2013/11/2(土)~11/3(日) 妙義山・相馬岳北稜、風穴尾根 ― 2013年11月02日 00:00
無名山塾の自主山行。
H方・Y氏氏の誘いに応じて妙義山のバリエーションルートを2本。妙義はいろいろな意味で面白いが、クマに会ったのがトピックかも。
■11/1(金)
仕事場からまっすぐ帰宅して、終着で横川駅へ。駅の駐輪場にテントを張って寝る。外で路線を間違えたらしい女性が電話で泣き言を言っていた。
■11/2(土)
5時、タクシーで国民宿舎<裏妙義>手前の広河原パーキングまで。タクシーを待たせて宿泊用具などをデポしてから来た道を戻り、中木ダム方向に入って相馬岳北稜の取付きへ。地図で見て大体のところで降りて探すと、道がカーブしている箇所に出ている尾根に踏み跡が付いていた。ザックに用心のクマ鈴を着けて出発。5:40 晴れ、8℃。
相馬岳北稜は最初は急ながらも普通の尾根だが、地形図を見ると標高600mを超えたあたりから左右を岩崖マークに挟まれた細い尾根が延々と続く。6:20、崖マークの手前で太陽が雲の上に顔を出した。やがて岩が多くなり、適当に巻いたり、気分よく稜線を行くと切れ落ちていて戻ってルートを探したりして進む。P1~P4は特定しないまま通過。
8時、P5とP6の間のギャップ。見た目は岩壁が立っているが、チムニーの右側を特に苦労なく登れる。
P6から木を使って懸垂下降し、P7との間のギャップで登れる箇所を探す。チョックストーン(溝の間に挟まった岩)の下の木に、P7に向かって右に下りるのに使ったらしいスリングが残っているが、その先が見通せない(後で他の記録を読んだら、ここを下りて巻くこともできるらしい)。結局、ギャップ中の高いところに立っている木の根元で確保体勢を取り、その幹を頼りにH方氏リードでP7に登った。岩質はコンクリートに石を埋め込んだような感じでホールドスタンスはあるのだが、下部が被り気味なので木を使わないと難しい。ここで8:20~9:00頃を費やした。
その後のアップダウンは特に問題なく、10:20 P11に到達。テントひとつ張れる程度のスペースがあり、実際に泊まったとの記録もWebで読んだ。
次のP12(つづみ岩)の登りが本ルートの核心。P11との間のコルに懸垂下降するため適当な潅木を支点に決め、対面を観察する。コルからの草付きはいいとして、その上は岩壁が立っている。その中ほど、縦溝に沿って灰色のロープの切れ端が下がっているように見えるが、蔓かもしれない。
コルに下りて二人ともクライミングシューズに履き替え、灌木で確保体勢を取る。セルフビレイで泥の斜面に身体を支えている状態で、踏ん張っている足元が時々崩れる。リードするH方氏の姿は木に隠れてよく見えないが、すぐに「ここから岩なので(確保をしっかり)お願いします」と声がかかった。そこからが苦労で、身体を持ち上げたH方氏、ずるっと小墜落。幸い何事もなく再チャレンジし、しばらく行き悩んでいたがやがて上がっていった。「登ってください」の声でこちらも踏み出す。出だしの草付きを問題なく攀じ登ると、眼前に立ち上がった岩の亀裂に古いハーケン、そこにこれまた古ぼけた灰色のスリングが付いている。先ほどロープの切れ端と見えたのはこれだったか。比較的新しい残置ハーケンもあり、こちらにはH方氏が中間支点を取っていた。他にどうしようもないので、右足爪先を小さな出っ張りに乗せ、古スリングを思い切り引いて立ち上がる。次の手を探すが泥と枯れ草以外に何もない。左足を下ろそうにも、いかにも滑りそうな泥ステップだ。これは無理だゴボウ(ロープを掴む)で上ろうと、H方氏にロープのフィックスを頼む。フィックスを待つ間はスリングに縋った右足爪先立ちで、思わずミシンを踏んでしまう(膝がガクガクすること。今時、足踏み式ミシンもないが)。「OK」の声にロープを掴んで滑りそうなステップに左足を乗せると、やっぱり滑った! 