2022/10/25(火)~10/26(水) 黒部川・下ノ廊下2022年10月25日 00:00

天気予報と阿曽原(あぞはら)温泉小屋HPの登山情報とを睨んで日程を決め、下ノ廊下を歩いてきた。
前日はロッジくろよんにテント泊(1500円)。平日ながらテントは数張りあり、おそらく皆、下ノ廊下なのだろう。ロッジ泊には空きがあった模様。

■10/25(火)
ロッジくろよんを5:20に出発。晴れ、気温0℃。
黒部ダムを渡ってトンネルに入り、電気バスの駅(早朝のため閉まっている)を過ぎて直進、路面の「進入禁止」を越える。「←内蔵助谷/日電歩道」の表示に従い、次に「出口」方向へ行くと黒部ダム駅に出た。あとは登山者向けの案内に従って外へ。出口の手前にトイレと水道がある。
黒部ダムトンネル内
広い道をどんどん行くとダム展望台のゲートに突き当たってしまう。引き返すと、左(北)に入る道に「ダム下流/下ノ廊下」と目立たない道標が立っていた。そこを下りるとダム下流を渡る木橋。トンネル内でもウロウロしたので、ここで6:20。すっかり明るくなった。
黒部ダムの下へ
下流から見た黒部ダム
黒部川の間近を歩き、そろそろ内蔵助谷出合かと思っていると、右に下りて行く道脇に「通行できません(工事中)」の看板。まだ先に別の道があるのかと真砂岳方面に直進してみるが、内蔵助谷の右岸を急激に登るばかりだ。引き返して分岐に入ると先行者がいた。下ノ廊下ルートが開通しても看板は通行止めのままらしい。
内蔵助谷出合の通行止め看板
黒部川右岸をしばらく辿ると川岸に残雪のブロックが見られるようになり、新越沢合流点の手前でいよいよ岩壁を穿った道が現れた。
いよいよ岩壁の道
岩が被さるような箇所はごく一部だが、谷間の残雪ブロックはますます大きく、高度感が出てくる。
残雪ブロック
新越沢合流点と黒部別山谷合流点の中間には雪のアーチあり。阿曽原温泉小屋HPで「怖いと思ったら高巻きを」と呼び掛けている<イチロー沢のトンネル>なので素早く潜る。高巻き用のロープも付けてあった。
イチロー沢のトンネル
道はいよいよ険しいが、壁にはずっとバランス保持用の番線(太い針金)が張られ、適宜にハシゴも組まれているので困難はない。写真の登山者は居合わせた先行パーティで、この後、安全な箇所で追い抜かせてもらった。また、水平歩道を逆行してくるパーティには計10人程行き会ったが、譲り合って足元に余裕のある箇所で擦れ違うことができた。
岩壁の道
行く手の岸壁の紅葉が美しい。
岩壁の紅葉
黒部別山谷の合流点は岩を踏んで渡り、ロープと岩に打ち込まれた足場金具を頼りに水平な道に戻る。相変わらず道は高く、眼下の流れは激しい。
旧日電歩道

旧日電歩道
しかし、白竜峡に至るとその流れもやや穏やかに、道も崖から離れた長閑な箇所が現れてきた。もちろん、岩壁を穿ち桟道を渡したような箇所もあるが。
白竜峡

白竜峡を過ぎて
おや、こんなところにテントスペースがあると思うと、その下が十字峡の吊橋だった。二方向から流れ込む迫力の水流に紅葉が映える。ここから剱沢を遡ったところに幻の劔大滝がある訳だ。
十字峡

十字峡
十字峡を過ぎてもまだ続く崖っぷちの道に高度感も麻痺してくるが、足元が疎かにならないよう意識して歩く。半月峡、S字峡(写真)を過ぎると送電線を通すトンネルが見え、間もなく東谷吊橋に到着した。
S字峡

