2020/9/19(土)~9/21(月) 梅ヶ島温泉~七面山~身延山2020年09月19日 00:00

4連休のうち3日を使い、以前から気になっていた南アルプスの東端、七面山へ個人山行。

■9/19(土)
本日は静岡への移動のみ。
新宿バスタから15時台の便で静岡へ、予約しておいた駅近くのくれたけインプレミアムにチェックイン。地酒を飲めそうな店がないかと歩いてみたが、賑やかすぎるか地元常連で満杯かで、ホテルに戻ってコンビニのビールと弁当で食事。シャワーのみの部屋なので、1Fの浴場を使った。

■9/20(日)
コンビニ弁当で朝食を済ませ、新静岡セノバから7時ちょうどの梅ヶ島温泉行バスに乗車。山間に入ると降り出した。2時間行程の終点まで乗っていたのは自分ひとりで、運転手も客がいることを忘れていたらしく、停車してもドアがすぐに開かなかった。
小雨を避けてバス停ベンチ(標高870m)で身支度。スパッツと雨具のズボンを着け、上はTシャツ姿で9:10出発。今日は七面山奥の院まで、手持ちの昭文社山と高原地図(2018年版)のコースタイム8時間のところを、16時までに踏破したい。
舗装路を少し行くと、安倍峠・八紘嶺の登山口。登山ポストがあるが、登山カード(登山届用紙)は切れていた。林道作業用という感じの道はジグザグの結構きつい登りで、1310mで舗装路に合流するとすぐに八紘嶺の登山口。ここのポストも登山カード切れ。10時、雨がやや激しくなる。
10:30、八紘嶺~安倍峠のルートに合流すると風が通って涼しくなった。「富士見台」と記した木版があるが、ガスで眺望なし。八紘嶺への道はロープの付いた岩や少々荒れた箇所があるものの、おおむね歩きやすい。安全な道で地図を見ながら足を出していたら、出てきたヒキガエルをあやうく踏みそうになった。
ヒキガエル
雨は小止みになり、一時薄日も出たが、八紘嶺(1918.1m)で再び雨。風も強まり、吹かれていると寒い(11:30)。休憩もそこそこに七面山への道に入る(*1)。
方向が北向きに変わると風は樹林に遮られて弱まり、やがて雨も小止みになった。
12時に四ノ池(インクラ跡)。池は枯れてしまったのか見当たらないが、木柱や何かの残骸の傍らに「南無妙法蓮華経 七面大明神 四之池」の札が置かれていた。おそらくインクラ=インクライン(索道)で、林業設備があったのだろう。
道は歩きやすく谷間はコケ深く雰囲気のあるルートだと思っていると、1864に向かう辺りで道を塞ぐ倒木が現れ始めた。折れたり根を引き剥がされたりしているのは昨年の台風被害だろうか(*2)。倒木を避けて通ると道が不明瞭になり、周囲の樹に付いた赤テープを拾いながら進む。帰宅後にGPSの軌跡を見ると、1864地点は左から巻いていた。道に戻って一息つくが、すぐにまた一層ひどい倒木帯に行く手を阻まれる。倒木を迂回し、乗り越え、あるいはくぐって進み、指導標発見!と思っても周囲は相変わらず折り重なる木々。
倒木
ともかく抜け出して赤テープを見つけ、そこから踏み跡に見えるものを追っていくと先が窪地になっている。草の緑が美しいが、正解はおそらく左手の高い方だろうと修正していくと道があった。
道を外れた窪地
1964.5m三角点に13:30。その傍らに「いくむし山 1964.5M」と記した紙がペットボトルに入っているが、地図に山名表記はなく、標高を語呂合わせ的に読んだだけ? 四之池からここまで、コースタイム1:20をわずかにオーバーした程度で済んだ。天候は回復傾向にある様子で、薄日が射してくる。
どうやら倒木帯も終わったらしく、樹林の間を行く普通の山道となった。と、聞いたことのない鳥の声「キョエヨキョエヨ」。グァーグァーと鳴き交わす奴もいる。明るい曇りで適度に風もあり快適に歩けるが、下の方はガスが掛かって見えない。14:30に喜望峰(1980m)。地図に「白峰南嶺の眺望」とある通りに樹林から出るが、残念ながら雲にまとわりつかれて山はあまり見えない。
白峰南嶺が見えない
七面山の手前は地図に「三ノ池」続いて「地形複雑」とある。植生は多少湿地ふうであるが池は無い。左手に高いところを見ながら伸びている道を素直に辿ると七面山の山頂(1983.1m)に着いた。三角点もここにあるのだが、最高所の1989ピークは踏んでいない。そう言えば先ほど道の脇に「山頂」と書いた板があったのが、1989に導くものだったのだろう。こちらの山頂は特に眺望もないのだが、方位指示盤が置かれていた。土台の壊れた指示盤の中央は「七面山 1982m」で設置年が「1982年」。標高に合わせた記念だったのかもしれない(それにしても1m違うが)。山頂標の柱に「平成30年9月・・・台風24号により、八紘嶺から七面山への登山道が被害を受け・・・登山道の判別も難しい状況・・・」と掲示があった。そういうことは八紘嶺で教えてくれよ(実際は教えてくれていたのだった。*1参照)。
七面山山頂
七面山方位指示盤
七面山を下りていくと、今日初めて人に会った。大崩れ(ナナイタガレ)を見に来た単独男性で、なるほど、これは凄まじい大崩落で一見の価値あり。
ナナイタガレ
そこからわずかで、15時半に敬慎院に到着。正面の富士山はすっぽり帽子を被っている。敬慎院は明日、下山前に参拝することにしよう。
奥の院へ向かうには敬慎院を出るのだと思って山門をくぐるが、分岐もないまま道はどんどん下ってしまう。これはおかしいとGPS地図を確認すると、ここは表参道だった。引き返して敬慎院の堂が建つ敷地に入ると、奥の院への道標があった。またガスの出てきた道を二ノ池を見送り、16時過ぎに奥の院に到着。ちょうど到着した参籠者に倣って靴を脱ぐと、入口からすぐの5-6号室に案内された。

