2005/9/19(月) 『夕凪の街 桜の国』 ― 2005年09月19日 00:00
今月2回の三連休、どちらかで山に行く予定が後の方に決まったので、この3日間はぶらぶら。
で、3ヶ月も前に古本で買っておいた『夕凪の街 桜の国』(こうの史代、双葉社)を手に取った。帯にあるごとく「朝日新聞紙上で2週にわたって絶賛」された代物で、そうするとひねくれ者の自分は却って読む気をなくすのだが、ほぼ半額ならまあいいかと買ったもの。その後も他の本に紛れて積んであったのだが・・・
参った。絶賛にも素直に脱帽。「夕凪の街」はたった30ページで被爆後10年の広島の日常生活、生き残って成人した娘の罪悪感とそこからの解放、そして残酷な結末までを描き出す。
主人公のモノローグ。
わかっているのは「死ねばいい」と誰かに思われたということ/思われたのに生き延びているということ/そしていちばん怖いのはあれ以来本当にそう思われても仕方のない人間に自分がなってしまったことに/自分で時々気付いてしまうことだ
嬉しい?/十年経ったけど原爆を落とした人はわたしを見て「やった!またひとり殺せた」とちゃんと思うてくれとる?/ひどいなあ/てっきりわたしは死なずにすんだ人かと思ったのに
理不尽な死。恨みを言う相手も見えない。それを裏返してそんなところに自らの死を意味づけるしかないのか。
あとがきに「このオチのない物語は、三五頁で貴方の心に湧いたものによって、はじめて完結するものです」とある。35ページは作品の後の真っ白なページ。何度か読み返すと、あるいは知識を深めると、そこに見えるものも変わってくるのではないだろうか。
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