2018/5/3(木)~5/5(土) 白神岳 ― 2018年05月03日 00:00
無名山塾の自主山行。自分がリーダーでY田・M氏参加。といっても、白神岳を提案してくれたのはY田氏だが。
5日の前半まで悪天覚悟の予報だったが要所で晴れて景色を眺められた。一方、4日夜の降雪と5日朝のガスのおかげで縦走ルートには思わぬルートファインディングや藪漕ぎが要求され、予想以上に楽しめた。
■5/3(木・祝)
当日発の鉄道利用ではどうやっても現地着は夕方になる。東能代でY田氏と合流し、JR五能線白神岳登山口駅に17:42着。幸い雨にはならなかったので、無人駅の待合所で身支度して、登山口の駐車場まで40分ほど歩く。流しまで付属した立派な休憩所があるが、宿泊は禁止。入口前にも水道があるが、おそらく沢水で飲用には不適。駐車場には車中泊らしい1台と、バイクが1台停まっていた。
■5/4(金・祝)
6時に出発。今にも降りだしそうなのでスパッツだけ着ける。駐車していた単独男性が先を行く。
二股分岐を過ぎて緩く登っていくと、標高500mの手前辺りに塩ビパイプの水場あり。やがてバラバラと降ってきて、雨具を着けている間にカメラを持ったパーティが追い抜いていく。その先、エアリア(昭文社の山と高原地図)に「最後の水場」とあるのは調査者による注意かと思ったら、現場にそのまま「最後の水場」の札が付いていた。水は先ほどのパイプの方が汲みやすい。蟶(まて)山に向かって高度を上げると、800m近くなってようやく残雪が出てきた。下ってきた単独の若者はおそらく駐車場のバイクだろう。山頂避難小屋に泊まったのだろうか。
ひとしきり登って道が大きく曲がる所に白神山地自然観察歩道の指導標。蟶山山頂への分岐はその手前だが、表示もなく少々分かりにくい。山頂(841.5m)には三角点がある。「蟶」はムシ偏なので何かの昆虫かと思ったら、マテガイの意味だそうである。竹簡のように細長い二枚貝が山の名前になるとは奇妙なことだ。樹木とガスで眺望は無いが、霧の中のブナ林も風情があって良し。
雨は止んだので雨具の上を脱ぎ、時折雪を踏んで登っていく。一部で雪に隠れた道を探すことがあったものの、尾根を辿るだけなので迷うことはない。風が出てきたので再び雨具を着け、十二湖分岐に10:35。白神岳山頂へ向かって右(南)に折れ、夏道や、雪で道の隠れた箇所は笹の生え際を行くと立派な三角屋根の建物。てっきり山頂の避難小屋かと思うとこれはトイレで、小屋はその先だった。
まだ11時だが、この先にテント適地もないので本日の行動はここまで。小屋の前には駐車場の男性がいて、このまま下山とのこと。
無人の小屋に荷物を入れ、空身で山頂(1232.4m)へ。笹藪の中に開けた地面に三角点標と低いベンチ。ガスで眺望無し。小屋内に「山頂手前の鳥獣保護区標識より5分下れば水場あり」と掲示されていたが、雪に埋もれているのか標識は見当たらなかった。
頂上にいても寒いだけなので小屋に戻る。左右にがっちりした突っかえ棒をかませてあるのはそれだけ雪が重いのだろう。裏側にまわると高い窓の下にハシゴが付いており、積雪時はそちらから入れる。小さな小屋だが内部は3層になっていて、詰め込めば15人程度は寝られそうだ。厚めのシートが備え付けてあるのはありがたい。下層を確保して荷物を広げていると、女性2人組が来て上層を覗いたりしていった。落ち着いてから自分も上がってみると、梁に「避難小屋設置準備会」として会長以下の名前を連ねた板が打ち付けてあり、顧問の筆頭に登山家・長谷川恒男氏がいた。小屋が建ったのは1986年、氏が亡くなったのは1991年だ。
お茶を飲むためにガスを炊いても、テントと違って暖まらない。寝袋に入って話などしていると、男性がドアを開けて覗きこみ、昼間から籠っている我々に驚いた様子。それまでドアの上の明り取りだけで薄暗いまま気づかなかったが、いつの間にかガスが取れたようだ。
こちらも外に出てあらためて山頂へ。青空の下、東側に山々が連なる。上州の山また山とも氷河地形のアルプスとも違う山容、ピークから四方に伸びる尾根はヒトデが腕を広げるようだ。青い山体に雪の筋を載せた岩木山・津軽富士も美しい。山頂反対側の笹の間にある踏み分けは現在通行禁止の二股コースで、こちらからは日本海に向かって下りていく山の襞が眺められた。小屋の周りを歩き、東側の尾根を目で追うと、向白神岳を経てずっと歩いて行けそうだ。しかし世界遺産登録地域で、おいそれとは立ち入れないのだな。それにしても14時前後と、いい時間に晴れてくれた。
