2012/5/4(金)~5/6(日) 鹿島槍ヶ岳天狗尾根(敗退)2012年05月04日 00:00

無名山塾・GWの技術委員会企画で北アルプスへ。M本・YリーダとS木・Y氏(女性)、自分の3人パーティで天狗尾根から鹿島槍ヶ岳を目指すも雪が悪くて敗退。そこまでのルートでは沢の渡渉が核心だったか。

■5/4(金)
もともとは2日夜発の予定だったが大雨で1日遅らせて3日夜新宿発の高速バスに変更。この時点で予備日がなくなった。
信濃大町駅でタクシーに乗り換え、大谷原(おおたんばら)へ。
6時に歩き始め。橋を渡り、残雪を踏んで大川沢の右岸を行く。いずれ対岸に渡らなければならないのだが、流れの緩やかに見える箇所ではその先に崩壊地のヘツリがある。そうしているうちに1時間ほどで右岸は行き詰った。しばし逡巡の後、いよいよ渡渉。M本氏とS木氏はズボンを脱いだが自分はそこまで水は来ないだろうとたくし上げたのみ。まずM本が普通のサンダルで水に入ったところ片方を流されてしまい、入れ替わりに自分とS木氏が踵押さえのあるサンダルに履き替え、互いのザックのベルトを掴んで渡る。水は太腿まできて足場が悪いと身体を持っていかれそうになる。痛いほどの冷たさではないが、やっと対岸に上がってみると血管が青く浮き上がって見えた。サンダルをロープに付けてM本に渡し、3人渡り終えるのに1時間近くも掛かってしまった。水に入ったところで後続パーティが来たのだが、こちらの姿を見て嫌気が差したのか付近の尾根を偵察する様子だったが、いつの間にか見えなくなっていた。
決死の渡渉
ズボンと靴を履き直して左岸を行くと橋の跡(橋脚のみ)があって行き止まり。今度は自分もズボンを脱ぎ、先ほどと同様の手順で右岸に戻る。度胸が付いた分、時間は半分で済んだ。
取水堰手前の吊橋は渡らずに通り過ぎる。無人の堰にライトが点いて水面を照らしているのが少々不気味だが、たぶん監視カメラが24時間作動しているのだろう。その先、沢を見下ろす斜面でイヤなところには捨て縄があって助かる。
9時半にアラ沢出合で小休止。水量は3:1か4:1だが、アラ沢もゴロゴロした岩を水が噛んで十分に激しい。
アラ沢出合
アラ沢右岸の雪の上を少し行くと間もなく進めなくなった。尾根への取付き点はまだ先だし、対岸に広い場所もないのだが、やむを得ずここで渡渉。水流の真ん中は思ったより深いが何より短いので大川沢よりは楽。しかし水から出ても雪が高くて容易に対岸の斜面に上がれない。とりあえず靴を履こうと岩の上でサンダルを脱いだら、うっかりした拍子に足を引っ掛けて片方を流してしまった。ここを最後にもう渡渉はないはずだが...
この辺りまで晴れたり曇ったりで15℃前後。渡渉の水は冷たいが、気候的には楽だ。

3人で対岸の雪の斜面に上がり、ズボンを履き、さらにハーネス、アイゼンを着ける。急斜面なのでロープを出し、M本先頭、S木氏ビレイ、自分は真ん中でタイブロックの態勢。
大樹の根元でピッチを切った次が悪かった。雪の落ちた急斜面ではあるもののピッケル、アイゼンで上がれそうに見えるのだが、M本は途中岩の現れたところでキョン足の姿勢で逡巡、時間を掛けて通過した。二番手の自分が行ってみると、ピッケルを刺そうにも雪・泥のすぐ下が岩で引っ掛かりがない。タイブロックでロープに半ば体重を預けて登った。ロープがなければ転げ落ちてしまうところだ。
悪い斜面
その後はザレた斜面があり、樹に掴まって一段上がると灌木帯となった。細い樹を分けて少し進んだところで休憩。13時。
樹の根元から消えつつある雪を踏み、13:40・標高1360mで顕著な尾根に乗った。
尾根上は風が強く、時折雨。特段の困難はないが標高差はある。天狗ノ鼻付近で泊まる計画だったが、進路の地形を判断して16時・1830m付近でテント設営を決めた。
気温は下がって5℃。夜間は雨、時折風。

