2021/12/28(火)~12/30(木) 北岳(敗退)2021年12月28日 00:00

無名山塾の自主山行。T中・H氏との二人パーティで北岳~間ノ岳~農鳥岳の白峰三山を縦走する計画だったが、荷物の重さに加えて強風と雪とで北岳にも届かず敗退した。いつか北岳だけでもリベンジしたい。

■12/27(月)
芦安に前泊。
山梨交通バスと南アルプス市コミュニティバスを甲府駅~御勅使(みだい)~芦安と乗り継ぐ予定だったが山梨交通バスが遅れ、運転手の案内で御勅使より手前のバス停で乗り換えて無事に着いた。
宿は民宿旅館なとり屋。「ゆるキャン△」の聖地として訪れる人も多いとのこと(作品に直接は登場しないが)。食事が美味しく日本酒が進む。お燗の徳利が「ゆるキャン△」のグビ姉こと鳥羽先生だった。
なとり屋
なとり屋の食事

■12/28(火)
おにぎりにしてもらった朝食を食べ、予約しておいたタクシーに乗車。宿から夜叉神峠登山口まで11km、標高差700m以上ある。積雪があればタクシーも入れず、フル装備でこの峠道を歩くのはそれだけで挫けそうだ。その場合を考えると、今回のように夜叉神から入って鷲ノ住山を越えるより奈良田から歩いた方が早いことになる。
自家用車が数台駐車している夜叉神峠登山口で気温-3℃、星空の下、5:15に歩き始め。ゲートを入って少し行くと夜叉神トンネルで、半ばまで所々にある出水箇所は凍っていた。次の観音経トンネルはほぼ乾いている。林道歩きで鷲住山展望台(バス停)を通過し、鷲ノ住山への登山口に到着(6:50)。
鷲ノ住山(1534m)は山頂からの下りが急だが、アイゼンを着けるまでもなく通過。「危険に付き一人ずつ渡ること」と注意書きのある野呂川吊橋は長くて揺れ、見下ろす水は冷たそうだ。
野呂川吊橋
吊橋を渡って県道37号(南アルプス公園線)に上がる箇所は昭文社の山と高原地図では単に「急坂」だが、足元が狭く山側の岩がせり出している箇所でザックが岩に当たってバランスを取れず、谷側に張ってあるロープに縋ってようやく通過。道路直下も木登りになる(先に行ったT中氏は急斜面をジグザグに上がったそうだが、自分はその頃上記の岩に苦戦していた)。
薄い雪が一部で凍っている県道を40分ほどであるき沢橋(バス停)に到着(9:10)。見える範囲の登山道には雪が無く、ザックに下げた温度計は0℃より上を指している。休憩していると、奈良田から来たのであろう2パーティが追い付いてきた。
あるき沢橋
9:15に登り始め。急斜面を上っていくとさすがに雪が出てきたので、傾斜が緩んだ地点でアイゼン装着。その後も池山吊尾根に上がるまで急斜面が続き、ザックの重量に一歩一歩喘ぎながら登る。池山(2063.8m)は樹林の地味な山頂で、三角点は雪に埋もれているのか気づかずに通過。ごく緩やかに下って広い雪面(その下に池がある)に出ると、向かい側に池山御池小屋が見えた。あわよくばさらに進出して日程短縮と思っていたが現実はここまでで精一杯、本日は計画通りに池山小屋泊りとする(13:10)。
池山御池小屋
小屋は外側ドアを入るとコンクリ土間があり、内側ドアの先は一間(ひとま)のみのシンプルな作り。その一間に1パーティがテントを張っていた。自分たちもそれに倣っていると次が入ってきて部屋は満杯。夜までに土間に入ったパーティもあって小屋に4パーティが泊まり、外にも3張ほどテントがあった。

■12/29(水)
4時起床時には星空、風無し。今日は北岳山荘までの予定なので夜明け近い6時出発とした。が、これはやや失敗で、早い時間の方が稜線に出てからの風が弱かったかもしれない。
樹林の間にしっかりトレースが付いており、城峰(しろみね)の手前で尾根に上がるまでは風が通らずに暑い(気温は-10℃程度)。城峰山頂(2372m)の前後にテントが張ってあったのは、ここをベースに北岳を往復するのだろう。一頻(ひとしき)り登ると樹林の間から甲斐駒ヶ岳が望め、さらに2650mを越えると樹林が切れて前方に砂払からボーコン沢ノ頭の高まり、その左に間ノ岳~農鳥岳の稜線が見えた。樹林を出ると風が強まるが、砂払まではまばらに樹木があり、風を避けられる場所にテントが2張。後で戻る時に外に出ていた大学生風に聞くと、ここで3日間キャンプ生活で明日北岳の予定とのこと。そこから少し登ると時折よろけるほどの強風となった。
緩やかな登りでボーコン沢ノ頭に到着(9:50)。眼前に雄大な北岳から続く白峰三山、右に甲斐駒ヶ岳から早川尾根を経て鳳凰三山、その奥に八ヶ岳、背後には富士山。
白峰三山
甲斐駒~鳳凰
富士山
ここから八本歯ノ頭までは緩やかだが、八本歯ノコルを過ぎると北岳山頂への急登となる。ここまでの行程では荷物の重量に苦しんで登りのスピードが出ていない。それに自分は以前に凍傷を負った右手指の血行が悪く、対策として手首用カイロなど用意してあるもののあまり冷えるのは不安。この強風の中、八本歯ノ頭まではともかく、難所のコルの通過に手間取ったり、山頂への登りに時間を費やすことになると危険かもしれない。また、首尾よく北岳に登頂しても続く3000m超の稜線上での風も懸念される。以上を考えあわせ、今回は縦走を断念することにした。今日は戻って尾根上の適当な地点に幕営し、明日、荷物を軽くして北岳ピストンを狙おう。
ボーコン沢ノ頭から引き返し、大学生テントから少し下って風が樹木で遮られる地点(2690m)の道脇に泊まることにする。雪がサラサラで踏んでも固まらないがテントを置くだけの広さを整地した。テント設営中は弱かった風がやがて強まり、曇ってきて雪も舞う。風も雪も強弱はあったが夜も続いた。寝ていると、パラパラと雪がテントに当たる音、ゴウゴウと風の唸る音が聞こえるが、樹木のおかげでテントが揺すられることはほとんどなかった。