夕方にはまた雲が増えて風が強まり、荒れてきた。早めに就寝したが、外は強風の様子。深夜にはさらに雷鳴、バラバラと叩きつけるのは雨か霰(あられ)か。どちらからともなく目を覚まして「ヤベェ」「大荒れ」と言い交すものの、そのまま呑気に寝ていた。いやあ、小屋でよかった。テントなら泣きが入っているだろう。
■5/5(土・祝)
5時過ぎ、ガスで視界のない中を出発。小屋前のベンチに昨夜の霰が3cmほど積もっている。視界不良と言っても一般登山道で数メートル先は見えるので問題はない(と、その時は思った)。
十二湖分岐を過ぎて少し進んだ1200m辺り、踏み跡はないが道に従って斜面を下ったところで雪に完全に埋もれて進路を失った。ガスで周囲の地形は見えず、いくらか道らしく思える箇所に踏み込んで藪に阻まれ、コンパスを合わせて進んだ急斜面が道のはずがないと引き返し・・・ 周囲を探ってようやく足元にプラスチックの赤い杭を発見した。必ずしも道を示すものではないが、方角は正しく、枝が払ってあったりもするので間違いないだろう。ここで40~50分もロスしただろうか。それにしても、登山道目印の赤テープが二つ三つ付いていそうな箇所に何もないのは、東北の山に登山者が少ないということか、それとも世界遺産地域として無闇な人工物を抑制しているのか。
尾根伝いに下りて1122地点を過ぎ、950mの鞍部で風を避けて休憩。ガスは取れて薄日も射すようになってきたが、まだ雲は厚い。
多少のアップダウンで950mピークを通過し、大峰岳への登り。樹林と笹の間に雪の白が続く尾根の右側は雪庇というほどではないが迂闊に近寄るのも危ない。道が見えている箇所もあるが、昨日の霰が載っていて滑りやすい。ならばずっと雪を踏んで行こうと藪際を登っていくと、上部で雪が狭くなって道に戻ろうとしたところで思わぬ藪漕ぎになった。太い笹なのできれいに掻き分けないと強力に抵抗し、踏みつければツルツル滑る。
8:40、ようやく大峰岳(1020m)。出発時にはエアリアのコースタイムで下山できるだろうと思っていたのに、ここまでで30分以上オーバーしている。
ここまで来れば後はもう何もないだろうと思ったら、崩山(エアリアでは「くえやま」、『日本山名総覧』では「くずれやま」)手前の900m鞍部でまた迷った。手前のピークから進行方向が北向きに変わるのだが、広いところに目印もなく、後でGPS軌跡を見ると進路変更が不十分。鞍部の本来のルートから外れた箇所で道らしきところを辿って谷に引き込まれそうになって引き返し、次のピークに登れる箇所を探してまたもや藪漕ぎするも前進不能となり・・・ 右往左往の末、ようやく上まで雪が続く一筋の道を見出した。ピークに抜け出てみると藪の出口に赤テープがあった。ここでも40分程度のロス。
そのピークから直進する尾根を外して左(西)へ向かい、少しだけ登るとベンチがあったので休憩。そこから見える指導標が崩山(940.2m)で、今日初めて人に会った。今回の山行ではアイゼンは出さなかったが、ピッケルは必須。この時期に十二湖ルートで白神岳に登る人が少ないことは身に染みて分かったが、夏はどうなのだろう。無雪期でもガスに巻かれれば迷いそうな箇所があるのに、この目印の少なさ。恐るべし白神山地。
すでに11:30。天候も回復してきたし、あとは結構な急傾斜を下るのみ。高山植物かどうか判らないが可憐な花や食べ頃のコゴミなど見ながら幾人かとすれ違い、大崩までくると眼下が開けた。森に包まれた十二湖がはっとするほど美しい。森も一色(ひといろ)ではなく、濃い緑にグラデーションのような黄緑、間にはオレンジに近い色が混じり、また、ピンクは桜だろうか。その向こうは日本海だ。白神岳山頂とともに、今回は本当にいいところで眺望に恵まれた。
13時に青池のところの登山口に下山。コースタイム6:35のところに8時間近くかかった。十二湖巡りをする気力もないので、観光客の間でピッケルを下げた浮きまくりの姿でバス停へ直行、装備を解いて次のバスに乗った。
十二湖駅前の食堂で缶ビールで乾杯し、カツ定食。店の主人夫婦の会話が東北弁を生で聞く初体験だったかもしれない。
■今回のルート
(二日目の出発が白神岳山頂から外れているのは、GPSの精度が出ていないため)
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