2023/11/13(月)~11/15(水) 乾徳山~北奥千丈岳~甲武信ヶ岳2023年11月13日 00:00

金峰山~甲武信ヶ岳の縦走路は過去に2度歩いている(https://marukoba.asablo.jp/blog/2008/06/28/9401561https://marukoba.asablo.jp/blog/2010/06/25/9401586)のだが、そこからほんの少し外れた奥秩父最高点・北奥千丈岳には立ち寄らなかった。今回は雪が来る前に、これも未踏の乾徳山から入って北奥千丈岳を踏み、縦走路へと繋げよう。下山は甲武信ヶ岳から、使ったことのない近丸新道経由で西沢渓谷とする。三日間晴天のもちそうな日程を選んで実行に移した。

■11/13(月)
事故のためJRが遅延し、山梨市駅9:12発のバスを逃がして10:21発に乗車、乾徳山登山口に10:53。傍らに「皇太子殿下 乾徳山登頂紀念」の碑がある。11:05に出発。晴れ、気温13℃。
徳和川に沿って行き、乾徳神社に山行の無事をお願いする。乾徳山登山口(標高988m)に11時半。そのまま未舗装路を進む方向に「徳和渓谷・大ダオ」とあり、黒金山~北奥千丈岳ラインからのエスケープに使えそうだ(*1)。
乾徳山登山口
登山道に入るとなかなかの急登で、植林の中、高度を上げる。1140mで絡む林道は通行止めで、1230m辺りでも林道らしい跡に出合った。二番目の林道手前にあったはずの銀晶水には気付かず通過。1320m辺に「駒止」の立札あり。
ずっと登りで休憩ポイントが無いと思っていると、ようやく傾斜が緩み、12:45に錦晶水(1480m付近)に到着。落葉松(カラマツ)林の間を流れる浅い沢に塩ビパイプが刺してある。パイプ前にしゃがみこんで、チョロチョロとした水流をペットボトルで受けた。今晩の泊りと明日の行動用の水を確保するため、ここで30分近く停止。水汲み中に鹿の声を聞く。少し風が出て気温は6℃。
錦晶水
歩き出すと水の入ったザックの重さが堪えるが、傾斜が緩んだのは助かる。道の前方に来たのが乾徳山か。
乾徳山
ここまでですれ違ったのは、夫婦連れや若者4人組等、計8人ばかり。この時間に登っている者はおらず、終わってみれば乾徳山から先にも誰もいなかった。
13:20、国師ヶ原十字路に到着。奥に見えるオシャレな風情の高原ヒュッテは、山梨市が管理する避難小屋だ。
高原ヒュッテ
十字路から指導標に従って頂上の方へ進むと、すぐに役小角(えんのおづぬ)像と前宮跡。
役小角像/前宮跡
ふたたび傾斜が増して月見岩の分岐に突き当たる。案内板を見ると、山頂迄に様々な奇岩があるようだ。山梨市観光協会の公式サイトによると「山には髭剃(ひげそり)岩、月見岩、鳳(おおとり)岩など数々の奇岩や山岳信仰の痕跡が見られます」。
月見岩
まず扇平の手洗石。
手洗石
地形図の岩崖マークに差し掛かるとクサリ付きの岩場が現れ、岩陰には霜柱が残っている。
大岩が真っ二つに割れた髭剃岩は、細身の人なら擦り抜けられるか?
髭剃岩
細い岩棚の通過は、重いザックに振られないよう慎重に。壁側にバランス保持のクサリが欲しい。
岩棚
岩の隙間を鉄ハシゴで降りて回り込むとカミナリ岩。テラスを挟んでクサリ場が続く(上部はクサリが2本)が、手掛り足掛りを見定めれば難しくはない。
カミナリ岩
クサリを登りきり、さらに岩に上がると次の岩壁(これが鏡岩?)が目の前だが、ルートは足元を通っており、ここに上がる必要はなかった。
鏡岩?
胎内は今は塞がっているが、かつては胎内潜りができたのだろうか。
胎内
なおもロープ付きの岩場を通過して行くと、先ほどの案内板に「クサリ20m」とあった鳳岩。足場になりそうな割れ目の間隔が広く、皆が足を掛ける箇所は磨かれてツルツルと滑って、クサリに頼らざるを得ない。登りきるとかなりの高度感だ。
鳳岩
鳳岩 下から/上から
国師ヶ原までの歩きやすく整備された道から一転して、山頂下の岩場は油断すれば重大事故に繋がる。鳳岩の迂回路をはじめ、登山道の整備は皇太子殿下(当時)のおかげかもしれないが、この一連の岩場を登られたのだろうか。
14:50、乾徳山(2031m)に登頂。
乾徳山
平地に広がる街の向こうに富士山が聳え、その左の山また山は奥多摩から大菩薩辺り。
乾徳山からの眺望 富士山
乾徳山からの眺望 大菩薩
乾徳山からの眺望 大菩薩(山名)
行く手の黒金山の左は金峰山から国師ヶ岳、右は甲武信ヶ岳から雁坂峠。国師や甲武信の稜線は白く見える。黒金山から左に下がって剥げているように見える鞍部が本日の寝床、大ダオか。
乾徳山からの眺望 国師ヶ岳
乾徳山からの眺望 国師ヶ岳(山名)