5-6号室は計4名の泊りで二人が既に入っていた。特に宗教的な話題は出なかったが、二人とも何回も参籠しているとのことで、やはり信仰的な側面は持っている感じ。一人はダイヤモンド富士の写真が目的の65歳、一人は抗がん剤も効かなくなった知人のためにお札を頂くというトレーラー運転手54歳。あとの一人は食事の後に到着、コースタイム4時間の登りに10時間かかったという太ったおじさん。信仰のための登りは登山とは違うものだと感じ入る。認識していなかったが、9/19が大祭で、普段は相部屋になるほど混まないらしい。自分が参籠申込したのは8/29だったが、入れたのは幸運だったのかもしれない。
浴場(男湯)は湯船が3つあり、空きを見計らって適当に使う。汗を流すだけだが、山の上で湯に浸かれるとは極楽。汗臭い服で御開帳に臨むのは申し訳ないので全部着替えた。食事は部屋にご膳を運んでくれる。お酒が一人半合ほど付くのはお清めなのか、有難し。味噌汁が美味しい。
18:30から御開帳(今日は大人数なので2回行われ、その1回目)。参籠者が内陣に並んで座り、別当さんのお経に南無妙法蓮華経で和す。正面の七面大明神の御簾(みす)が上がり、順番に日朗上人、七面大明神、日蓮聖人を参拝。一同ふたたび座り、各自の名前が呼び上げられる。自分が最初だったのは初参籠の単独者を優先にしているのだろうか。このお勤めで「七面山登詣修行認定書」とお札、開運御守を頂ける。自分は参籠のみだが、受付時に申し込んでおいた祈願・供養もここで行われる。65歳は最前列の真ん中に陣取って大明神をずっと拝めたとホクホクしていた。

