2009/3/7(土) JAXA 東京シンポジウム2009年03月07日 13:00

JAXA東京シンポジウム
JAXAの東京シンポジウム「宇宙と人間 -未来を拓く人類の活動領域の拡大-」を聴く。神田の学士会館で13:00~18:30。

受付で重いA4封筒を渡される。中身はカラー図版のちりばめられた400ページ以上ある『高等研報告書0804 宇宙問題への人文・社会科学からのアプローチ』。ISBNコードまで振られた立派な本である。チカラ入ってるなぁ。
ちょっとめくってみると「5.2 コミック」という項(p.60)が目に付いた。人文、芸術分野における宇宙関連作品について述べているらしい。
> 最近のものでは太田垣康男の「Moonlight MILE」、岡崎二郎の「宇宙家族ノベヤマ」、
> 小山宙哉「宇宙兄弟」、萩尾望都「11人いる!」、光瀬龍作・石川球太画「宇宙2007」など。
SFマンガの古典を最近というのはどうよ。「11人いる!」は1975年、「宇宙2007年」は1963-64年の作品だぞ。まあ、ギリシャ時代からの作品を相手に研究していれば、戦後作品などは「最近」ということになるか。しかし、「Moonlight MILE」は3巻くらいまででつまらないから読むの止めたんだよな。同じ時期のものなら幸村誠の「プラネテス」の方がずっと良い作品と思う。

閑話休題。

JAXAのHPからシンポジウムのプログラムをコピペ。
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開会挨拶
立川 敬二 (宇宙航空研究開発機構 理事長)

【第1部:「宇宙と人間」-人文社会科学からのアプローチ-】
司会:井口 洋夫 (宇宙航空研究開発機構 顧問)

(1) 科学技術と人文社会科学との融合
- 国際高等研究所とJAXAの取り組み 井口 洋夫 (宇宙航空研究開発機構 顧問)
- プロジェクトの目的 木下 冨雄 (国際高等研究所 フェロー)
(2) 宇宙は人類の価値観をどのように変えるか
- 人間の活動領域の宇宙への拡大―感覚・観測・想像力 中川 久定 (国際高等研究所 副所長)
- 宇宙への進出は人類に何をもたらすか 木下 冨雄 (国際高等研究所 フェロー)
(3) 宇宙のガバナンスをどう構築するか
- 宇宙ガバナンスの現状 青木 節子 (慶応義塾大学 教授)
- 宇宙ガバナンスの未来 鈴木 一人 (北海道大学 准教授)

第1部 質疑応答

休憩 (ISS/きぼうの映像上映他)

【第2部:「宇宙と人間」-新たな芸術表現の創出】

司会:高柳 雄一 (多摩六都科学館 館長)
福嶋 敬恭 (京都市立芸術大学 名誉教授)、米林 雄一 (東京藝術大学 教授)、逢坂 卓郎 (筑波大学 教授)
【第3部:「宇宙と人間」-有人宇宙活動の未来-】
司会: 高柳雄一 (多摩六都科学館 館長)
対談  松本 紘 (京都大学 総長)×土井 隆雄 (宇宙航空研究開発機構 宇宙飛行士)×的川 泰宣 (宇宙航空研究開発機構 技術参与)

第2、第3部 質疑応答

閉会挨拶
井口 洋夫 (宇宙航空研究開発機構 顧問)
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宇宙開発のシンポジウムというと技術的な側面や宇宙飛行についての話題が多いが、今回は人文社会科学からのアプローチ。今後、民間宇宙旅行が一般化すると小規模ながら宇宙空間に雑多な一般人のコミュニティができる、その際の人間活動についての研究だ。最近、ISS(国際宇宙ステーション)で水球に墨流しをするなど芸術分野の実験を実施しているのもその一環なのだった。
第1部で「プロジェクトの目的」で話した木下氏は「こういった研究にはホラが多くなる。検証の不可能性で検証を」と笑いを取っていた。

無重力の宇宙空間に出ると、これまでの規準系の喪失、世界の相対化が起きる。
哲学では、ハイデガーのダーザイン=「そこにあるもの」は「そこ」を規定できずに無効、サルトルの投機も「前に投げる」ことができない。
宗教では、シャーマニズムの脱我、仏教の入定など、悟りに入る身体の形が取れない。
夢は、精神分析的に上=聖、下=俗と捉えるようなことはできず、変容を迫られる。
「意味的存在」であるところの人間にとって「意味世界」への影響は?という、人間存在の根幹に迫る問いかけ。