乾徳山からの眺望 甲武信ヶ岳
乾徳山からの眺望 甲武信ヶ岳(山名)
先があるので10分程で腰を上げる。山頂からの下りもクサリ・ハシゴ付きの岩場が連続するが、上りのように長いものは無い。岩場を下り切ると水のタル分岐で、国師ヶ原への迂回新道を指す道標には「ガレ場の急下降あり」と注意がある。
シャクナゲ交じりの樹林の足元は、数日前のものと思われる雪が粒々からやがて日陰では地面を覆うようになってきた。大ダオへの分岐をいったん見送り、日没間際の16:35に黒金山(2231.8m)に到着。
黒金山
山頂近くにテント適地を発見したが、予定通りに大ダオまで下ろう・・・と思ったら、昭文社山と高原地図に「尾根広く道迷いに注意」とある辺りで地面がフカフカになった。さては道を外したかと左寄りに修正すると、薄暗くなる中で笹の踏み分けに出た。獣道の可能性も考えつつ進むと赤テープを見出し、大ダオの広い笹原に出たのが17時半近く。樹林との境で風除けできる場所を考えていたのだが、暗い中で平坦地を探すのも難しく、原っぱの真ん中の指導標の傍らにテントを張った。
大ダオ
丈の低い笹の上なので、テントの床がフワフワする。お湯を沸かす際にちょっと目を離した隙にコンロが倒れて水をこぼしてしまったが、寝心地は悪くなかった。街の灯が近く見え、スマホの電波も入る。星空がきれいだ。

■11/14(火)
3時半前に起き出すと、テント内壁に霜がついていた。吊るしておいた濡れタオルも凍っている。
5:40に出発。山と高原地図に「道不明瞭」とあるが、尾根を外さなければ問題ないだろう。一登りすると、トラロープの張られた箇所を踏み跡が回り込んでいる。やがて下りになったので2047m小ピークを越えたようだ。トラロープからこちら、赤テープを見かけないが、道と思える線が断続的に現れる。しかし下り過ぎではないか?とコンパスを出すと、いかん、これは南へ向かう尾根だ。「道不明瞭」の先入観のあるところで道らしき線に惑わされた形だが、下りに入った時点で方位を確認すべきだった。トラロープまで戻って30分のロス。明るくなってみれば、トラロープの位置から正しい方向に付いた赤テープを容易に発見できた。
あとは迷う個所もなく、7:20に方向転換点のゴトメキ(漢字では「御止木」)。落ち朽ちた指導標にはおそらく「白檜平」とあったのだろう。その白檜(しらべ)平に7:50。林道を横切ると、シラベ(シラビソ)の間に草に隠れるような水流があった。黒金山からここまでが地図の破線ルート。日没・夜明けの薄暗さの中でルートを外したが、日中であれば赤テープなどの目印も適度にあって、それほど難しくはなさそう。
奥千丈岳に向かう尾根ルートの「石楠花新道」を進む。8時半、少し暖かくなったと思っても-1℃、凍っていたタオルは柔らかくなってきたが、ザックの外に付けたペットボトルの水は氷入りのままだ。
奥千丈岳の手前は地図に「倒木多い」とある通り、乗り越えたり潜ったり。
倒木帯
奥千丈岳(2409.6m)は、山頂標があるだろうと思っているうちに通過してしまった。地形図をよく見ると尾根が合流しているだけでピークという訳ではない。ネットに上がった最近の記録を見ると樹の幹に山名板が付いているのだが、足元に気を取られていて見逃したか。
緩やかな登りから2511mへの急坂、また緩やかになった後、いよいよ奥秩父最高点への登り。木々も、雪というよりは氷を着けて真っ白になってきた。
氷化粧の木々
10:15、北奥千丈岳(2601m)に登頂。
北奥千丈岳
眺望良好、方位指示盤の示す山々を眺め渡せる。
北奥千丈岳よりの眺望
北奥千丈岳よりの眺望(山名)
北奥千丈岳よりの眺望
北奥千丈岳よりの眺望(山名)
北奥千丈岳よりの眺望
北奥千丈岳よりの眺望
山頂で15分ほど過ごす。人には会わないが、大弛峠~国師ヶ岳縦走路の方から話声が聞こえた。
甲武信ヶ岳への縦走路との連結点には5分ばかりで到着。これで今回山行の目的は果たした。
国師ヶ岳(2591.9m)の三角点は一等だ。
国師ヶ岳
あとは淡々と進むが、そろそろ草臥(くたび)れてきて、国師から大きく下ってから甲武信に至るアップダウンは結構堪えた。東梓(2271.8m)12:50~富士見(2373m)14:15~水師(みずし、2396m)15:00~千曲川源流遊歩道分岐15:10(*2)~甲武信ヶ岳(2475m)15:35と、登りのペースがまるで上がらない。甲武信ヶ岳にいた単独男性が、乾徳山への登り以来、初めて出会った人間になる。
甲武信ヶ岳登頂
16時に甲武信小屋でテント泊(予約済、1000円)受付。水は別料金(100円/1L)。テントは他に2張あった。本日の行動時間は、山と高原地図のコースタイム10時間10分に対して10時間20分。テント泊装備を担いでいる点からすれば悪くないが、コースタイムが大き過ぎる部分(*2)があるので微妙なところ。