二度ほど滑ってロープにぶら下がって休み、3度目にロープに頼りつつ左手の灌木に手を伸ばして、ようやく這い上がった。H方氏はよくリードで突破できたと思うが、やはり足元が滑らないよう念じつつ左の灌木を掴んだとのこと。読んだ記録の中には、アイスバイルを泥に刺して手掛かりにしたもの、右手のルンゼを懸垂下降してP12基部をトラバースしたものなどがある。自分の手足だけで上ったのは少しばかり自慢できるのではなかろうか。クライミングシューズは泥で滑るばかりだったが、スリングを掴んで立ち込んだスタンスは登山靴で通用したかどうか。ともかく難しいところだ。11:50 P12の頂に立った。
核心は済んだが、ルートファインディングは続く。P12頂から少し下ると歩くには危険な斜面となり、潅木の間を斜めに懸垂下降。稜に戻って進むとまた断崖で左に懸垂下降。踏み跡がないかと探すのだが見当たらない。少し進んでから稜線に戻ろうと再び確保を取ってH方氏リードで1ピッチ上がり、その上は易しいかと思って行ってみると予想以上に岩が立っている。今度は自分がリードでまず右から灌木帯まで上がれないかと試すがダメ、左にトラバースし斜面上の乏しい潅木に中間支点を取る。手を掛けた岩がボコっと抜け落ちて肝を冷やしたりしながら、木を掴んで這い上がった。
そうして稜線を行くとナイフリッジが岩峰に突き当たっており、その手前を短く懸垂下降するのがよさそうだ。下りてみるとナイフリッジの下に空間が開いており、リッジならぬブリッジと判明、ここが仙人窟だ(14:00)。お互い、胡坐で仙人のマネをして写真を撮る。
カニのハサミのようなハサミ岩を過ぎると地形図上に脊椎の如くに続いていた岩崖マークも一段落、普通の尾根歩きになる。やがて妙義富士の方から来る稜線を合わせ(相馬岳へはここで尾根の方向が変わるのだが、油断して直進してしまい修正)、再び岩崖マークに挟まれるがもう困難はない。最後に結構急な斜面を頑張って、15:30に相馬岳(1103.8m)登頂。はやくも夕方の光線で、山頂標識を入れて写真を撮るにはストロボが必要だった。
下りは破線とは言えエアリア(昭文社の山と高原地図)に載っている道だ、楽勝だろうと思っていると案外険しい。急降下だったり、崩壊地だと思ったところに鎖が付いており、それがまた見た事がないほど何本も連続していたり、やせ尾根だったりする。途中、道脇の岩に穴が開いていて、辿ってきた北稜が額縁に飾ったように見えるのは愉快だ。
最後に、右へ折れる道標を見落として尾根を直進してしまうというオマケがあり、17:30 ヘッデンを点して国民宿舎に到着。
売店で酒とツマミ、それにテントから水汲みに戻ってくるのも面倒なのでペットボトルの水を買い、駐車場に戻った。
■11/3(日)
食事し、昨日同様に不要物をデポして駐車場を出る。H方氏、足が少し痛いがとりあえず歩くのは大丈夫とのこと。今日は遅くなると天気が崩れる予報なので、無理のない範囲で行くことにする。
国民宿舎の外トイレを使い、水を汲んで5時出発。晴れ、9℃。
丁須の頭方面の登山道に入ると間もなく黄色ペンキで「←巡視道」と書かれた木があるのでそこを入る。道は荒れておりイバラに引っ掛かってモチベーションを下げていたら、その手前に左(南)の沢に下りる踏み跡があった。沢にあまり水はなく濡れる心配はない。事前に読んだ記録にあった大岩を越え、標高500mを超えたあたりで左手の尾根に取り付く。急傾斜を登りながら「ドゥルル・・・」というような音を聞いたが、獣かあるいは遠くの作業音か判然としない。尾根に乗る(540m)と眼下は植林地。と、ここでまた「ドゥルル・・・」が断続、どうやら獣らしいが姿は見えない。