宇宙のガバナンスは、実際的にコミュニティの規模を500人程度、メンバは一時滞在という前提を設けての議論。当面は場所を提供した国(例えばアメリカモジュール)と当事者の国籍とで統制することになる。本当に宇宙独自の体制を構築するのは、宇宙で生まれ死ぬ世代が現れてからではないか。これは分かりやすい。

第2部は芸術の話題。
ISSに粘土を持ち込み、人形(ヒトガタ)を作る。シャミトフ飛行士が粘土をこねて人形を製作するビデオが上映された。1体は一かたまりの粘土から全体を形作って目を入れるよう注文してあり、人形に目が入って表情が出ると飛行士の方もリラックスして笑顔が出てくる。もう1体は伸ばした粘土を貼り付けたりして自由に作っていたが、結構楽しんでいた様子。こういったプログラムにより、宇宙環境にあって自分を取り戻す時間を与えることができる。
しかしこのシャミトフ飛行士、水球墨流しも担当したが、やはり感性が日本人とは違う。水球に絵の具を入れて模様を描き出すビデオを上映しながら、企画者の逢坂教授「この後、起きて欲しくないことが・・・」。シャミトフ飛行士、どんどん色を追加して煩いくらいになり、最後に水球に棒を突っ込んで掻き回してしまう。当然、絵の具が混ざって灰色に。あーあ。

第3部は対談だが、まず参加者それぞれに一席。
松本氏は「生存圏の拡大」をブチ上げた。いずれ地球には住めなくなるから、宇宙空間、月や火星を開拓しよう。「サステイナビリティは甘い。これからはサバイバビリティだ」。今回のソフトなテーマの中では異質な印象。増えすぎた人類をもはや地球だけで養えないことには同感だし、生存圏の拡大も必要だ。しかし、資源収奪型の文明を拡大していつまで保つかは疑問。いずれ資源枯渇と領域拡張のための技術開発との綱渡りを強いられるのではないか。松本氏もそれを考えていないはずはないが、時間が限られているため説明していないのだろう。先を聴いてみたい。
土井宇宙飛行士は会場に座っている間はスーツ姿だったが、飛行服に着替えて登場。まず、会場に来ていた新人飛行士候補ふたり(⇒ JAXAプレスリリース「宇宙飛行士候補者の決定について」)を紹介。次にスライドを映して、ISSのアメリカモジュールは航空機の延長、ロシアモジュールは潜水艦と印象を語る。スペースシャトルとソユーズも同様。日本は航空機開発は弱いが造船には強い。ならば「日本版有人ロケットを作ろう 航空宇宙技術と海洋技術の応用」(スライドより)と繋げた。国際的な発言力の点からも自前の有人輸送技術を持つことが必要、と。大いに同感。
的川氏は「今年はいろいろある」と、ガリレオの天文観測400年、アポロ月着陸40年、ダーウィン生誕200年(「種の起源」150年)から宇宙教育の話。

質疑応答での最後の質問が、日本でも宇宙飛行士にテストパイロット(由井氏が空自での経験あり)が選ばれた意味について。壇上の土井飛行士が会場を指すので本人に振るのかと思ったら、立川理事長が立ち上がって「テストパイロットであることは関係ありません」。

その前に質問に立った、4月からJAXA勤務という若者が鞄に土井飛行士他のサインをもらい、友人に「動悸が止まらないよ」と興奮して話していた。頑張って日本の宇宙開発を進めてくれたまえ。

シンポジウムについては以上。

学士会館に入る前にくだん書房に寄って『アポロ11号全記録 大いなる一歩』を1500円で購入。古書としての相場は知らないが、1973年に定価3000円は当時としては高価だったろう。著者は11号の3人の飛行士となっているが、実際は彼らの手記や談話、交信記録等をタイム・ライフの編集者がまとめたもの。それにアーサー・C・クラークによるエピローグが付く。用事で参加でなかったtomo@とかサワキャン(ミクシィネーム)氏の分ももらったシンポジウム資料で鞄が一杯になり、本は紙袋に入れて抱えて帰宅。

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