送電線トンネル
長い吊橋を渡って作業用の道路を辿ると仙人谷ダム。対岸にハシゴが3段に連なっているのは仙人温泉小屋に向かう道か。ダムを渡り、案内に従って管理棟に入る。通路を進むとムッと熱気のこもる線路を横切るが、これが高熱隧道に繋がっているのか?
仙人谷ダム
建物を出ると野原で、あとは阿曽原まで楽な道かと思うとハシゴが現れ、引き続く階段や強引な登りに息が上がった。水平になって権現峠の短いトンネルを潜り、阿曽原温泉小屋に13:10到着。
阿曽原温泉小屋
一足先に到着していた単独男性に続いて受付(テント1000円+入浴料800円)を済ませる。入浴は1時間毎の男女交替で13~14時は女性時間だが、今は女性客がいないのですぐに入浴可能、また何度利用しても良いとのこと。テン場に二番乗りして小屋から遠い隅に設営し、早速露天風呂に行くと無人だった。脱衣所さえ無い野趣あふれる温泉に浸かり、身体をほぐす。なお、雨の時は傍らのトンネルを脱衣所に利用するとのことだが、坑口に下がったシートの隙間からもうもうと湯気の上がるトンネルはこれまた高熱隧道に繋がるらしい。曇り空に風が吹いて湯船から上がると少々寒く、テン場に戻る坂を上がっているとポツポツと降って来る中、受付前の自販機でビール(ロング缶800円)を買ってテントに戻った。やがてまた晴れて、色づく山を眺めながらビールを傾ける。つくづく「山はこれに尽きる」と思う瞬間。
露天風呂とビール
テン場は徐々に埋まり、日暮れ時には20張近くあっただろうか。

■10/26(水)
4時起床。晴れ、-3℃。
沢が近いためかテント外壁に氷の膜ができていて掻き落とすのが手間だった。こちらがテントを畳んでいるうちに欅平に向けて出発するパーティもあるが、テン場を出た途端に踏み外した人がいるらしく「上がってこられる?」といった声がする。小屋に助けを求めたようでロープを担いだ人が来たりして、一時通行待ちになっていた(この辺のことは阿曽原温泉小屋HPの本日付の記事にも書かれている)。
ドタバタも収まった5:40に出発。霜の降りた木橋を渡って少し行き、急登に早くも暑くなる。水平になった樹林の道を行くと先行者が二人立ち止まっており「サルの群れがいます」。人間を見ても立ち去る様子がないので、こちらも群れでと3人まとまって進行した。サルをやり過ごして自分が先行。
しばらく進んでまた崖際の道となり、カーブを曲がった途端に重量感のある獣が登山道脇の斜面を駆け上がって樹の間に消えた。黒い影が一瞬見えた気もする。落葉の上にダッシュの跡が残っており、クマかカモシカか。
崖際とは言え昨日のような岩崖と違って下方に樹木が茂っているため、それほど高度を感じない。水平な道をどんどん歩いて7時に折尾(おりお)ノ大滝。滝は折尾谷の手前で、折尾谷は内部がトンネルになっている堰堤で通過する。
折尾ノ大滝、堰堤
また岩崖道となり「下ノ廊下」でイメージするような風景が現れる。そこまで行くと「大太鼓展望台」のプレートが付いており、さすがの高度感。手持ちの昭文社の山と高原地図「剱・立山」(2016年版)で「大太鼓」は志合谷の手前でルートが東側に膨らんだ(地形図で1023ピークを巻いている)箇所だが、プレートはそれより先のようだ。
大太鼓
大太鼓からの景色
志合谷は谷に詰まっていた雪が大きな塊になって崩落しており、そこを素掘りの長い(昭文社地図によると150m)トンネルで潜り抜ける。真っ暗なトンネル内に溜まり、あるいは流れている水は頭上の雪から来るのか。おかげで靴が洗われて綺麗になった。
志合谷
志合谷のトンネル
水平歩道も終わりに近づき、送電鉄塔が現れる。紅葉を散りばめた山々の向こうに白く輝くのは白馬岳から白馬鑓ヶ岳辺り、やがて不帰ノ嶮(かえらずのけん)から唐松岳まで見えてきた。
白馬~唐松岳
鉄塔間の送電線を間近にするとブツブツと呟いているのが聞こえる。谷間から電車の警笛も聞こえてくる。
「欅平上部」のプレートを見て下って行くと、ヤブにガサガサと獣の気配がしてグルルと唸り声が。これは妙義で聞いたやつだ(https://marukoba.asablo.jp/blog/2013/11/02/9405977)。やはりクマだろうか。立ち止まって周囲を見回し、ザックに付けた熊鈴をことさらに鳴らして通過。間もなく、通行止め(登山者は除く)のトラロープが張られた登山道入口に出た。駅に向かって下って行くと、最初の列車で到着したのであろう何組ものパーティや単独登山者が登ってくるので、幾人かには「クマがいるかも」と伝えた。10:10 欅平駅に下山。
トイレで身体を拭って着替え、次のトロッコ列車に乗った。

旧日電歩道、水平歩道は楽しい道だった。しかしそれは登山でのこと。岩を削った跡や絶壁の桟道を見れば、道を切り拓く苦闘を想わずにはいられない。また、この狭い断崖の道でダムの建設資材を運んだ歴史を知ってはいても、自分で歩いてみると却って信じられなくなるようだ。
岩を割った跡
岩を断つ
木を潜る

■今回のルート
下ノ廊下ルート

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