■9/21(月)
ご来光は5:35。奥の院の前から拝んでもいいのだが、富士山を撮るため予め敬慎院前に三脚を立てている65歳に合わせて、54歳と3人で外に出た。敬慎院まで行ってもガスで何も見えなかったが、お題目を唱える女性グループなどもあり、やはり普段の山とは雰囲気が違う。54歳と自分は6時のお勤めのために奥の院に戻ったが、出入口いっぱいまで参籠者が座っているので、外からお参りする位置でガラス越しに参加。そうしているうちに霧が晴れてきた。
食事を済ませると、あとは思い思いに出発。大祭で下した紅白の布や落雁が玄関前の段ボール箱から自由に持ち帰れるので、落雁を頂く。布は本堂の七面大明神と影嚮石(ようごうせき)を結んでいたもので、自分よりも切実に必要とされる方が持つのがよいだろう。出立する参籠者は別当さんと並んだ写真を撮ってくれた(*3)。
明るいところであらためて影嚮石を拝んで一周(7周すると願いが叶うらしいが)。道端の案内板から下りてご神木でもある大イチイを見る。立派な木であることは言うまでもないが、根本の祠のひとつに蛇の像があり、卵が供えられているのが興味を引いた。七面山は日蓮聖人以前から池の神の信仰があり、七面天女は蛇神という。敬慎院は堂々たるお堂で、池大神堂が並んでいる。説明書きによると古くは池大神社と呼ばれ、池大神のお姿は役行者に似る(厨子に納められた神像のことだろう)とのこと。水神信仰に修験道、日蓮宗と重なっているのか。敬慎院前から、薄雲はあるものの富士山がきれいに見えた。
敬慎院前から富士山
鐘撞堂で鐘をひとつ撞いたところに54歳がいて、挨拶したのが8:20。
表参道を一気に下る。敬慎院が五十丁目となる丁目石の中には、いくつか元文三年(1738)と刻んだ丁目ならぬ町目石が残っている。参道だけあって歩きやすいがその分単調だし、斜度があるので、これを登るのは確かに修行だろう。9:40に参道入口。手前に壹町目があり、入口は元丁目だった。
橋を渡ると白糸の滝がある。名前の通りの美しい滝で、落ち口近くで涼気を浴びた。
白糸の滝
川沿いの舗装路を30分歩いて赤沢宿。江戸時代から身延往還の宿として栄えたといい、今も旅館が営業している。身延の雰囲気に浸るのなら、久遠寺を拝んでここに泊まり、七面山に上がるのもよさそうだ。
集落の中から坂なのだが、道標に従って進むとお寺を過ぎて林道ふうになる。十万部寺までは車も通れる道だが、かなり傾斜のあるコンクリート舗装は山道以上に辛い。雲も取れて暑くなってきた。路上の数珠は、身延山から七面山に向かった人の落とし物か。十万部寺に11時半。狛犬がいて、お堂は左右に「南無日蓮大菩薩」「南無妙法両大善神」の額を掲げる。両大善神は身延山にあって力の猛々しいことで恐れられた二柱だったが、日蓮の教化を受け護法の善神となったという。
十万部寺の先に全面通行止の看板。ただ、上がってくる途中ですれ違った工事関係者に「声をかけて通ってください」と言われており通過できることは分かっている。入っていくと道路崩落の復旧工事で、昼休憩中らしく重機は動いていなかった。居合わせた若者は地元工務店から来ているのだろう、純朴そうで言葉を交わすのも気分が良い。そこを過ぎても路面に土砂が押し出すなど荒れていて車は通れないが、一度は道路として整備されたらしい。感井坊(かんせいぼう)に12時。手持ちの昭文社地図には示されていないが、ここから久遠寺に下りるルートもある(http://www.minobusanropeway.co.jp/hiking/west.php)。
感井坊から身延山奥之院に向かう道は舗装されていたりいなかったり。「妙法塔十丁目」「十一丁目」と丁目石が進んでいくから、ここも参道として歩かれたのだろうか。眺望が開けて大きな川が見えるのは富士川か。参詣者の行き来する一角から北側の展望台に出て、12:40、身延山(1153m)登頂とする。よく晴れたが、展望左端の七面山は山頂に雲がちょっと絡んでいた。
身延山山頂

ともかくも奥之院にお参り。日蓮聖人御手植杉が4本もあるのか。ここはもう登山の世界ではないので、トイレで身体を拭いて着替える。さっぱりしたところで山頂売店でみのぶだんご(ゆば)を所望。ほんのり甘くて美味しい。落ち着いてもう一度奥之院を拝み、ロープウェイで下山。
帰りのバスまで時間があるので、久遠寺をゆっくり拝観。本堂前の柱から伸びている御結縁の綱も握って、御仏の加護も万全だ。土産物屋を物色して、「ゆるキャン△」の交通安全ステッカー(https://www.oku-minobusan.com/2019safedrivingsticker.html)、くずもち、みのぶまんじゅう、ほうとうを買う。ビールを飲みたかったが、お店の方に訊くと「蕎麦屋なら瓶ビールは・・・」というところ(その蕎麦屋はもう暖簾をしまってた)。考えてみると門前町にそうそう酒を飲ませるところもないか。缶ビールを置いている店を教えてくれたので、アサヒ富士山ビールを買い、バス停ベンチで乾杯。
バスは身延山17:10発、バスタ新宿20:31着予定。渋滞で遅れるかもとは乗車時に聞いたが、予想以上に遅れに遅れ、日が変わる頃ようやく新宿着。家まで帰る電車は終わっているので、池袋の漫画喫茶に泊まった。漫喫は初めて利用したが、仮泊に都合よくできたシステムだ。登山の起点になる地方駅にあれば、前泊に使えるな。

■今回のルート
梅ヶ島温泉~七面山ルート

七面山~身延山ルート

*1:写真を見返して気づいたが、ここにも七面山と同じ「台風24号により登山道が被害を受けたため、それなりの危険を伴う」注意が掲示されていた。風に追い立てられて見逃したらしいが、読んだとしても、あれほどの倒木とは思わない。
*2:八紘嶺の注意書きを見ていないので、予備知識がないのである。
*3:後で奥の院のブログを見たら、掲載されていた。マスクしたままだよ、俺。自分のひとつ上の写真がトレーラー運転手54歳。
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