■5/5(土)
5時過ぎに出発。小雨、1℃。
尾根上を進むと雪が切れていて危なっかしい。ロープを着けて雪から藪に移り、あるいは岩との接触面から後退しつつある雪を踏んでいくうちに雨はあがった。
7:20 標高2030m付近。進路の斜面に雪がない! ここが第一クーロワールのはずで樹に赤テープも付いているのだが、岩の上に土が乗った急斜面では昨日苦労している。残念ながらこれ以上の前進は無理と判断し、写真だけ撮って引き返すことにした。
雪のないクーロワール
撤退地点にて
テン場まで戻って一休みし、上がってきたルートを逆に尾根から樹林へと戻る。昨日苦労した斜面は見送って、アラ沢出合を目指した。
急傾斜を樹に掴まったりロープを使ったりして下り、出合に近い(標高1160m)辺りでアラ沢に懸垂下降。登った地点より出合寄りで、上からはそれほどとも見えなかったが流れが強そう。靴もアイゼンもそのままにM本氏がロープを引いて先行し、続いて踏み込んでみるとアイゼンのおかげか案外楽に乗り切れた。水は腿までくるが距離が短いので片足は浸水しないで済んだ。行程途中で靴を濡らすわけにはいかないが、終わりが見えていればこその思い切りだ。
そこからすぐに出合で、大川沢右岸を進む。来た時と同じく取水堰を過ぎて渡渉。昨夜の雨で水量が増したようだ。S木氏のビレイでM本が先行、自分とS木氏は水の抵抗を減らすためズボンを脱ぎ改めてアイゼンを装着、ザックのベルトを支えあって確保無しで渡った。しかしこれは失敗。M本は末端交換法(両岸の支点の間でロープを輪にして末端を対岸に渡し、最終者を対岸側でビレイする方式)のつもりだったのだが、渡ってしまうと水音で会話が通じず、我々は末端交換法のことは頭に浮かばなかった。万一流されたらと考えると、危険な渡渉だった。
既に靴が濡れているので、行きに見送った左岸の崩壊地もヘツることなく流れに踏み込んで通過。その先の緩やかな箇所を渡り、林道下の雪面で靴を履き直す。水には慣れたが、裸足は非常に冷たい。
さらに1時間歩き、16時に駐車場に戻った。

予定より1日早く下山したので、信濃大町駅そばの七倉荘に投宿。山ヤの泊まり易い旅館だ。

■5/6(日)
翌朝ゆっくりしていたらまんまと電車バスをしくじり、時間つぶしに入った駅前の酒屋の主人が昔の山ヤで、いい酒を勧めてくれる。3人で買い込んでしまった。

街に帰ってから知ったが、この連休に爺ヶ岳や白馬では天候悪化による大量遭難が発生していた。我々も鹿島槍から爺へ縦走する計画だったし、別パーティで爺に登った仲間は遺体の傍らを通過したとのこと。他人事ではない。合掌。

■今回のルート
鹿島槍ヶ岳・天狗尾根ルート
5/4:信濃大町(タクシー)~大谷原(6:00)~大川沢の渡渉1(7:00-8:00)~大川沢の渡渉2(取水堰手前、8:20-50)~アラ沢出合(9:30)~アラ沢の渡渉(9:50-10:30)~尾根に乗る(13:40)~尾根合流(1650m付近、14:50)~テン場(1830m付近、15:50)
5/5:テン場(5:10)~第一クーロワール(7:20-30)~テン場跡(9:20-40)~アラ沢の渡渉(12:30-13:00)~アラ沢出合(13:10-20)~大川沢の渡渉1(14:00-40)~大川沢の渡渉2(14:50-15:00)~大谷原(16:00)~(タクシー)信濃大町

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