2006/3/19(日) 『プリオン説はほんとうか?』2006年03月19日 00:00

朝日新聞の読書欄を見て先月末に買った『プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー』(福岡伸一、講談社ブルーバックス)をようやく読んだ。その時の日記に書いたように、タンパク質が感染性の病気を引き起こすという生物学のセントラルドグマに反する説明に以前から興味を引かれていたが、定説となったそれに異議をぶつけるのが科学論争としてまた面白い。

プリオン説が定説の座を占めるに至った経緯をまとめ、しかる後に、そこでプリオン説を支持すると見えたデータを洗い直して別の解釈がありうることを示す。正々堂々たるミステリを読んでいるようにスリリングだ。

プリオン説は状況証拠を積み上げただけで決定的な証明には至っていない。これが日常生活から離れた論争ならいいのだが、事は自分の胃袋に入る牛肉だから厄介だ。
異常型プリオンが元凶だと確定できない以上、「いわゆる特定危険部位(脳、脊髄、扁桃腺、回腸)さえ除去すれば、あとの部分は食用にしても安全であるという考え方は論理的でない」(p.132)。アメリカの食肉業者は特定危険部位の除去さえ満足に出来ないのに。
また、病原体が可変的である可能性もある。アメリカでは牛や羊の死体から作られた肉骨粉を牛以外の家畜やペット、養殖魚に与えることは規制されていない。「このような死体のリサイクルを繰り返すことは、病原体に変異のチャンスを与えているのと同義語である」(p.180)。

まだ牛を食べるのは安全でないみたいである。
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