■12/30(木)
風の強まらないうちに行動しようと2時半に起床したのだが、昨日以上の強風に加え、激しくはないが降雪も続いている。この状況では昨日のトレースは消え、砂払を出れば地吹雪で目も開けていられないだろう。残念ながら今回はここから撤退と決定した。天候は今日まではもつと予想していたのだが、こうなってみると昨日せめて八本歯までは行っておくのだった。
飛ばされそうになりながらテントを畳み、4:15に下山開始。案の定、すぐにトレースは消えてしまった。
10分足らずで見覚えのある岩(2680m)まで来ると、往路では難なく登った箇所がかなりの傾斜で足場が分からず、ヘッドランプではその先の進路も見えない。補助ロープで確保して斜面を下りたが先の目印は見当たらず、ルートを探って踏み込むと腰まで雪に潜る。右に左にと探って、ようやく新雪に隠れたトレースのおかげで足元が沈まない(それでも脛くらいまで潜る)ルートを発見した。
少し行くと、池山から登ってきたと言う二人組とすれ違った。彼らも途中でルートを外したとのことだが、とりあえずトレースが使えると思ったのも束の間、雪面はすぐに真っ新(まっさら)になってしまう。一度、後方を下りてくるヘッドランプが見えたのは砂払の大学生パーティだったろうか。
その先、2660mで樹林が切れて尾根が広くなる地点も分かりにくい。樹林の間にルートかと思われる間隙を探して入っていくと雪が深く樹木が密になって行き詰まる。戻って足元を探りながら進むと、今度は赤テープを発見してルートに乗ったことが分かった。そうしてみると先ほど行き詰まった進路と出だしは並行していて、樹林の入口の少しの違いで悪戦苦闘することになったのだった。その後、ルートは尾根を外してからトラバースで尾根上に戻るのだが、これは樹木の密な箇所を避けたのだろう。基本的に尾根を外したくないので、途中でルートを踏み外して潜ってしまうと、そのまま進むのか尾根に戻るのかと迷うことになった。また、トラバースでルートの下側に踏み外すと斜面だけにいっそう深く潜り、這い上がるのに苦労する。そうこうするうちに明るくなってきた。樹林のため風は気にならないが、小雪は降り続いている。
その後はルートが明瞭になり、短い斜面だが真っ新の雪面で滑るとずっと下まで落ちそうな箇所でロープを出す場面もあったものの、城峰(往路で見かけたテントは撤収していた)を経て9時過ぎに池山御池小屋に到着。昭文社地図でボーコン沢ノ頭から2時間20分のところを、手前の砂払から5時間掛かった。
池山吊尾根を外して下りていく道は、登りで感じた以上の斜度で急降下する。一箇所、短い斜面だが真っ新の雪面で滑るとずっと下まで落ちそうな箇所でロープを出した。明日の大晦日は天候が荒れる予報だが、登ってくるパーティや単独行の何組かと行き会う。雪が薄くなり傾斜が緩んだ箇所でアイゼンを外し、その後また泥斜面が凍っていて再装着するなどして、あるき沢橋に11時半下山。一昨日は雪の無かった登山道がすっかり白くなっている。
早朝からの行動に疲れた身体で鷲ノ住山を越えるのは辛いことと交通の便とを考えて、奈良田まで歩くことにする。ごくわずかな下り傾斜で、しばらくは路面に積もった雪の下がツルツルに凍っていて何度も尻もちをついた。「開運隧道まで○km」の表示(最初に見たのは10kmだった)を励みに歩き、あるき沢橋から3時間で奈良田第一発電所に到着。開運トンネルのゲートは扉が開いていてザックを下ろせば通過できた。もし閉まっていたら柵を乗り越えられるだろうか?
奈良田ゲート
そこから奈良田までさらに20分、白根館で慌ただしく温泉に浸かり、身延行きのバスに乗った。

■今回のルート
北岳ルート_1
        夜叉神峠登山口から下山(あるき沢橋)まで
北岳ルート_2
        下山後、奈良田までの車道歩き

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