■11/15(水)
10時過ぎのバスに合わせて、6時に出発。
木賊山(とくさやま、2468.8m)へ登る途中、岩崖の迫る樹林切れ目から見ると、下方はガスに沈んでいる。下りにかかってからもガスっぽかったが、次第に晴れた。
近丸新道と徳ちゃん新道との分岐まで、標高差約600mを急坂で下る。7時、おそらく西沢渓谷の時報チャイムを聞く頃には日が射して風も止んだが、気温は-4℃。短く一登りして、7時半に分岐。
今回下りる近丸新道は、前半(上部)で一気に下り、後半はヌク沢沿いにほぼトラバースのイメージ。
下りて行くと、やや透明感のある真っ白い石が無数に散らばっている箇所があった。その後もこの岩石はしばしば見掛けたが、砕け易い性質らしくあまり大きなものは無いようだ。甲武信ヶ岳の中腹には古く硅石の採掘場があったそうで、これがそうなのだろうか。
硅石?
地図に「大きな砂防堰堤がある 増水時注意」とあるのがヌク沢の渡渉点で、堰堤の手前の丸木橋を今日は問題なく渡れる。
ヌク沢の渡渉点
落葉に埋もれるようなコンクリート小屋やコンテナ(?)の残骸を過ぎると、軌道跡が現れた。桟道の掛かっている崩落個所で途切れるのかと思いきや、その先にも断続する。そもそも近丸新道自体が採石軌道跡に設けられたものらしい(YAMAP/2020.5.30「ヌク沢採石軌道・三富鉱山軌道」)。
軌道跡
地図に「荒れている」とあるのは、桟道や橋が古びていたり、斜面から砂が押し出して登山道を覆っている箇所のことか。
荒れた登山道
登山口に出る直前の分岐は左が「ナレイ沢(トイレ)」で近道かもしれないが、ここは素直に「西沢渓谷」へ直進し、9時に登山口に出た。そこを通り過ぎて行く登山者は徳ちゃん新道を登るのだろう。この近丸新道では単独女性とすれ違っただけだった。
トイレ前のベンチで荷物を整理し、顔と手を洗ってバス停へ。30分ほど待って市営バスに乗車し、笛吹の湯に立ち寄り。露天風呂はぬるかった。自販機に牛乳など健康的な飲料しか無いのが惜しい。

■今回のルート
乾徳山~甲武信ヶ岳ルート(1)
        (1)乾徳山登山口~北奥千丈岳
乾徳山~甲武信ヶ岳ルート(2)
        (2)北奥千丈岳~西沢渓谷

*1:山と高原地図「金峰山・甲武信」(2022年版)では薄い破線が大ダオではなく、黒金山に近い2070m辺りに繋がっている。実際のところ、薄暗くなっていたとは言え黒金山から下る途中に分岐は見かけなかったし、大ダオには徳和を指す指導標があったから、山と高原地図の誤りだろう。
*2:以前にも思ったことだが、山と高原地図の富士見→千曲川源流遊歩道分岐のコースタイム「1:30」は長過ぎる。
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