2006/9/15(金) 『ビッグバン宇宙論』2006年09月15日 00:00


宇宙論の発展についてはおおよそ知識を持っていたが、それが一本のストーリーに、さらに様々な人間の係わり合いのドラマとなって頭に入り、たいへん面白い。シンの本を読むのは初めてだが、さすがの力量だ。
数式やグラフは最小限で、理論の説明は図解がメイン。それに研究者の写真の選択がいい。ガモフ(下p.57)やホイル(下p.197)の生き生きとした姿が研究現場の雰囲気を伝えている。

ビッグバン理論の展開を概観することと並んで、科学そのもののあり様を描き出すのが著者の狙いとなっている。それは、エピローグで著者自ら「ビッグバン・モデルが初めて着想されてから、練り上げられ、検討され、検証にかけられ、証明され、最終的に広く受け入れられるまでのなりゆきは、(中略)科学的方法が機能するときの典型例だったのだ」と書いているし、訳者あとがきでも指摘されている通り。
読者層はおそらく科学史や天文学に興味を持つ人々になるのだろうが、むしろ科学を敬遠している中高生レベルに読んで欲しい。むろん、大人が読んでも有意義な知的エンタテインメントである。

こういった視点の広い書物を訳すには著者に匹敵する知識が必要であろうが、翻訳の青木薫は京大出の理学博士だけあって適任。訳注で原著の記述を訂正している箇所もあり、日本語としても読みやすい。
シンは巻末の謝辞で各国の編集者や翻訳者に言及し、青木は訳者あとがきで新潮社の担当と校閲に礼を述べる。いい本を日本語で読めるのは国境を越えた連携あってのことなのだな、と改めて思う。

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