると、後から来た女性パーティや単独男性が先に行く。登山口からここまで、ちょうどコースタイムの3.5時間だが、大休止しないと動けない。つまり、コースタイムでの行動は無理だ。ここは携帯の電波が入ったので、帰路に予約してあった明日夜の新幹線を日曜の便に変更し、自宅にもLINEで連絡を入れた。それで休憩が長くなり、動き始めたのは7:45。すぐに小高い箇所があり、そこが前嵓(1536m)の頂。ここから越後駒が近くに見えるが、実際は北ノ又川の源流をU字に回り込んだ先だ。
前嵓からの越後駒ヶ岳
荒沢岳まで標高差400m、少し行くと再び登りが始まる。持参した団扇で幾分なりとも体温を下げながら一歩一歩身体を持ち上げるが相変わらずキツく、山頂を前に尾根が右に折れる地点で大休止。またクサリの付いた岩場を上がると奥只見湖を背にして、9:45 荒沢岳(1968.6m)に登頂。石の山頂標が置かれた狭い山頂には前嵓で追い抜いていったパーティ数人がいた。待望の風に吹かれて「あぁ、いい風だ」と口に出すと周囲も同調してくれる。雲はあるものの絶好の眺望で、これから辿っていく尾根を追うと左から大回りして正面の中ノ岳、駒ヶ岳へと続く。今日一日で中ノ岳までとは如何に身の程知らずであったことか。山頂にいた人は皆ピストンで来た道を下りていき、次の女性二人組が登頂してきたタイミングで腰を上げた。
荒沢岳山頂
荒沢岳山頂より

荒沢岳~兎岳は以前は昭文社地図にルート線が入っていなかった。藪ルートで面白そうだと思っていたのが、数年前に整備されて実線になったと記憶する。踏み込んでみると道はしっかりしており、樹林のところどころに「兎岳←→荒沢岳 縦走路」のプレートも付いているものの、やはりそれほど踏まれていない感じ。ただ、灰ノ又山などにあった一本柱の山頂標は割合に古びている。樹林から笹原の踏み分け道となり、最近刈り払った箇所は手を入れなければ藪に還ってしまうと思われる。おそらく地元山岳会が毎年整備してくれているのだろう。
灰吹山(1799m)に11時、そこから下りた池塘の傍らにテントスペースあり。もし泊まっても池塘の水は飲む気にならないが。ずっと進んで灰ノ又山の手前、樹幹に「渡部の池」の札が掛かっているが、周囲の笹薮の中なのか池は見当たらず。三角点のある灰ノ又山(1852.2m)には12:20。荒沢岳を過ぎれば大きなアップダウンはなく楽になることを期待していたのだが、ちょっとした登りが結構辛く、休憩を含めずにやっとコースタイムというところだ。源蔵山とのコル付近、道の上に黒くて大きな落とし物。フレッシュではないが、やはり熊はいるらしい。道は源蔵山のピークは通らず、草原のトラバース中に山名標が立っている。徐々に雲行きが怪しくなり、ポツポツと来た。
平坦になった草地の端に沿って回り込んでいくと「←陽の水」の木札が目に入る(13時)。その手前の兎岳への指導標によると、この地点は「杜夢平」(とむだいら?)と呼ぶらしい。ザックを置いて水場への踏み跡を辿るとロープの付いた斜面から涸れ沢に下り、少し下流に行くと水が出てくる。最初のうちは水流の段差が小さくて汲みづらいが、下るにつれて流量が増える。冷たい水で喉を潤し、顔を洗った。暗い時間にここまで来るのは大変なので、あるだけの容器を満杯にしてザックに戻る。

水場への道の傍らに藪が開けた箇所があった。小雨の中、中央の木を避けてテント(自分の2~3人用)設営。テントに入ってしばらく休憩するが、行動中に辛かったのは脱水によるもので、自分は食欲も出ない。お茶とともに行動食の残りのパンを流し込もうとするとこみ上げてくる始末だが、味噌汁は腹にしみて美味い。とこうしていると外で人声。夫婦二人組で、我々と同じルートを来て、ここで水を汲み、兎岳を越えて丹後山避難小屋に入るとのこと。体力あるなぁ。腹に入るものをゆっくりと少しだけ食べて早めに就寝。夜中に激しい雨。