植林の作業道らしきスペースを抜けて西へ向かう。木の根を掴むような急傾斜をH方氏はえらい勢いで登り、こちらは青息吐息。尾根はいったん南に屈曲し、標高780mで鶴峯山東側の岩壁の基部に突き当たる(7:15)。踏み跡とマーキングに従って右(北)へ行くと、涸れた谷で岩壁の切れる箇所に出た。切れ目を過ぎた先は行き止まりだ(地形図では岩崖マークが大きく西へ曲がる部分が切れており、そこを登ったとする記録もあるのだが、後で確認した自分たちのGPS軌跡データはそれより手前で崖マークを突っ切っていた)。切れ目に入って落ち葉の斜面を上がると、右端は溝の上部を岩が塞いだような形、左側はやや外傾しているものの岩に足の置き場所はありそうに見える。両方を試しつつ迷ったが、結果的に右側の溝に足場を探して身体を持ち上げれば手掛かりもあって登れた。
上がったコルで方角を確認し、普通に歩いて高度を稼ぐとまた岩。右に回っていくテラスがあって樹木に赤テープも付いているのだが、一段上がるための足場がない。左は藪斜面のトラバースでテープなどはないが、踏み跡らしきものが見える。ここは左に行ってみると、トラバースの先は下部が泥、上部が岩の急斜面になっていた。泥部分を上がり、太い枯れ木に確保を取ってH方氏が先に登る。岩には手掛かりがなく左に逃げたが、足元の泥がボロボロ崩れる上に掴もうと思う木に枯れ腐れているのが多くて悪かった。
這い上がった先のピークは樹に囲まれていて特に目印もない。尾根を南に少し進んだ箇所の方が高く見えたので、そちらが鶴峯山山頂(899m)と思って一休み(8:45)。景色もよく国民宿舎が小さく見える。読んだ記録の中には迷走してここまで来られなかったものもあるので、第一関門を通過した思いだ。
風穴尾根は鶴峯山からほぼ一直線に西北西へ伸びる。しかし、休憩を終えて尾根に沿って行くとすぐに転げ落ちそうな急斜面。戻ってみると手前の地味なピークの先に尾根が続いていた。こっちが山頂だったか。
急傾斜をコルに下りる。記録ではマーキングのあるコルから左(南)に巻いたとのことだったが、ここに目印はなく、踏み跡は眼前の急登に続いている。上がってみるとナイフリッジだったので、記録のコルはこの先かもと確保を取って偵察。しかし、尾根はそのまま岩峰(P1らしい)に突き当たり、下りられるとしても懸垂下降になる。いったん戻って先ほどのコルから下を偵察してみると、そこが記録の場所と確認できた。しかしH方氏は岩峰からの懸垂下降を主張。ここを突破した記録は読んでいないし、ロープを支点の樹から岩を乗り越して引くことになるのでどうかと思ったが、結果的に問題なく下りられた。次の岩峰は巻き、P4は登る。
そうこうして行くと、尾根の右側を下りたところから木の間越しに尾根の向こうの景色が見える!? これが風穴か(11:40)。思ったより大きく、穴というより尾根の窪みに立派な岩橋が架かっているようだ。妙義の岩質は面白い。
風穴を潜り、岩壁の左(南)側沿いに下りる。足元は崩れて滑りやすい石から泥に変わるが、踏み跡が見えない。あまり下ってから行き詰って時間を食うのも嫌(厳しいところで雨に掴まったら危険が増す)なので、念のため記録を確認した。進んでいくと記録通りに支尾根にぶつかる。そのまま支尾根を突っ切って岩峰を巻くルートもあるようだ。ここは支尾根を上がっていくと岩峰の間(P7とP8)の狭いコルに出た。コルを横切って左側の踏み跡を登るとホールドスタンスの乏しい一枚岩の壁になってしまう。ここはルートではないのか?と思ったが、よく見ると踏み跡はそこから上へ向かっていた。少し上がって確保を取り、H方氏先行。高度感満点のナイフリッジの先の樹でピッチを切る。そこから次の岩峰(P9)へ向かっては半分トラバースの懸垂下降で自分が先行。フリクションの利く岩だが、半ばまではスタンスが不明瞭で緊張する。
P9の基部からは左右どちらにも懸垂下降できそう。左(南)は先ほど偵察した巻き道に出られるだろう。ここは下を覗いてみて歩きやすそうな右(北)に決定、少々細いが粘りのある灌木にロープをかけて一段下りる。しかし踏み跡はあるものの先が続かず、結局ロープ一杯使った。落ち葉を踏んで尾根に戻ればP9は背後、危険地帯は終了だ(と思ったが、すぐに別の危険が... 13:50)。
