2021/7/8(木) 「Arc アーク」 ― 2021年07月08日 13:10
「Arc アーク」鑑賞@新宿ピカデリー。
ケン・リュウの原作小説(『神の動物園』所収)を読んでから映画に臨む。
ストーリーの大枠は変わっていないが、若さ=好奇心・精神の柔軟性を保つ主人公が美術や医学など様々な分野を学び続ける描写はカットされ、後半に追加された養護老人ホームのエピソードは不老化処置を受けられる階層とそれ以外との軋轢への回答として用意されたものか。前者はテーマ的に結構ポイントになると思う(原作本で「円弧(アーク)」に続けて収録された「波」でも扱われている)が、映画ではプラスティネーションに姿勢を付けるダンサーとしての資質に置き換えられ、老人ホームともどもSF味を薄めている。
原作とは肌触りが相当違うが、邦画でSFをやる場合の新しい方向性かもしれない。緊張を保った脚本や俳優陣の演技も良かった。倍賞千恵子の存在感はさすが。
しかし作中でも言われている通り、「生は死によって意味を与えられる」というのは最終的に死ぬ以外の選択肢が無い中での話であって、不老不死が達成されれば人間は新しい哲学を生み出すことだろう。原作も映画もそれぞれに優れた作品だが、自分としては現状の哲学など踏み越えて行く物語が好み。
プラスティネーションは以前に「人体の不思議展」だったかで実見したが、映画のは綺麗すぎ。原作では忠実に描写されている。「不思議展」では、展示されている人は自分が死後に丸裸どころか筋肉や内臓までさらけ出して人目にさらされると承知していたのかな、と思ったことだった。
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://marukoba.asablo.jp/blog/2021/07/08/9396197/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。