■7/25(土)
起床時は小雨。テント内の窪みに水たまりができていた。胃袋は落ち着いたが、朝食は控えめにしておく。4:40出発。雨を含んだテントが重いが、ポールはT中氏が持ってくれた。
小雨が降ったり止んだりの中、巻倉山(1758m)を越え、兎岳に向かう。笹と低い灌木の間を縫う道で地図に「眺めの良い尾根」とあるが、雲で遠景は見えず、時折ガスが掛かって前方も霞む。兎岳(1925.6m)に6:25着。朽ちかけた山頂標は山名も読めないが、添えられた板に描かれたマンガがいい味出している。
兎岳
せっかく上がった兎岳だけだが、一気に120mも高度を下げる。山頂前後には雪田が残っており、陽の水の冷たさはこれかと思う。小兎岳とそれに続く小ピークを乗り越え、岩崖マークの細尾根を過ぎて休憩。空は少し明るくなってきたようだが、行く手の中ノ岳山頂には雲が垂れている。1768から鞍部へ下りると、中ノ岳までの標高差は350m。一息に登るパワーはなく半ばで休憩を入れ、池の段で十字峡への下山路を分けて岩場を進み、10時に中ノ岳(2085.1m)登頂。今回ルートの最高点だが、眺望は周囲の山々とその間に下界の平地が覗ける程度。小さな石の祠に赤い鳥居、御影石の包囲盤や「中ノ岳山頂」標もしっとりと濡れ、靴の中もガポガポいっている。山頂に長居はしないで、すぐ先の中ノ岳避難小屋に向かった。
無人の避難小屋に入り、靴下を絞る。窓を開けると野ウサギがこちらに向かってくるところだったが、目が合うと方向転換して草に隠れてしまった。ここには2011年9月に越後三山縦走(http://marukoba.asablo.jp/blog/2011/09/23/9280895)で泊まって以来だ。靴擦れ防止の絆創膏を張るなどして10:40まで滞在。
避難小屋を出ると、半分草に隠れた道はどんどん下っていく。雨は止んだが草が濡れているので、靴の中もすぐに元通りの濡れ具合。1901の「四合目」は岩の上に角柱の標石が傾いでいるので、あまり目立たない。そこからまた高度を落としていくが、足元が右下がりに斜めだったり、さらに道の端がすぐ斜面に落ちているのに草で見えなかったり、足場までの段差が大きくて滑りやすい箇所があったりと、神経を遣う。天気が良くて地面が乾いていればそうでもないのだろうが、実線ルートとしてはかなり渋い。檜廊下を前にして1866で休憩。右手の、風下に雲を靡かせている三角が荒沢岳。ここまでよく歩いたと思うが、まだ先がある。その前方進路は緑がみっしりとして面倒くさそうな印象。
檜廊下手前より荒沢岳
昭文社地図の付録冊子に曰く「ヒノキ、ゴヨウマツ、シャクナゲなどが、風雪に耐え曲がりくねっている中を通る。ここが檜廊下である」。木々が曲がりくねっているだけなら易しいが、その中にホールド・スタンスの遠い岩があったりする(前回もそこで行き悩んだことを現場で思い出した)ので油断ならない。日本百名山(越後駒)に向かう実線ルートとしてはロープが欲しいところが2、3箇所ある。雪解け水が溜まったのか道が不明瞭な箇所もあったりで、1729地点付近「天狗平」の木柱に13時半過ぎ到着。ザックを投げ出すようにして10分休憩。この天気で濡れるのは鬱陶しいが、もし晴れていたら暑さにやられていたかもしれない。
あとは駒ヶ岳までひたすら登る。標高差280m足らずだが、今日はもう9時間行動してかなり疲れている。そう言えば前回もこの登りは辛かったと思い出しながら1933に上がり、いったん緩やかになってシャクナゲとササの中、水無渓谷への道を分け、15:10 越後駒ヶ岳(2002.7m)に登頂。剣を持った神像は猿田彦大神らしい。無人の山頂で写真を撮り、少しだけ周囲を眺めて、本日の泊り場所・駒ノ小屋へ向かう。
越後駒ヶ岳
来た道を指導標のあるT字まで戻り、雪渓を短く横切って下山路に入り、15:30 無人の小屋に到着。1階の一角に小屋に備え付けの銀マットを拡げ、物干し紐に雨具や靴下などを吊るす。水はすぐ外の水場で汲み放題、その気になればシャツくらいは洗濯もできる。疲れた身体をウィスキーで温めていると、16時を過ぎて到着したのは昨日テン場で話をした夫婦。丹後山避難小屋からだと今日の踏破距離は我々とほぼ同じだが、昨日はこちらが負けている訳で、やはりすごい体力だ。挨拶の後、彼らは2階に上がった。登山者名簿を見るとこの連休に日帰りピストンで立ち寄った人は多いが、天気のせいか宿泊して縦走しようというもの好きはいないらしい。名簿に記入し、協力金一人\2000を置く。外では蛙が鳴いている。避難小屋はいいなぁ。
駒ノ小屋