ハーネスを外し、風穴尾根の頭を目指して尾根を辿る。自分が先に立って小ピークを越えたところで「グルル」と聞こえたかと思うと、下の平坦部を黒い影が右から左に走り抜けた! 一瞬のことではっきりしない(それほど速いのだ)が大小3頭ほどに思える。親子連れのクマだろう。後ろを歩いていたH方氏は残念ながら見なかったそうだ。そこまで下りてみるとドングリの散らばる地面に足跡が残っていた。してみると朝の「ドゥルル」もクマだったか。その後も風もないのに藪がガサガサしたりするので近くにいたのかもしれない。クマ鈴があってよかった。
あとは結構急な尾根をひたすら登り、風穴尾根の頭(1050m)に14:30。樹に囲まれた細長いピークだ。無事に風穴尾根を完遂できた。
休憩の後は一気に下る。昨日の相馬岳ルートと違って実に歩きやすいが、一箇所だけ涸れ沢に架かった橋が崩れていた。ちょうど国民宿舎に戻ったところでポツポツと雨(15:40)。そのまま駐車場まで行き、荷物を取って宿舎に引き返した。
国民宿舎の立寄り入浴(\400)で汗を流し、タクシーで横川駅に戻る。おぎのやの釜飯を食べようと思ったのだが残念ながら売切れ。近くのラーメン屋で食べた味噌ラーメンはものすごくニンニクが効いていた。
■今回のルート
相馬岳北稜
風穴尾根
2013/11/16(土) 諸星大二郎原画展 ― 2013年11月16日 00:00
池袋西武にて開催中の諸星大二郎原画展を観てきた。
思ったより広い会場で見ごたえあり。
見送っていた画集も、結局買ってしまった。
2013/11/21(木) 「夢と狂気の王国」 ― 2013年11月21日 00:00
新宿バルト9にて。
NHKでも「ポニョ」「風立ちぬ」で宮崎駿に密着していたが、それに比べて宮崎の機嫌が終始いいように見えるのは、カメラを回す人間による?
それでも、映画を作る人間の性(さが)を捉えている。「宮さんにとってスタッフはゲタ」(庵野)とか。「いい人」は映画監督には向かないのだろうな。
入場時に「かぐや姫」プロモーションのブルーレイ+DVDを配布していた。
2013/11/23(土) 吾妻ひでお原画展 ― 2013年11月23日 00:00
先週の諸星大二郎(https://marukoba.asablo.jp/blog/2013/11/16/9405064)に続いて、デビュー45周年記念と銘打った吾妻ひでお原画展。
もう30年もファンをやっているが、そうか、3分の2の期間になるのか。
「ふたりと5人」から「アル中病棟」まで並んでいるが、最近の「地を這う魚」の描き込みは半端ない。
もちろん展示の中心は美少女。描き方の変遷もよく分かる。
諸星展の展示作と原典を同じくする作品があって作風の違いにニヤリとするが、これは狙って構成したのか?
それにしてもマニアックな漫画家ふたりの展覧会を連続開催する西武、えらい。
2013/11/26(火) 大同山・百蔵山 ― 2013年11月26日 00:00
無名山塾の自主山行。
来年1月に自分が担当するユース山行(非会員をターゲットにした入門的なプラン)の下見を、I宮・S氏、K藤。H氏(共に女性)を誘って実施。
昨晩のうちに前線が通過して今日はハイキング日和。富士山が美しく見えた。
まず大洞岩に上がり、いったん車道に下りて南西尾根から大同山。そこからは普通のハイキングで百蔵山へ。大同山に戻って福泉寺へと下る。
思ったより短いルートで昼には百蔵山に登頂してしまったが、大洞岩の登り、大同山のルートファインディングと、予想以上にバリエーションルートっぽいハイキングだった。
行きはバスだったが下山口からは歩きで戻り、途中、日本三大奇橋の一・猿橋を見物。
I宮氏とは久しぶりなので、川越で軽く飲んだ。
■今回のルート












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