■7/26(日)
帰りのバス時刻を考えて5:15出発。やはり小雨。しばらくは岩がちの急斜面で滑らないように気を付ける。その岩の上に赤い蛙がいた。背中のイボからするとヒキガエルの仲間に見える。昨日、草を踏む足元でも小さいのが跳ねていたし、この辺にはありふれた種類なのだろう。
赤蛙
6:40 小倉山の分岐で休憩。雲が垂れこめているものの眺めがよく、後にしてきた駒ヶ岳、ガスをまとわりつかせた荒沢岳も望める。次は道行(みちゆき)山の分岐を折れて、7:30 山頂(1298m)で一服。下りになると地図のコースタイムより速い。ここから急降下する泥道は滑りやすい。靴を泥だらけにして下りていき、そろそろ山道も終わりかと思い始めた頃、沢に出て道が途切れた。水流で靴を洗いつつ少し下流に進むと右岸に上がる踏み跡が見つかったが、上がった先はまた沢に転げ落ちそうな細い道。幸い足元は滑りにくい土質だが、一箇所ロープが付いていた。作業道と思しき細道に出たのは8時半。
雨もほぼ上がったのでスパッツ、雨具を外して歩き出すと、じきに未舗装ながら車も通れる道になった。地図に「湧水」とあるのは左手の崖を流れ落ちる水流。右手の北ノ又川はかなり幅があって水面(みなも)に霧を立て貫禄がある。その道を30分行くと舗装路(352号)に出た。その手前で明神峠からの「銀の道」と交差して川沿いにショートカットできたはずなのだが。遠回りして石抱橋を渡り、白銀の湯に向かう。が、案内板のところまで来て石抱橋バス停は浦佐行きと路線が違う(そもそも橋の付近にバス停があったか?)ことに気づき、最初に泊まったキャンプ場の風呂に入ることにした。石抱橋に戻ってそのまま直進、立派な伝之助小屋を過ぎると今回の登山口で周回完了、10時過ぎに銀山平キャンプ場に帰着した。

キャンプ場の「かもしかの湯」は受付とは別棟の屋根に覆われた半露天で一人\600。ビールは受付で買える。昼前のバスに乗車したのは我々のみだったが、途中、栃尾又温泉で行きにも乗り合わせた夫婦が乗ってきた。浦佐駅に戻り、西口のえづみやで食事。バスの夫婦からも聞いたのだが、地元食堂といった気取りのない店で、巨大エビフライ(一皿3尾)が名物らしい。
一昨日予約変更した新幹線に乗車し、夕方帰宅。まず、テントに水をかけてざっと汚れを落とし、テラスの屋根の下の物干しに掛ける。ザックも雨具も靴もとりあえず干したが、雨続きの予報で乾く気がしない。

■今回のルート
荒沢岳~越後駒ヶ岳map

■8/1(土)追記
帰宅以来ずっと曇りか雨でテントも靴も乾く暇なくカビが生えてしまうのではないかと思ったが、ようやく晴れて片付けられた。関東甲信地方で8月に梅雨明けとなるのは13年ぶりだとか。豪雨災害が相次ぐなど、もはや梅雨とは別の名前を付けるべき気象現象ではないかという気さえしてくる。

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